第35話 火酒魔王誕生
吹き抜けの会場で火酒を飲み談笑している魔族達。いい感じになってきたところで、ドゲムは会場真ん中に出てきて
「魔族の諸君ファザリスは死んだ。今から魔王はこのドゲムになるのだ」
ざわざわとなる会場。
「魔王が死んだって?」
「ファザリスは人間共と協力し本来大陸を支配するはずの優れた種族である我々が僻地に追いやられ人間に恵んでもらった食料や物資に甘んじ人間に飼われる家畜ようになった。魔族とは力で奪い他を支配するものだ。我々が人間を家畜にするのだ。私は大魔王の様に大陸を侵攻し人間を支配する。西の魔物どもが台頭してきているが、強い奴が大陸を支配すればいいのだ。それは我々であるに違いない。戦って支配する、それが魔族の本懐だ」
三階にいる上級魔族が「話が長いな」と言って別の話をし始める。
だが、どうやらドゲムは冗談で言っているのではないようだ。
拍手がパラパラと聞こえてくる。ボスを失った東の島の反乱分子を呼び寄せ、火酒をやる代わりにドゲムを魔王にするのに協力しろと言っておいた。
「これからは魔王ドゲムの時代だな。お前もそう思うだろう」
横目で魔族の様子を窺うハイオーク。
「俺はドゲムは嫌いだが、いつも火酒を飲めるのなら魔王がドゲムでもいいぞ」
これだと思った煽り部隊は「ドゲム様についていけば火酒を浴びるほど飲むことができるぞ」と叫んだ。
酩酊状態の魔族達は「その通りだ、火酒を造るドゲムが魔王だ」
実際はこのパーティで火酒のストックはもう無かったのだが。
「新魔王誕生万歳」
酔った勢いで魔王に就任するというドゲムの作戦は成功した。
「皆がこのドゲムを認めてくれているようだな」
「あのードゲムさん。そろそろロラン王の居場所を教えて下さい」
隣にいたアレンが口を開く。
「私ずいぶんあなたに貢献しましたよね」
ドゲムは男をジロリと見て「お前も私の火酒を飲むといい。これは大好評でな」
火酒の入ったジョッキをテーブルから取りアレンに渡す。
「そうですか。それではご厚意に甘えて」一気飲みするアレン。
ニヤリとするドゲム。
それは魔族用の火酒だ馬鹿め。人間が飲むと即死だ。利用した後は殺すだけだ。
「美味しいですねこれは。ドゲムさんの最高傑作ですねこの酒は」
苦々しい顔でアレンを見たドゲムは「くそ、本当に人間なのかこいつは」
まあいい。
「ロランはもう十七年前に亡くなっている」
「それは本当ですか?」
「帝国との戦いで死んだらしいが死体は何故か小さくミイラの様になっていたという事だ」
「ミイラ?」
男はそれを聞いて笑い出す。
「記録が消去されていたので分かりませんでしたが、逃げる前の延命措置が間に合わなかったんですね。あの装置は小型化出来ないから」
アレンは愉快そうだ。
なんだこいつは?という顔でアレンを見るドゲム。
「生前彼は何かを作っていましたか?」
苦々しい顔でドゲムは火酒ジョッキを取りを一気に煽る。
「魔王ファザリスと協力して何かを作っていたようだな。私は良く知らんが。その時にファザリスの力も強化されたようだ。ロランの協力でユニークな能力を持った眷属も生まれたようだな。奴の眷属は皆、特殊能力を持っているのだ」
「ああ、ヴァシャールさんですね。たしかに随所に彼の作品だというものを感じますね」
アレンはドゲムを見て「この大陸で彼に家族はいたんですか?」
「魔王ファザリスがロランの娘を連れてきてここで育てていた。あの小生意気な娘を。後は知らんな」
アレンの顔が急に真顔になる。
「その娘はどこにいるんですか?」
「もう死んだ。塔から落ちてな」
「死んだ?何時の事ですか?」
「つい最近のことだ」
「それは生まれた時、悪鬼の様に暴れて周りを皆殺しにしたということはなかったですか?」
「知らん。ただの小娘だ。魔王に甘えているだけの。なんの能力も才能もない」
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