第38話 ガトーの新型剣
小夜は二人の方を向き「そこで休んでいてください私は宿を取ってきますね」
小夜はいくつもの宿に入っていくがどこも満室だった。
町の宿屋が協力してラレソン村から逃げてきた人たちに、無料で宿を提供しているとのことだった。ミリア姫の騒動で帝国兵がこの町に駐屯し、この町の治安も回復してきていると言っていた。
「そういえば人気のある宿酒場がこの辺りにあるようですね。駄目そうだけど一応そこにも空きがあるか聞いてみましょう」
小夜は酒場に入り、従業員に村で倒れている娘を連れてきているので休む部屋を貸してほしいと言う。そうすると従業員は店の主人に聞いてみるので、外で待っていて欲しいと言って中に入って行った。
「もう無理だよ小夜ちん。宿がなければもう野宿でもいいんじゃない?とりあえず何か食べに行こうよ。俺はもう腹が減って」
宿酒場の中から店の主人が出てきた。
担架の上の娘を見て「その娘さんだね村で倒れていたのは。私もラレソン村に酒樽を運びに行ったときにとんでもない化け物を見た。それを見て娘さんも卒倒したのかもしれないな」
小夜とプリシラは顔を見合わせる。
「君たちだけで運んで来たのかい?」
二人は頷く。
「大変だったね。いいだろう泊っていきなさい。君たちの為に大きい部屋を用意するから」
二階の一番奥の大部屋を取ってもらった。
鍵をもらい、担架を持ち上げると、一階の酔っ払いの喧噪を抜けて二階に上がり奥の部屋に向かった。部屋に入ると奥に一つ窓がありベッドが三つ並んでいた。部屋の真ん中には丸くて大きなテーブル、周りには椅子が三つあった。横にはクローゼットがある。
小夜と、プリシラは担架の娘をベッドに寝かせる。守もベッドに寝転がる。
「あー今日は本当に疲れた」
店の主人が従業員と一緒に、トレイに料理を乗せて部屋に入ってきた。
「君たち食事がまだだろう、これを食べなさいサービスしておくから」
「ありがとう」
肉の塊の厚切り、スープ、パン、野菜等がテーブルに並べられた。
守は席に座り、すぐにがっつき始め小夜とプリシラも美味しく食べた。
次の日の朝、窓から日が入り始め、プリシラが目を覚ますと、椅子に座った小夜が腕を組み、テーブルの紙をじっと見ていた。
「早いね小夜ちゃん。何をしてるの?」
「おはようございますお姉さん。今日の予定を考えていたんです。昨日は町に着くのが遅くなって、予定が大幅に狂ってしまったので、また予定表を作り直しているのです。お姉さんは町は初めてだと思うので私は十分に楽しんで欲しいのです」
感激したプリシラは「ああ、小夜ちゃんが私の妹だったらよかったのに」
小夜は少し照れて「もう妹みたいなものです」
二人が話している声で、床に寝ていた守が目を覚ます。むくりと起き上がり腕を大きく上げあくびをする。
「昨日はくたくただったからよく眠れたよ」
「守くんだけ床でごめんね、固くなかった?」
「俺は犬生活が長かったから、かえって固い方が良く眠れるんだ」
「ああそうなんだ」プリシラは苦笑する。
「先ずは鍛冶場のガトーさんを訪ねましょう。勇者くんでも新型の剣を打ってもらうことができたのですから、きっとお姉さんも大丈夫です。剣が完成するまでの間は、町の色んなお店に行きましょう。洋服屋でお姉さんの服を選んで、お昼は町一番人気のレストランへ行って美味しいものを食べる予定です」
守は涎が出てくる。
「俺も一緒に来れてよかったよ」
小夜はベッドの方を向き、昨日助けた若い女を見る。
「全然目を覚まさないようですね」
「私もオヤナ村に来たときは三日も寝ていたから、暫く休養しないとダメなのかもね」
部屋の扉が開いて酒場の主人が朝食を運んできてくれた。
「どうだい調子は」
その娘が目を覚ますまでここに滞在してくれていいからね。
「でも宿代がもう出せないです」
「それはいいから」
「なんでそんなに親切にしてくれるんですか?」
君たちは新聞を見たかね
「魔王が皇女ミリア様を監禁している。もうすぐ魔族と人間の戦争になるかもしれない。そうなればここも戦場になるだろう。私は生きている間に善行を積んでおきたいんだ。私たちはあの嫌な盗賊や、魔族共とは違う。私は人の為に良い事をして死んでいきたい」
朝食を終え、三人は宿酒場から出てきた。酒場の前で昨日小夜が話しかけた従業員が掃除をしていた。
「ああ、君たちここで泊れるようになって良かったね。店長は村の化け物に会ったショックからから寝込んでしまって、それから悲観的な事ばから言うようになった。神に祈る時間が多くなって、あまり真に受けちゃあだめだよ」
「はい、ところで鍛冶場はどこにあるのでしょうか」
「この酒場の裏に川が流れている。橋を渡り真っすぐいけば鍛冶場の地区になっている。歩いてそんなに時間は掛からないよ」
「ありがとうお兄さん」
橋を渡り道なりに歩いて行った。鍛冶場地区を覆う長い壁に一つ門が開いていて兵士が二人立っている。そこを入ると鍛冶場が並んでいた。一番大きい鍛冶場を見つけた三人は、ガトーの鍛冶場か尋ねる。
「親方の鍛冶場は向かって左、道なりに行った角にあるよ」
そこはビトーの鍛冶場だった。三人を見たビトーは「君たちは親方に剣を打ってもらいに来たのかい」
頷く。
「もし親方に断られたら俺が代わりに打ってあげよう。親方は自分の気に入った相手しか打たないんだ」
三人は角にあるガトーの鍛冶場に向かう。
先程と同じくらい大きな鍛冶場で、汗だくで真っ赤な金属を打っている四十代ぐらいの男がいた。
「ここは特に暑苦しいな」と守が言うと、ガトーは三人に気づいた。
「おいここはガキが遠足に来るようなところじゃないぞ」
「私達はガトーさんに新型剣を打ってもらいにここまでやって来たんです」
「お前達が新型剣だって?本気なのか?」
一旦手を止めて三人を見るガトー。
「それで俺は誰に剣を打てばいいんだ?」
小夜はプリシラを指さし 「こちらのお姉さんです」
値踏みするようにプリシラを見るガトー。
「剣を持つというより守ってもらう方だな。俺が打たなくても、ここは他にもたくさん鍛冶場はあるぞ。とっとと帰ってくれ」
それを聞いたプリシラは「ちょっと鍛冶屋のおじさん、私の剣技を見てからにしてよね」
ガトーは笑って「せいぜいゴブリン一匹倒せるぐらいだろうよ、違うか姉ちゃん」
プリシラは何で分かったんだと思い言葉が続かない。
「ガトーさん、お姉さんの剣を受けて下さい、それでダメなら諦めます」
「小夜ちゃん駄目だよ、おじさんの腕が無くなったらどうするの?私手加減できるかわからないよ」
「それを聞いたガトーは、よし受けてやろうじゃねえか」と立ち上がる。近くから剣を二本持ち出し、鍛冶場の裏の開けた場所に移動する。一本をプリシラに渡して、ガトーはもう一本の柄を握り構える
「よし来い姉ちゃん」
「お姉さんこの剣もガトーさんが握ってるのも新型剣ではないです、いざとなったらガトーさんの手は私のヒールで何とかしますから思い切りやって下さい」
プリシラは剣を振りガトーの剣に当てた。
ギィィン
「うおっ」
二本の剣は折れ飛んで一本は守のすぐ近くに刺さる。
「うわっ危ね」
ガトーは手がしびれて感覚が無い。
「いつ俺の剣に当てたんだ?そんな馬鹿な、あんな細い腕でどうしてこんなことができる?」
小夜はガトーの近くに行ってヒールを手に浴びせる。
「これは魔法?なんなんだお前達は?」
そしてガトーは手が治ると直ぐにプリシラのとこに近づいて右腕をつかむ。
「なんだこの異常に硬い腕は?」
小夜が間に入る。
「ガトーさん、この右腕の事は誰にも言わないで下さい」
「お?おう。とにかくその腕が何なのか見せてくれ」
腕をまくると魔族の腕がある。驚くガトー
「こんなのは俺も初めて見るぞ」
「お姉さんは人間だから安心してください」
プリシラは事情を話す。
「おじさんは古い人間だから、最近の若者の話にはついて行けないのかもしれん。魔王の娘だった?全然意味が分からねえな。だがその腕の力は良く分かった、新型剣を打ってやろう。今日中には出来るだろうから、夕方ぐらいにもう一度来てくれ」
そしてガトーは守の方を向き「お前はボーっと突っ立ってるだけだが、お前の剣は大丈夫なのか?ちょっと見せてみろ」
守はショートソードを抜いてガトーに見せる。
「なんだよボロボロじゃあねえか。こんなんでそこの女子を守れんのか?これなら時間かからないからついでに打っておいてやるよ」
「まあ、守くんはほとんど防御魔法でサポートするだけで、攻撃担当ではありませんからね」
「こいつも魔法が使えるのか?そういえば前にもすげえガキが尋ねて来たな。剣技も魔法もまるで昔の勇者の再来のようだった」
「それ、たぶん私たちの村の勇者くんです」
「なんだよそれを早く言えよ、あそこの村長とは昔からの知り合いなんだから」
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