第49話 オヤナ村防衛戦

 村の入り口の扉が大きな音を立てる。

「来たな」

 三人は身構える。

 衝撃音と同時に厚い木の扉がバラバラになり、ミノタウロスがショルダータックルで村の中に入ってきた。後に続いてハイオークとミノタウロスの集団が続々と入ってくる。

「あれが魔族か。凄いデカいな」

 圧倒される三人。

「ここが人間の村だな」

 ミノタウロス達は何故か筋肉ポージングをして、ハイオークは周りを見回している。

「あれ?ガキしかいないな?」

「おいお前達。この村の魔法使いを知らないか?俺たちはそいつを殺しに来たんだ。教えてくれたらお前達は見逃してやるぞ」


 勇者は守の方を指さした。


「そのガキがそうなのか?本当か?」

 ミノタウロス達が突っ込んで行き、それに後続の魔族達も続く。

 守は慌てて「おい。勇者どういうことだ?」

 守は両手のひらを前に出し、自分と隣にいた小夜にシールド魔法を張る。

「魔法を使ったぞ。間違いねえ。あのガキを殺せ」

 守を囲んで斧で斬りかかる。守の周りが群衆になり血と肉片が飛び散る。

「ミノタウロスとハイオーク、どっちが魔法使いのガキを殺したのだ?」

 確認しようと覗き込んだハイオークは、守が特に何ともなっていないのに首を傾げた。


 後ろを見ると魔族の群衆は背中から斬り刻まれて何匹も倒れていた。

 魔族達が勇者に気付いた時にはもう17匹の魔族が死んでいた。

「これは幸先がいいスタートだな」

 魔族部隊は斧を構え、目標を勇者に絞った。

「あのガキも普通の人間じゃない。ぶっ殺せ」

 勇者を囲もうとする。

「ファイアウォール」

 勇者の前に高い炎の壁が上がり、突進してきたミノタウロスは壁の前で止まる。

 炎の壁を背にして敵に斬りかかる。勇者の速さに巨体の魔族はついてこれない。新型剣は鎧ごと魔族を斬り、貫く。勇者に襲い掛かる魔族が次々倒れていく。

 しかしファイアウォールをショルダータックルで強引に超えて来たミノタウロスが、火だるまになりながら勇者の背中に激突した。


 勇者は3メートル程前に飛び、転がる。うつ伏せに倒れたまま動かない勇者。これはまずいと思った守は全力で走り勇者の近くに行く。ハイオークが斧を勇者の頭めがけて振り下ろそうとするところで守のシールド魔法が間に合う。

「小夜ちんヒールを」

 小夜は勇者の元に行きヒールを浴びせる。

「危なかったぜ」

 勇者は立ち上がり、近くのハイオークを袈裟切りで倒す。


 テーブル席に座っている三人は外の喧噪を聞きながら、険しい顔をして子供たちの無事を祈っていた。

「スナミよ後何匹だ」

「あと26匹です。ミノタウロスの一匹が崖の上から岩を投げようとしています」

「それは村の若者にやらせよう」


 村長は家を出て警戒しながら村の奥で隠れている若者のいる所に行く。

「お前達、縄梯子で崖の上に行ってミノタウロスを一匹倒してきてくれ。至近距離からクロスボウを足に放つのだ。危なくなったら無理に戦わず帰ってこい」

 5人の若者は背中にクロスボウを背負って設置されている縄梯子を使い崖上に移動していく。


 三人は魔族から距離を取りながら話していた。

「不味いな。俺のシールド魔法はもう出せそうもない」

「私のヒールはまだ大丈夫です」

「お前らは生身では無理だ。村長の家に行って指示を仰げ」

 二人は小走りに村長の家に向かう。それを見ていたミノタウロスが後を追いかけて来た。

「姫。一匹こちらに来ます」

 プリシラは剣を抜いて家の外で待ち構える。

「落ち着け私」

 小夜と守とすれ違い、二人は家に入って行った。

 その直後、ミノタウロスが現れる。プリシラが横一文字に剣を振ると、ミノタウロスの胴から上が地面に落ちて、下半身だけが走っていき倒れた。


 勇者は近距離攻撃を止め、遠距離の魔法攻撃に切り替えた。

「もう集団を相手にするのは無理だ。各個撃破だ」

 移動しながら魔法を放つ。

「サンダーフレイム」

 脳天に雷の落ちたハイオークはそのまま倒れ痙攣する。下から吹き上がる炎の柱がその体を包む、皮膚が無くなり脂肪が燃え炭の様に黒くなる。次々と勇者の魔法の餌食になっていく。

 その時、ミノタウロスが崖から投げた大岩が、勇者の頭に当たり粉々になる。

 守の掛けたシールド魔法が消えてしまった。

「今の大岩、生身だったら死んでたかもしれないな」


 崖の上に到着した若者はミノタウロスの背面に近づいていく。一人が至近距離で足にクロスボウの矢を放つ。若者に気づいたミノタウロスは体当たりをかまし、一人が崖から落ちる。他の4人も足に次々矢を放ちミノタウロスは倒れた。足でクロスボウを押さえ両手で弦を引き再び矢を装填する。ミノタウロスに何度も矢を放ち絶命させた。


 勇者の魔法で全滅するのを恐れた残りの16匹の魔族は、勇者に一斉攻撃するように示し合わせた。魔法を使う間も与えないように波状攻撃した。それでも勇者は剣で魔族2匹倒して残り14匹になったが、勇者はもう戦いで消耗し過ぎて限界が近かった。

「おい。人間の子供相手に集団リンチなんて魔族として恥ずかしくないのか?」と勇者が言った。

「正々堂々と筋肉と武器で戦っている俺達に対して、魔法を使うお前の方が卑怯なのだ」

 くそ駄目だ。全然乗ってこない。

 魔族の攻撃が勇者にかするようになり、勇者の体から血が垂れる。


 スナミが落ち着かない。

「勇者くんがピンチです。魔族に囲まれて攻撃を受けています」

 プリシラは村長を見て「私が勇者くんを助けに行ってきます」

「そうだな。でも右腕の余力は少しでも残しておいてくれ」

「小夜ちゃん。一緒に来てくれる?勇者くんを癒してあげて」

「分かりました。お姉さん」

 ドゲムに見つかる。しかしこのままでは絶対駄目だ。

 プリシラは家を出て、腰の鞘から剣を抜く、後ろから小夜がついてくる。


 そしてガーゴイルは家から出てきた人間に気が付く。あれは?若い女だ。なんか見たことあるな。あれ?もしかしてプリシラ姫か?間違いない。あいつ生きていたのか。

 このまま戦況を見届けるか?いや、逃げられる前にドゲム様に伝える方が先だ。魔王城に向かうガーゴイル。

 スナミは「思った通りだ。早くこの戦いを終わらせて逃げないと姫が危ない」


 プリシラは考えていた。衝撃波は魔力を消費する。近くで魔族を剣で斬らなくてはならない。プリシラは走っていき、勇者を囲んでいる一匹のハイオークを袈裟斬りで絶命させる。魔族がプリシラを見る。

「人間の女だ。こんなのにやられたのか?」

 更に隣のハイオークの胴を真っ二つに斬った。片手で持った剣のモーションが早すぎて魔族には見えない。

 魔族がプリシラを標的に変えて襲い掛かってくる。プリシラの頭に斧を振り下ろす。剣で受けると斧は折れ、次の瞬間袈裟斬りで殺した。

 勇者から魔族が離れて行ったので、小夜は近づき勇者にヒールを浴びせる。

「勇者くん。もう大丈夫です」

 元気を取り戻した勇者は、プリシラの周りに集まっている魔族を背後から次々斬り込み殺していく。


 どちらの人間を攻撃すべきか魔族は躊躇して動きが鈍くなる。


 二人は攻撃を畳みかけ、ついに村を攻撃した魔族が全滅した。


 スナミが家の中の二人の顔を見る。

「やりました。敵はいなくなりました」


スナミと村長、守は外に出て行った。

三人の元に駆け寄って行く。


 村長は眼を潤ませ、勇者をハグする。


「勇者。よくやってくれたな」

「ああ。でも結構危なかったけどな」


 村の若者達が村長に近づいて、一人犠牲者が出たことを伝える。

「そうか。お前達もよくやってくれた」

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