第64話
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仲間たちとはなれ、千代女は雑木林の一角に身を置いていた。
その側にはふたりの男の姿がある。ひとりはつぶらな目に発達した犬歯、全体的に顔が前にせり出した犬を思わせる小男で、もうひとりは白髪混じりの頭に皺深い顔をした渋い風貌の長身の男だ。それぞれ、太田犬之助(おおたいぬのすけ)、熊若(くまわか)という。両者とも細作だ。
メルショルたちには無論こと内密の対面だった。千代女は犬之助、熊若からこれまでひそかに報告を受けている。もちろん、露見してはならないからだ。
四半刻ほど話をしたのち、千代女はなんていうこともなかったような顔でメルショルたちのもとにもどった。
「鬼の大将の用件はなんだったんだ」
「『追い返されたとはいえ、対面の叶った使者はおまえたちが初めてだ。死なれては困るから気をつけろ』といわれたわ」
岩布の問いかけに千代女はすらすらと嘘をのべる。鬼の大将に呼ばれたと嘘を告げて、仲間たちのもとをはなれていたのだ。それゆえの岩布の質問だった。
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