第33話 西から来た男

 魔王城の謁見室にある玉座にドゲムが座っている。


 なかなか悪くない椅子だな。もうすぐわが城になるのだ。誰も気づいてはいないだろうが、あのパーティ以降ファザリスの魔力は以前より弱くなっている。圧倒的な力を感じなくなった。今がチャンスなのだ。なんとしてもファザリスを亡き者にして、私が魔王になり再び魔族が大陸を支配するのだ。


 衛兵がドゲムの元にやってくる。

「どうした?」

「人間がこの城の主に会いたいと言っています」

「人間だと?何人だ?」

「一人です」

「そういえば、ロラン王が以前同じように一人でこの城を訪れてきていたな」


 魔王城を訪れ、魔王ファザリスにのみ自分の発明した物、強化技術を惜しげもなく使うロラン。この魔王城の発明家で科学者のドゲムを何故訪れないのか?ドゲムは魔王に嫉妬していた。


 そしてロラン王に会った時の屈辱を思い出すドゲム。


 偶然を装いロラン王の前に現れたドゲムは「人間の王よ。私も魔族の発明家で研究をしているのだが、よかったら私の研究所に来てみないか?あなたの話も聞かせて欲しい」

 ロランは少し考えて

「私はあなたにも、あなたの研究にも全く興味がない。私が興味があるのは魔王ファザリスだけだ。申し訳ない参謀ドゲム」

 ロランは魔王の居る部屋に行ってしまった。

 顔が歪むドゲム。

「人間ごときが下手に出たこのドゲムに最大級の屈辱を与えたな。絶対に生かしてはおけん」

 しかし魔王はロラン王に手を出す者は処刑すると言っていた。

 手をこまねいているうちに、ロランは帝国との戦いで戦死した。


「今、城に来た人間は生きては帰れぬな。私に嫌な事を思い出させた」

 跳ね橋の先には若い男が立っている。どこにでもいる塵芥だな。

「魔界に迷い込んでしまったのか人間よ。平和ボケもいい加減にしないと死ぬことになる」

 目の前の人間が戯言を言う前に、肉人形に変えようとドゲムは呪文を詠唱した。

「ここは、虫がいないんですね」

「なに?」

 おかしい何故体に変化が無いのだ?

「人間界は虫がたくさんいるのに、何故ここには虫が全然いないのですか?」

「それは魔王が虫嫌いだからだ」

「へーえ」

 イラっと来たドゲムは

「ヘルファイア」

 男の足元から獄炎が噴き出す。

 男は少し驚いた顔をしたが、何事もなかったかのように立っている。どういうことだ?こいつは勇者か?いや私のヘルファイアを喰らえば勇者といえども只ではすまない。


「お前は人間なのか?」

「もちろんそうですよ。でも私の事はどうでもいいんです。この人を探しているんですけど知ってますか?」

 写真を渡される。

「良く描けているな」と言ってドゲムが写真を見る。

「ああ、これはロラン王だな」

「王ですって?彼は王様になってたんですか?」

 男は何故か笑っている。

またイラっと来たドゲムだったが、魔法が効かないこの人間を扱いかねていた。

「お前はどこから来たのだ?」

「大陸の西の方からです」

「では帝国の者なのか?」

「私は帝国とは関係ありません。そんなに身構えないでください。私はあなた達のやってる事には興味がないですから。この写真の男を探しているだけなんです」

「お前はロランと知り合いなのか?」

「はい彼の事は良く知っています。同じ研究チームだったこともあります」

「ということはロランの様な発明品を持っているのか?」

「彼ほどではないにしてもいくつかは」

「そうか」

「私に力を貸してくれたら私の知っているロランの情報を全て教えよう」

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