第53話

 十王たちは南蛮浄土の軍勢からのがれるのに、殿(しんがり)として日の本の戦国武将の亡者を多数もちいた。しかも、陣払いのためという説明もなく、だ。

 そのなかには、裏切り者の主もいた。つまり、主人は十王たちによって捨て駒にされ、見捨てられたのだ。それでもなんとか生き延びていてほしかった。自分を認め役目を与えてくれた、器量の大きな屋形だ、絶望的な状況でも切り抜けるかもしれないと一縷の望みを抱いていた。

 が、主の死の噂が十王の将士を通して聞こえてくる。人間の兵、外様衆として陣中にあったのだが叫び出したいような憤怒に駆られた。それを糧に戦いに邁進する。

 だが、それでも腹のうちの熱は一向に収まる気配を見せなかった。そうしているうちに悟る。おのれが怒っている相手は十王なのだ、主人を捨て駒にした卑怯者どもだ、と。

 ただ、そんな者が十王のひとりの意を受けて動いている。

 それはなぜか? 精々、南蛮浄土との長い戦、いや敗北に苦しめばいいという了見だった。仕える相手を亡くしたその者は文字通りの死兵と化している。肉体を失い、魂だけになり、さらには良心を失(な)くした。

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