第37話 ドゲムの呪い
守の過去を聞いて歩いているうちに、ラレソン村とガランドの町の分岐点に来ていた。木々の間から急に、ぶよぶよの大きな芋虫のような生き物が出てきた。
「うわっ」
守が腰を抜かす
酒場から逃げた、ドゲムの呪文で化け物にされた皇女ミリアだった。
「これは酷い。なんて醜い姿なの」
化け物はかなり弱っていて、体に刺さった槍や矢の傷から緑の汁を吹き出させていた。小夜は何かに気づいたらしく、化け物に向かって走っていく。
「小夜ちゃんどうしたの?気を付けて」
化け物に小夜は手をかざし「ヒール」
化け物に緑の光が吸い込まれるが、何も起こらない。
プリシラは心配になり小夜の方に走って行く
「これは酷い臭いだわ」
「何かトゲのような物が中で邪魔をしています。お姉さんこれは人間です」
「えっ?」
「でも助けようとしても、何かのトゲに邪魔をされてしまいます」
「トゲ?」
小夜の真剣な顔を見たプリシラは「わかった私も手伝うよ」
化物に刺さっている矢を抜こうとして化け物の横腹の表面に右手が触れる。
その時、何故だか分からないが右手で触った所からイメージが伝わってくる。この感じは覚えがある。そうだ、これは魔王城の参謀ドゲムの感じだ。
プリシラは塔でさらわれそうになったことを思い出す。もしドゲムの私邸に連れて行かれていたら私がこの姿になっていただろう。人間にこのような非道な事をするなんて。プリシラに怒りが湧いてくる。
生体の正常な働きがトゲのような呪いで禍々しく歪めているようだ。プリシラは右手を化け物の肉の中に突っ込む。化け物は顔を上げるがもう暴れる元気もない。
「小夜ちゃんこれは魔族ドゲムの呪いだわ。私の右手でこの嫌な呪いを消せると思う。合図するからトゲが消えた部分に直ぐにヒールを使って」
「分かりましたお姉さん」
息を合わせて、呪いを消したところにヒールを使う。矢と槍が地面に落ち、芋虫は少しづつ縮んでいく。何度も繰り返すと芋虫だった化け物は裸の若い女になった。
「やりましたねお姉さん」
プリシラは自分の右手を見ている。
「小夜ちゃん、私の右手がまた動かなくなっちゃった」
「魔力が尽きたんですね」
守がこちらに歩いてくる。何してるのかと二人の間から若い女を見ようとする。
小夜は両手で守の眼を塞ぎ、そこから離れさせる。
「怪我人がいるので、守くんはここから直ぐ近くのラレソン村に行って担架とシーツをもらって来てください」
急に小夜に言われて戸惑う守。
「えっでも村は盗賊がいるんじゃないか小夜ちん?」
「守くんなら盗賊くらい大丈夫です。頑張ってください」
「わかった行ってくる」
小夜に頼られたのが嬉しかったのか村に走っていく守。
「本当に大丈夫なの?」
「これくらい出来なければ一緒に来る意味がないです」
「とても厳しいわね小夜ちゃん」
守がスキップしながら村の入り口に到着すると二人の兵士が立っていた。
「こんなところで子供が何をやっているんだ?」
「シーツと担架が欲しいんだ。村に入らせてくれよ」
「お前はこの村の子供なのか?」
「うんそうだよ」
「嘘を付け。ここは最近まで盗賊が占拠していたんだぞ。その時に逃げた村人は、一時的に違う場所で生活している。盗賊共を追い出し今は我々、帝国辺境方面部隊がある調査の為に今ここに駐屯しているのだ」
「そんなのどうでもいいからシーツと担架が欲しいんだ。手に入ったら俺は直ぐに帰るから頼むよ兵隊さん」
「何を騒いでいるんだ」
2メートルの長身短金髪のゴルドリンが入り口の兵士の所にやってきた。かなりやつれて元気のない感じだ。
「どうした小僧?」
「シーツと担架が欲しいんだよ。この近くに怪我人がいるんだ」
「よし村の中から持ってきてやれ」
二人の兵士に指示を出す。
「なあ小僧よ、この辺で若く高貴な御方を見なかったか?」
「さあ」
「俺はおかしいと思っているんだ。新聞記者が魔王城の牢に居た時、視察用のドレスを着たミリア様を見たと言っていた。しかしこの村の酒場にミリア様のドレスの切れ端がいくつも残っていた。姫のドレスは一点物の最高級仕立服なのだ。言ってることがわかるか小僧?」
「いや全然わからないけど」
「俺の首が飛ぶかもしれないという事だ。それは兵士を首になるという事ではなくて、本当に俺の首が飛ぶということだ」
ゴルドリンはしゃがんで両手で顔を覆う。
その時二人の兵士が戻ってくる。
担架の端をそれぞれ持ちその上に畳まれたシーツが乗っている。
「持ってきました」
「よし小僧に渡してやれ」
「ありがとう兵隊さん。なんか偉そうな女の人がいたら教えるから」
ゴルドリンはしゃがんだまま守の方に手のひらを上げて応える。
シーツを持ち、担架を引きずり二人の元に戻る守。
「早かったね守くん。盗賊を倒して奪ってきたの?」プリシラ姫が言うと
「まあね」
小夜が守の方を横目でみる「ホントですか守くん?」
一瞬固まる守だったが
「実は帝国の兵士が村の入り口にいて必要な物を持ってきてくれたんだ。盗賊は村にはもういないんだって」
「兵士がいるならこの辺りも少しは安全かもね」
「お姉さん、この人を早く連れて行かないといけません。どこの誰かも分からないですし、とりあえず私達が向かう町で、宿を借りて休ませてあげましょう」
若い娘の体をシーツでくるみ担架に乗せる。プリシラの右手は少しだけ動くようになっていた。
「あ、昨日よりは回復が少し早いかも」
担架は小夜と守で両端を持ち、途中からはプリシラと守で町まで運んでいった。
時間が掛かり町についた頃にはもう日が沈んでいた。
「やっとガランドの町に着いた」
「俺はもうくたくただし腹減ったよ」
「お疲れ様、守くん。一人で村からよく頑張ったね」
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