第53話
十王たちは南蛮浄土の軍勢からのがれるのに、殿(しんがり)として日の本の戦国武将の亡者を多数もちいた。しかも、陣払いのためという説明もなく、だ。
そのなかには、裏切り者の主もいた。つまり、主人は十王たちによって捨て駒にされ、見捨てられたのだ。それでもなんとか生き延びていてほしかった。自分を認め役目を与えてくれた、器量の大きな屋形だ、絶望的な状況でも切り抜けるかもしれないと一縷の望みを抱いていた。
が、主の死の噂が十王の将士を通して聞こえてくる。人間の兵、外様衆として陣中にあったのだが叫び出したいような憤怒に駆られた。それを糧に戦いに邁進する。
だが、それでも腹のうちの熱は一向に収まる気配を見せなかった。そうしているうちに悟る。おのれが怒っている相手は十王なのだ、主人を捨て駒にした卑怯者どもだ、と。
ただ、そんな者が十王のひとりの意を受けて動いている。
それはなぜか? 精々、南蛮浄土との長い戦、いや敗北に苦しめばいいという了見だった。仕える相手を亡くしたその者は文字通りの死兵と化している。肉体を失い、魂だけになり、さらには良心を失(な)くした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます