第73話

 支城の広間に、メルショルを除いた和睦の仲介役の顔ぶれが集まっている。周囲に天使の姿だけでなく、城に詰めている鬼の姿もちょうど絶えていた。

 刹那、千代女の長鳴鳥の鬼道が発動する。

 襲撃だ。そう悟った瞬間には、星熊童子が鬼道を発動させていた。

 揺れる。半町四方の地面が激しく。その名も荒魂(あらみたま)、荒ぶる神の天罰のごとく小規模な地震を起こすのだ。

 天井、床下からいくつか声が漏れた。善鬼の腰間(ようけん)からほとばしった剣尖が一瞬裡に伸び縮みをくり返し、閃光と化して何箇所も天井を刺した。さらに、刀身が空けた穴を広げるようにして岩布の銃丸が飛んだ。刹那、仲間たちはみなその場に伏せた。

 直後、炎が膨れ上がって広間の空間にまで溢れ出る。辛うじて、かがんだお陰で熱に炙られるだけで済む。

 轟音に紛れるように、長鳴鳥の声が遠ざかった。一度、“敵”としてとらえた相手は一里は追跡が可能なのがこの攻撃力皆無の鬼道の長所だ。

 それを追って、善鬼を先頭に仲間たちは走る。

 が、それを見越したように、長鳴鳥の声が複数の方向に分かれた。相手は玄人だ、こういうときの定石を熟知している。そのことを千代女は瞬時に悟った。

 だが甘い――千代女が肩越しに星熊童子に目配せする。

 とたん、地面が揺れた。低い声や、体のどこかを打ったのか苦痛の声がそれぞれの場所からもれる。

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