第54話 魔族の大侵攻
ドゲム大魔王の指揮の元、魔族は人間界に大侵攻を始めた。先兵の上級魔族と大魔王ドゲムに、多くの帝国兵士は何も出来ずに無残に殺されていく。にこやかな顔で人間を虐殺するドゲムを大陸の人々は恐怖のスマイリーと言って心底恐れた。最初は乗り気ではなかった魔族達も、人間を殺すうちに魔族の本性が戻っていき、人間の絶望を求めて進軍するようになった。
避難民が帝都を目指して大移動を始め、魔族達は苦も無く大陸中央まで侵攻し人間の居住地を占領していった。だが大陸中央の遺跡から尽きることなく出て来るドラゴンに対処しなくてはならず、そこで一旦仕切り直ししていた。
その頃、村長達と別れたスナミは、傷が癒えた元魔王ファザリスと合流し、人間側から魔族と対峙していた。
大陸中央北から西に50kmゴルガンの町。
「スナミよ。ドゲムは何故急に強くなったかわかるか?」
「いえ全くわかりません。以前とは別の魔族です」
「今のドゲムの強さは私を遥かに凌駕する。この大陸にはもう奴を倒せる者はいないかもしれない。これでは大魔王時代に逆戻りだな」
「ドゲムは自らを大魔王と称しています」
「しかし、ドゲムが如何に強くてもこの大陸を一匹でカバーするのは無理だ。我々は奴を避けて各地の上級魔族を叩いていくしかないな。中級魔族以下であれば帝国兵でもまだ戦いで勝つこともあろう」
村長達はドゲムとの戦いの後、何日間かガラントの町に滞在していたが、魔族が大侵攻を開始したという報を受け西に移動していた。ガランドから100km、大陸中央南端から西に20kmの所にある小さな村に到着した。
「村長、俺たち何時まで逃げ回らなきゃならないんだよ?あの戦いは何だったんだ?」
「もう村を守るだけの局地戦ではない。戦争が始まったのだ。帝国兵士とファザリスに任せるしかあるまい」
「なんでファザリスは人間側で戦ってるんだ?」
「それはわしにもよく分からん」
村長は横を見て「一緒にファザリスと暮らしていたプリシラは何か思い当たることがあるんじゃないのか?」
「私も大事に育てられたり、殺されそうになったり、パパが何考えてるのか良くわからないのよね。まあそこがミステリアスでパパのかっこいい所なんだけどね」
「姉ちゃんのいいところはいつも能天気なところだよな」
「勇者くんには言われたくないけどね」
そこに小夜と、守が走って来て
「あっちで炊き出しをやってるみたいです。皆で行きましょう」
匂いのする方に行って見ると、大きな寸胴鍋から深皿にスープを入れて、並んでいる人に配っている男がいる。
「あれ?あの人知ってるぞ」
「私も知ってる」
背が高く痩せて猫背で顔色が悪い、大魔王の触手亭の料理人が居た。
「兄ちゃんこんなところで何をやってるんだ?」
勇者を見た料理人は「ああ。君はいつも触手亭に食べに来てる子だね。もうレストランには居られないから避難してここで炊き出しを手伝っているのさ」
「今日は普通に喋れるんだね」
「俺は接客が苦手なんだよ。緊張すると言葉がおかしくなってしまうんだ。あ、ちょっと俺の代わりにこの鍋のスープを並んでる皆さんに配ってくれないか?」
腹を押さえて男はどこかに走って行った。
「あれは相変わらずなんだな」
少ししてから男はハンカチで手を拭きながら戻って来た。
「ああすまないね、代わってもらって」
すると近くで悲鳴が聞こえた。悲鳴の方を見ると、4人の人間が魔族に斬られ、惨たらしい有様で死んでいる。ガーゴイルに似ているがもっと大きい体をしていて、片手に鎌を持っている。
「恐らく上級魔族だ。単独で空から降りて来たんだ」
炊き出しに並んでいた人たちは悲鳴を上げて散り散りに逃げていく。
「姉ちゃん。俺が引き付けるから、奴を後ろから斬ってくれ」
「わかったわ。勇者くん」
「頑張れ二人とも」
守がシールドを張る。
勇者が上級魔族に突っ込んで行く。上級魔族からファイアーボールが勇者に飛んでくる。勇者は剣で真っ二つにそれを切り裂くと煙で視界が悪くなる。それを狙って、上級魔族は勇者に鎌でラッシュをかける。それを剣で受ける勇者。これは中級魔族とは比べ物にならない強さだ。とにかくスピードが速い。炎魔法と鎌のコンビネーションには隙が無く、勇者は防戦一方になる。
「ああ。もう俺の手が持たねえ。早くしてくれ姉ちゃん」
プリシラは剣を抜き上級魔族の後ろに近づく。上級魔族が振り向いた時にはもう袈裟斬りでプリシラに斬られた後だった。そのまま崩れ落ちて絶命する。
「炎で手の皮ベロベロだよ。小夜。早くヒールしてくれよ」
プリシラは自分の右手を見て「もう右手が動かない。こんなもんか」
料理人の男がプリシラの元に走って来て手を握る。
「俺、感動しました」
「はい?」
「ここに来る途中、帝国兵士達に食事を作っていたんです俺。若い五人の兵士達に。それが今の魔族に殺されてしまった。俺は悔しかった。誰か仇を取ってくれないかと思ってた。それがまさかあなたのような女の人だとは思わなかったけど、スカッとした」
プリシラは「意外と熱い所もあるんですね」
「俺を旅のメンバーに加えてはもらえないでしょうか?俺は料理だけは自信があります。料理担当になりますから」
勇者は美味いものが食べれると思い
「村長頼むよ。あの兄ちゃんは絶対に役に立つと思うから」
「涎が出てるぞ勇者よ。まあいいだろう。お前名前はなんというのだ?」
「俺はトマスです。よろしく皆さん」
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