椿は掃除ができない(おまけ)
あれから舞香は一度も学校に来ていない。
「臣ー!助けてよー!」
椿は朝から清臣に泣きついていた。
国民的アニメのロボットに泣きつく主人公のように。
「まず要件を言ってください。」
椿は潤んだ瞳で清臣を見る。
「ロッカーが、片付かないの。」
今日は修了式だった。
どうやって試験勉強をしたのか不思議になるくらい椿のロッカーには教科書が揃っている。
「無理ですね。」
「そんなこと言わないでよ。臣は私の護衛でしょ。」
「別料金です。」
「いいよ、払うから!カバン貸して!」
奪ったと言うのが正しいような、清臣のカバンは驚くくらい空っぽだった。
「こんなの持ってこなくても一緒じゃん。」
「それで困ったのはお嬢でしょう。」
「その通り。」
言いながら椿は教科書をどんどん詰めていく。
「……俺の方が多くないですか?」
その上、辞書とか資料集とか重いものが清臣のカバンに集中している気がする。
「女の子にたくさん持たせる気?」
通りかかった唯華が声をかける。
「今年は守間くんかー。」
がんばって!と唯華は清々しいほどの笑顔で笑う。
「今年は待たされないからってご機嫌ですね、唯華さん。」
「あんたが言うな。」
椿はパンパンになった鞄のチャックを閉める。
それでもロッカーにはまだ教科書が数冊残っている。
「入り切らないから残りは手持ち。」
そのあっさりとした感じといい、慣れた様子といい、常習犯であることは間違いなさそうだった。
よいしょ、と気合を入れて椿は鞄を背負う。
「おっと……」
その重さにふらついた椿を支える清臣。
「あれまあ……」
唯華が顔に手を当ててわざとらしく言った。
「初々しいこと。」
「うるさいなあ!」
唯華は椿の蹴りを華麗に避けて、ヒラヒラと手を振る。
「じゃあ、また後でね。」
椿はこの大量の荷物を家に置いてから、唯華たちと遊ぶ約束をしていた。
「持ちますよ。」
「え!優しい!」
椿は遠慮する素振りすら見せなかった。
慣れとは恐ろしいものだ。
清臣は椿を軽く睨んで、でも、教科書は持ってあげる。
頭二つ分くらいの身長差の二人が歩いていく。
椿のポニーテールが揺れるたびに、楽しそうに笑うその横顔に、清臣も目を細めて笑う。
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