第60話
それはともかく、刺客を着実に始末するためにあえて無警戒をよそおってのだが、刺客から這い寄って樹の根に気づかずメルショルは事前に何かが起こると知っていたというのに危うく殺されかけた。
「にしても、縛めを受けた上でよくのがれられたな」
「き、鬼道を使えるようになった」
やや感心した顔つきをする善鬼に、メルショルはしゃがれた声で応じる。“そのとき”が来れば自然と目覚める者は目覚め、使い方を会得すると聞いていたができることならもっと余裕のある状況であって欲しかった。一歩間違えば手遅れになっていたところだ。
「だが、その調子じゃあそのうち命を落ちしかねねえな。いっそ、俺の指南でも受けるか」
善鬼はからかう調子で言葉をかさねた。
メルショルはわずかに沈思黙考し、
「お願したい」
と首肯する。これには善鬼のほうが意外そうな顔をした。彼自身も、こちらが彼の人柄をあまり好んでいないことを感じていたのだろう。
だが、メルショル自身が死んだ地蜘蛛の子への鬼の扱いと切支丹の共通点を見い出した瞬間から変わったのだ。表面的かつありふれた価値観にしたがうことに疑問をおぼえた。
善鬼は荒くれた物言いことするが、よく考えれば野武士(のぶせり)に対して真っ先に突っ込んで行ったのは彼だ、好ましい人物ではないが間違ったことはしてない。それに、メルショルよりも圧倒的に技量で勝るひとかどの兵法者だ。
だったら好悪を越えて教えを乞うのもまた一つの選択だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます