第54話

   四


「うぬが切支丹でありながら、異教の地獄のために働く裏切り者か」

 メルショルは、大天使ウリエルの面前に出るなり痛罵された。

 強硬派の伊予之二嶋を守っていた王ふたりが和議の開始に賛成にまわったため、他の反対していた者や態度を決めかねていた者たちも承諾しメルショルたちが交渉に向かわずに済んだのだ。

 そもそも、純粋に和議を急ぐのならメルショルたちを余の王のもとに派遣はしなかっただろうが、

 おそらくは閻魔王に試された――。

 ということだろう。

 そのため、数日の時間をかけてメルショルたちは前線となっている筑紫の嶋の地をふたたび踏んだ。そして、さらに南蛮浄土のウリエルの本陣へと足を運んだのだった。

 その末の第一声が先ほどのものだ。

「お言葉ならば、余の切支丹が日の本の地獄で責め苦を受けるのを見かね、メルショル殿は和睦の仲介の役についたと聞き及んでおります」

 喉が締め付けられたようになって言葉を失ったメルショルの代わりに千代女があくまで物腰柔らかに告げる。ただし、異国(とつくに)の言葉、信仰を受けていない者の言の葉は“届かない”、理解されない。ためにミカエルは千代女を一瞥し、一体なにをいった、という怪訝そうな目をした。

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