第39話 大魔王の触手亭
鍛冶場から町の広い通りに戻ってきた三人は、洋服屋を探しながら歩いていた。
「いろんなお店があるね」
大きくて人気のありそうな洋服店があるので入ってみる。
「お姉さんは姫様なのでドレスなんてどうでしょうか」
「いや私別に城にいるわけでもないしそれは動きにくそうだよ小夜ちゃん」
「それじゃあこれは動きやすそうですがどうでしょう」
「なんか探検に行くみたいな服だね、私は秘境に行きたいわけではないんだけど」
結局、裾に横スリットの入った少し大きめの長袖服とジョガーパンツの様なのを選んで、試着してみた
「これだと手まで隠れるし動きやすそうだよ、腰の剣も出せるし」
「少しだらしない感じもしますがお姉さんがいいというならそれにしましょう」
買った服をそのまま着る事にした。
「小夜ちゃんのワンピースも可愛いね町で買ったの?」
「ここのお店ではないですが、前に来た時におじいちゃんと買ってもらいました。」
店を出た3人は靴屋に行ってがっちりとした革靴をプリシラに買った。守のボロボロの靴からは指がはみ出ていたので、小夜はついでに新しい靴を買ってあげた。
「そしてここが勇者くんお勧めのレストランです」
プリシラは看板を見て「大魔王の触手亭?すごいインパクトの名前ね。でもに多くの人達が大魔王に殺されたというのに、よくこんな名前がつけられるね」
「おじいちゃんが言ってましたけど、当時この町は大魔王の被害には遭わなかったらしいです」
レストランの中に入ってみると、テーブルは5つ程あり、フォーマルな格好の人達が3つのテーブル席を埋めていた。
「小夜ちゃん。ここは私達場違いなんじゃないかな?」
「勇者くんはいつもここで食べているみたいですけど」
「よく追い出されなかったね」
すると、厨房の方から背が高く痩せ型で猫背、顔色が悪い若い店員が出てきた。
「い、いらっしゃいませ。さ、三名さま、ですか?」
「はい」
「それでは、こちらへど、どうぞ」
店員は空席を案内しようと先に歩くが足はもつれ派手に転び、床に顔面をぶつける。
「あ、痛てっ」
直ぐに起き上がり「し、失礼しました、こちらにお、おかけ下さい」
若い店員はなにか挙動不審だ。
腹をおさえて「いててて、腹が」
奥に引っ込んでいく。トイレのドアが勢い良く閉まる。
3人はメニューを見て
「私は最近お肉ばかりなので今日は白身の魚にしてみようかと思います」
「俺はやっぱり肉かな。力が出るし何か食べたって気がするから」
「私もお肉がいいかな、勇者くんが肉にかけるソースがなんたら言ってたし」
トイレから出てきた店員がやってきて「お、お決まりに、なりましたか?」
良く分からないのでメニューを指さして注文する3人。
店員は目が悪いらしくメニューまで顔を持っていき「ああ、これですね。わかりました白身、ムニエル、フィ、フィレ、カ、カモ、ロースト。ワインは年代物がありますけど、い、いかがいたしましょうか?」
小夜はジロリと見て、大きな声で
「いりません」
周りのテーブルの人達がこちらを見る
「あ、しし、失礼しました。では、ごごゆっくりどうぞ」
厨房に入って注文を料理人に伝えると、またトイレのドアが勢いよく閉まる。
「大丈夫かなあの兄ちゃん?」
「体調が悪いんだよきっと」
暫くして料理が出てくる。店員は先ほど派手に転んだので、慎重に料理を運んで皿をテーブルに一品ずつ置いた。3人は他の料理をそれぞれの皿から少し貰い味見しつつ、自分の料理を完食した。
そして伝票を手に取り、目を通した小夜は「あっ」と言った。
「どうしたの小夜ちゃん」
「高いです。思ってたより全然高いです」
来る前に勇者くんに値段を聞いておけば良かったです。
「え、足りるんでしょ?」
「ギリギリです、もう何も買えません」
「えー俺アイスクリームとか甘いものも食べたかったよ」
食後の余韻も吹き飛び、渋い顔をして支払いをする小夜。
「あ、ありがとうございました」
店の外に出た3人は剣が出来るまでにはまだ時間があるようなので、町の広場に行ってみることにした。
広場に入ると、中央に変なモニュメントがある。
パジャマ帽をかぶったゴブリン7匹と一人の小太りの中年男性が、とても楽しそうな顔をして手を繋ぎ輪になっている
それを見たプリシラは露骨に嫌な顔をした。
「なにこれ?これを作った人はゴブリンという存在が何もわかっていないわね」
小夜はモニュメントの横の説明書きを読んでみる。
「ゴブリンと人の平和の輪」
ガブリエル氏は7人のゴブリンと共に平和を説き、各地を回っていました。
ゴブリンは敵ではなく友達だと氏はいつも言っていました。
この記念碑は当時多くの人達が目撃したゴブリンと人との平和の輪を再現し平和の象徴として建設したものです。
「当時ってのが何時なのかわからないけど、このおじさんはすごい強かったんだと思うわ。それでゴブリン共を手懐けたんでしょうきっと」
「俺はそうは思わないな、ほんとうに仲が良かったのかもしれないよ」
小夜は守の方を見て
「お姉さんは魔界に住んでたんですよ。守くんよりよっぽどゴブリンを知っているんです」
「まあそういえばそうか」
空を見て日が暮れて来たようなのでプリシラが
「そろそろ鍛冶場に行ってみようか。剣が打ち終わっているかもしれないし」
来た道を戻り、川に掛かった橋を渡り、鍛冶場の地区に向かう。
入口に入るとビトーが3人を見つけ「親方が認めるなんて君たち見込みあるんだね」と言った。
角のガトーの鍛冶場に行くと、ガトーはプリシラが剣を下げる為の腰ベルトを選んでいた。
プリシラを見つけると「おお姉ちゃん、新しい剣はばっちり打ち終わったぜ」
プリシラの着ている新しい洋服を見て
「そうか上着にスリットが入ってるなら、下の方に付けるベルトがいいだろうな」
ベルトと鞘に入った新型の剣を渡され、早速装着してみる。
「いいんじゃない?女剣士みたいで、かっこいいわ私」
そしてガトーは守の方を向き「冴えないガキよ、お前のショートソードも打っておいたぞ。これは新型剣ではないが前よりはずっとましだろう」
「ありがとうおじさん」
そして小夜は急に土下座して「申し訳ありませんガトーさん。もうお金が残ってません」
「ああ?そうなのか?」
別にいいよ代金は後で村長に払ってもらうから頭を上げてくれ嬢ちゃん。
「俺は嬉しいんだ。お前達みたいな強い若者が出てくるのが。最近嫌なニュースばかりだからな。魔物や魔族と戦える強い人間が出てこなければ俺たちは終わりだ。こんな事を言うのは酷かもしれないが、お前たちが人間の世界を救ってくれ。この前来たガキにもそれを言っておいてくれ」
辺りは暗くなってきて3人は、宿酒場に帰る。宿酒場の一階は仕事帰りの客でもう賑わっていた。階段を上がり二階の奥の部屋に向かう。扉を開けると、若い娘はまだベッドに寝たままだ。
「明日には目を覚ますといいね」
守はプリシラが使っていたベッドにうつ伏せに寝る。
「なんか良い匂いがするなこのベッド」
小夜とプリシラは、丸テーブルの椅子に座ってくつろぐ。すると店の主人が三人の夕食を持って入ってきた。
「君たち町はどうだった?楽しかったかい?」
テーブルに料理の入った皿が次々置かれていく。毎日ご馳走になっていいんだろうかと思いつつ、美味しく平らげる三人であった。
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