第44話 サンダーフレイム
新たにやって来たガーゴイルがオヤナ村の近くで旋回していると、物見櫓で監視していた村人から村長に報告が入った。村長はあわてて勇者の家に向かった。
戸を叩き「おい勇者。またガーゴイルが出たぞ」
中から大あくびの勇者が出てくる。
「これで何匹目だよ村長?いつになったらガーゴイルは来なくなるんだよ?」
村長は顎に手を当て深刻な顔をする。
「奴等魔族は人間界を調査をしているんじゃないのか?そろそろガーゴイルが魔界に帰って来ないことが変だと気づかれている頃かもしれん。そうなると今度は魔族の集団がここにやって来るぞ。もうこの村が見つかっても見つからなくても本格的な戦いになるのは避けられないのかもしれん。村の者達に避難の準備をしろと言っておこう」
村長は鎧を着た若者の所に歩いて行き、何かを話している。
勇者は村の中に何で帝国兵の鎧を着た若者が居るのか不思議で、その若者を良く見てみる。
「ああ。あれは散髪屋の兄ちゃんか。そういえば兵士に志願して遺跡に行ったんだったな」
村長が戻ってくる。
「なんで兄ちゃんはこの村に帰って来てるんだ?」
「トンネル攻略が一段落したそうだ。トンネル内で戦っていた兵士だけが激務だったから休暇が出たらしい」
「それで魔物の巣は潰したのか?」
「トンネルの最奥には到達したが、巣は無かったそうだ」
「じゃあどこから出てきてたんだよ魔物は?」
「奥の空間から出てきたということだ」
「そこが巣なんじゃないのか?」
「土の中とか言ってたぞ」
「全然意味が分からないぞ」
「わしもそう思った。だから何度も聞いたんだが、本当にそういうことらしい。そして魔物は甲虫からドラゴンに変わった」
「え?ドラゴンて本当にいたんだ」
「ドラゴンの炎は強力で盾が溶けてしまうらしい。今後の戦いはもっと厳しくなるということだ。それより今はガーゴイルだろうが勇者。こんなとこで話をしている場合ではないだろ」
勇者は上を指さして「空を見なよ村長。まだガーゴイルは現れてないから大丈夫だって」
「まったく小夜達は何をしておるのだこんな重大時に。一泊だと言っていたのに、あれからもう四日目だぞ」
「やっぱり途中で何かあったんじゃないか?」
物見櫓の村人が息を切らせながら村長達の元に来て、村のすぐ近くにまでガーゴイルが来ている事を伝える。出現しそうな崖の近くのポイントに移動して待機する村長と勇者。
「ガーゴイルがこの村を発見すると、詳しく調査しようとして村の中央まで来る。空中で止まった時がチャンスだ。お前はいつものようにガーゴイルに雷を当て、しびれて落ちて来た所を焼け。わかったか?」
「サンダーフレイムな」
「名前なんかどうでもいいわ」
すると村を囲んでいる崖の頂上から旋回しているガーゴイルが村の方に出てくるのが見えた。
「来たぞ勇者」
最初ガーゴイルは村を発見して驚き戸惑っている様子だったが、村の真ん中までやってきて空中から様子を窺っている。
「しかし、あんな堂々と観察していて攻撃されると思ってないのかなガーゴイルは?」
「矢の届かない位置はわかっているし、魔法が使える人間はいないと思っているのだろう」
勇者は氷をイメージして手を上げると、ガーゴイルの頭上に魔力で出来た小さな氷が勢いよく動き擦れる。下げた時にガーゴイルの脳天に雷が落ちる。勇者はこの仕組みが良くわかっていないまま雷魔法を使っている。地面に落ちてきたガーゴイルはもう虫の息だが、魔法の炎で焼き殺す。
「よし。これで村は大丈夫だ」
村長と勇者は民家の方に歩いて戻って行く。しかし今の一部始終を崖の上で身を潜ませ窺っていた者がいた。ドゲムの眷属のガーゴイルだ。
「なるほど。魔法を使える人間がいたとはな。ここを調査していたガーゴイルは殺されたので魔王城に戻って来ることは無かったということだ」
ドゲムに報告をする為に魔王城に飛んで行く。もう一匹のガーゴイルの存在を気づく者は誰もいなかった。
森の中に潜んでいる魔族を除いては。
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