第65話

「守勢に回るだけでは戦には勝てぬ」

 茨木童子の死を巡る件について道鬼斎が低い声でのべた。名高き武田家、それも凋落する前の最強の名を欲しいままにしたころに仕えていた武士のいうことだけに重みが違う。

 メルショル、千代女、岩布も顔をそろえ狭い陣屋で身を寄せ合うようにして車座になってあつまっている。みな一様に険しい表情を浮かべていた。

「でも、姿の見えない相手じゃあおいらの火之迦具土も通用しないぜ」

 道鬼斎の意見に岩布がくちびるをとがらせた。メルショルにも似たような思いを抱いている。

 実は岩布は、先ほどからずっと落ちつきがない。いや、茨木童子が死を知ってから、というのが正確だろう。囚鬼として余の鬼に低く見られる立場のために地蜘蛛への偏見はほかの者に比べれば小さいようだったがそれでも岩布に対してどこか軽んじる部分を茨木童子も持っていた。

 だが、そんな彼の死に対し岩布は「旅を共にし、戦いを共にくぐり抜けた者が死んでしまった」と茨木童子の骸を前に涙を流して悲しんだのだ。

 だから、できれば今すぐにでも下手人を探し出したいのだろう。

「では、道鬼斎はいかなる手立てを考えておられるの」「やはり、透波乱波を使うことであろうな」

 千代女の問いかけに、道鬼斎が即座に答えた。

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