第52話 魔族院


 ドゲムは惨敗した屈辱を胸に魔王城に逃げ帰った。帰る頃には緑の本体を黒いガスで覆い隠す程度には回復していた。魔王城に入ると玉座にはヴァシャールが何故か座っている。

「おい。私の席に何でお前が座っているのだ?いや、その前に何で牢から出て来てるんだ?」

 火酒を煽ったヴァシャールは「誰だお前は?」

「私はドゲムだ。忘れたのか?」

「おい盗人、俺のレーザーを返せ」

「分離した時にどこかに無くしてきた。もう多分回収できないだろう」

 二人は見つめ合い、気まずい時間が過ぎる。


 ガーゴイルが入って来て「大変ですドゲム様。あれ?その体、どうされたのですか?」

「まあいろいろあったのだ。それよりこの状況を説明してくれ」

「魔族院がドゲム様を魔王から解任しました。多数決で決議されたとのことです」

「なんだ魔族院とは?」

「上級魔族で構成された機関という事です。私も良くわかりません」

 ヴァシャールを指さして「それで、なんでこいつが玉座に座っているのだ?」

「ヴァシャール様は魔界元首です。多数決で決議されたとのことです」

「何で魔王では駄目なのだ?」

「さあ」

「お前はやり過ぎたのだドゲム。ガーゴイル共が人間界の上空を飛び、中級魔族が村を襲った。ゴブリンが人間界にちょっかいを出しに行くのとはわけが違うぞ。帝国から物資も食料も届かなくなった。それを重く見た上級魔族は人間達との関係を改善しようと動いている」


 ドゲムは怒りでガスが揺れる。

「あの怠惰な魔界貴族共が、人間に養われて情けないと思わんのか?人間を支配して魔族の土地を取り戻すのだ。そして人間を奴隷にして働かせれば良いことだ」


 ヴァシャールはドゲムを指さし

「お前に賛同する者がいないからこのような結果になったのだ」



 ボロボロの体で私邸に帰るドゲム。肉人形コレクションがホールを這いずり回るのを見て少し癒された。一階にあるドゲム自慢の広々とした実験室に入り、寝台の一つに座る。

 周りの様々な機器や装置を見てドゲムはしみじみ

「思えば私も元は上級魔族だったのだ。自分の体を強化し改造して、特級魔族にまでなった。しかし魔王になる器ではなかったという事か」


 突然実験室のドアが開き「ドゲムさん。手ひどくやられたようですね。魔王も解任されたとか」

「お前はアレン。何故ここに居るのだ?というかお前はいつも無遠慮な奴だな」

「心配になって来ました」

「人間がこのドゲムを心配だと?」

 意外過ぎる答えにドゲムは思わず笑ってしまった。

「なあアレンよ。私はこれ以上強くはなれないのだろうか?」

「私があなたを改造すれば今より強くできますが、失敗する可能性は高いです。もうあなたはすでに手が加えられて複雑化している」

「それでもいいからやってくれないか?もう私は死んでもいいのだ。お前に全て任せよう」

 それを聞いたアレンの顔つきが変わる。

 誰も信用していないドゲムがそんなことを言うようになるとは。

「わかりました準備には半日程かかります」

 ドゲムは魔力を回復する為そのまま寝台で寝ている。アレンは部屋を出入りして準備の為に慌ただしく動き回った。準備が整うとドゲムは特別な寝台に寝かされ、動かなく固定される。太い針を緑の本体に刺され、何か薬品を注入されるとドゲムのガスの部分がすべて消えた。


 ドゲムは意識が薄れていく中でアレンの声を聞いた。

「本当は大陸に干渉しては駄目なのだが、皆隠れてやっている。誰もが自分の作り出した子供が可愛いのだ。お前は魔族プロジェクト中期に生まれたのだよドゲム。自分を改造して印を取ってしまうなんて魔族はいない。ヘルファイアを喰らった時は驚いたぞ。私は慎重に行動していたが、お前の心の変化が私を動かしたのだ。可愛いドゲムよ最強の魔族にしてやろう」

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