第47話 姫との再会
ガランドの町を出発する日の早朝。
親切な宿酒場の主人に別れの挨拶をして三人は外に出ると、目の前に馬車が用意されていた。運転手が出てきて一礼する。
「ミリア様から村まで送るように申し付かっております」
馬車に乗り、椅子に座る三人。
「私は馬車なんて初めて乗るけど二人はどう?」
「私も初めてです。お姉さん」
小夜は窓から外を眺めて楽しそうにしている。
「俺は犬時代におばさんに乗せてもらったことが一回だけあるよ」
プリシラは守を見ると、守の腹がかなり出ていた。
「あれ?太ったんじゃない守くん?」
「こんな数日で太るわけないよお姉さん」
運転手が手綱を操り馬車が動き出す。
「もっと揺れるかと思ってたけどそうでもないね」
「いい馬車はいいバネが入ってるらしいよ」
「私達は途中で馬車を降りて、また藪の中に入ってから村の帰るんだよね小夜ちゃん?」
「そうですね。馬車では村の中に入れないですから途中からは徒歩でしょう」
数時間後に馬車が止まり、鉄の扉が開く音が聞こえた。そこからさらに進み、馬車が再び止まると運転手が客席の扉を開く。
「到着しましたよ」
馬車から降りると、そこは村のすぐ近くの丘だった。
「あれ?どうやってここに来たんだろう?」
「ここの道は少数の者しか知りません。御三方もご内密にお願いします」
三人は馬車の運転手にお礼を言い村の方に歩いて行く。
小夜は落ち着かない。
「おじいちゃん怒っているでしょうね」
「大丈夫だって」
オヤナ村に入ると村人が家の外に出て何かをしている。
「騒がしいけど何をやっているんだろう?」
よく見ると村人達は荷車を作っているようだ。
「誰か引っ越しでもするのかな?とりあえず、私達は村長の家に行ってみようか」
小夜は下を向いて足取りが重い。
「やっぱり行きたくないです」
三人が歩いていると空中から声がして来る。
「そこにいるのはプリシラ姫」
プリシラの前にスナミが下りて来た。
「え?どうして?死んだんじゃなかったの?スナミちゃん」
笑顔のスナミは「はい姫様」
プリシラの眼から大粒の涙が出て来る。
「よかった。スナミちゃんが生きてた」
スナミに抱き着くプリシラ。
スナミの眼からも涙が。
守は「どうゆうことなんだこれ?」
「素敵です。お姉さん」
小夜もよくわかってなかったが何故かもらい泣きしていた。
しばらく抱擁していた二人だったが、スナミは少し離れて
「パーティの前日、魔王様が私は死んだことにすると仰って、そのままトンネル攻略の任務につくことになったんです。それで姫様にお別れすることも出来なかったんです」
プリシラがずっと泣いていて会話にならないので スナミは小夜と守の方を向いた。
「初めまして。私は魔族のスナミと申します。姫がお世話になってます」
頭を下げる。
守は顔が真っ赤になって「あ、あこちらこそ。どうも。守といいます」
小夜はスナミの手を握り「お姉さんが言っていた魔族のお友達の方ですね。私は小夜です。この度はお姉さんの妹になりました」
姫の方を向いて
「姫様良かったですね。こんな可愛らしい妹さんが出来て」
まだ泣きじゃくっているプリシラ。スナミはプリシラとの再会を喜んでいたが、ふと魔王と別れた時の事を思い出す。そうだ私は魔王様に頼まれたのだ。姫は強くならなくてはいけないと。
「いつまで泣いているんですか姫。しっかりして下さい。この村は今一大事なんです。魔族の集団が襲って来るんですよ」
「ええっ?」
小夜と守は顔を見合わせる。
「この隠れ里がドゲム様の眷属のガーゴイルに見つかってしまったんです。それに魔王様も謎の兵器で攻撃され瀕死の重傷です。回復までにはかなり時間が掛かるでしょう」
「パパが重傷?本当なのスナミちゃん?」
スナミは頷き「恐らく新しい魔王になって魔王城で指揮を執っているのはドゲム様です。彼はいつも大陸を支配するのは魔族だと言ってましたから、人間界に侵攻してくるのも時間の問題です。村長さんの家で、村長さんと勇者さんとシンペーさんが今後の事を話し合っています。力になってあげてください」
「シンペーって誰?」
「お姉さんは知らないだろうけど、散髪屋で兵士になったこの村の兄ちゃんのことです」
「とにかく、おじいちゃんの所へ行って詳しく聞いてみましょう」
村長の家に入ると、村長と勇者が丸テーブルの椅子に座っていた。テーブルの上の紙を見ながら難しい顔をしていた。
「おじいちゃん。ただ今帰りました」
三人を見ると村長は少し怒った顔をして「お前達は一体何をしていたんだ?心配したぞ」
勇者も腕を組み怒っているフリをしていた。
「お前らが町で楽しんでいる間に今、村は大変な事になってるんだぞ。今から俺が説明してやる」
「それはもう外でスナミちゃんに聞いたよ」
「え?もうスナミ姉ちゃんに会ってたのか?そうなのか。俺が話そうと思ってたのに?」
少しがっかりした勇者だったが、気を取り直して守を指さす
「なんでお前そんなに太ってるんだよ守?」
笑顔の守は勇者を見て「お前の分も町でたっぷり食ってきてやったぞ勇者よ」
勇者はかなりショックを受けて村長を見た。
「何で俺も町に行かせてくれなかったんだ村長?」
村長は手で額を押さえて呆れている。
「私達も大変だったんだよ勇者くん。ただ遊んでたわけじゃないんだから」
化け物の事、ミリアの事、町であったことを話す。
「まさか。今日の帝都新聞の朝刊に載っていたミリア姫を助けた子供たちと言うのは?」
「そうですよ。私達ですよ村長」とプリシラが言う。
小夜はえっへんポーズをする。
村長は置いてた新聞を取ってめくり
「でも、化け物の事は書いてないな。村の前で倒れていたとしか書いてないようだが?」
「本当の事を書いても信じてもらえないからでしょう。きっと」
これで皇女ミリアが魔王城に監禁されているのは嘘だと分かったし、帝国兵が魔界に進軍して無駄死にする事は無くなった。危機は去ったと思われたが全然そうではなかった。
村長は顔を上げてプリシラを見る。
「スナミによると数日中に魔族の部隊がこの村に攻撃をかけてくるという事だ。一部の若者を残して村人はガランドの町に避難させる。避難に関してはシンペーに任せている。戦える者はこの村を守らなければならないがプリシラよ、お前はこの村の者ではないがどうする?」
「もちろん残るわ。この子達を置いて私が逃げるなんてありえない」
村長は笑顔になり
「そうか。そう言うと思ってたぞ」
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