第26話 国境に掛かる橋

 王国と共和国を隔てる大河。

 ウバウ川は臨戦状態であった。

 すでに国境線間際まで、敵国兵が迫っている。

 王国側も部隊の移動を始めている。

 だが、正直、敵が侵攻を開始したら間に合わないだろう。

 そうなれば、検問所を含めて、最前線に配置されている国境警備隊が最初に敵と交戦する事になる。

 国境警備隊の隊長、ダリル大佐は覚悟を決めていた。

 軍が体勢を整えるまでの時間を稼ぐ。

 それは玉砕覚悟であった。

 国境警備隊の装備は旧い機関銃程度。

 最近、軍に配備が始まった装甲車や戦車だって無い。

 敵軍が押し寄せれば、劣勢になるのは当然だった。

 だが、それでも簡単にはここを通させない。

 最悪の場合、川に掛かる鉄橋を落とす。

 しかしながら、爆薬を仕掛けるにも、対岸には同じように検問を置く敵の国境警備隊が居る。この橋を渡るだけでも侵略行為に当たる。

 事前に爆薬を仕掛けるなんてマネは容易には出来ない。

 ならば、敵軍が侵略を開始した時点で橋を爆破する準備をするしかなかった。

 何とか纏まった量の爆薬は容易した。

 トラックや馬車に詰め込んでいるので、何かあれば、それを動かし、橋の上で爆破させる。構造的に橋の上で爆破したぐらいでは鉄橋の破壊に至らないだろうが、路面に大穴が開くだけでも十分に敵を遅延させられると考えていた。

 

 そして、初夏の朝靄の中で事態は起きた。

 まだ、太陽は登り始めたばかり。

 薄っすらと明るくなった時、金属キャタピラが地面を削る音がする。

 「敵の戦車です!」

 検問所の兵が叫ぶ。同時に砲撃が始まった。

 砲弾が検問所周辺に着弾する。爆風が土嚢に隠れた兵士の上に砂を掛ける。

 「応戦!応戦!」

 現場指揮をする将兵が叫ぶ。

 ダリルは叩き起こされ、兵舎から飛び出した。

 制服を着るのもままならぬ状態で彼は部下に叫ぶ。

 「橋を壊せ!」

 相手は戦車を前面に一気に国境を突っ切るつもりだ。

 橋の路面だけでも壊せば、戦車を通すのに時間が掛かる。

 その為に自殺覚悟でもトラックや馬車を橋の上に移動させねばならない。

 国境警備隊の隊員達は橋に向かってくる戦車や装甲車に銃撃を加える。

 だが、それを物ともせず、戦車は砲撃を繰り返しつつ、橋に乗った。

 そこに王国側からトラックや馬車が列をなして、突っ込んでくる。

 互いの砲撃や銃撃が激しさを増す。

 先頭のトラックが擱座した。その瞬間、荷台の爆薬が爆発した。

 大きな爆発が橋の上で起きる。

 これで敵兵は気付いた。王国側の狙いが橋の爆破である事を。

 敵の攻撃は国境警備隊が用意したトラックや馬車に集中する。

 次々と大爆発が起きる。

 ダリルは作戦の失敗を覚悟した。

 まだ、橋には僅かな穴ぐらいしか開いていない。

 とにかく、ここを死守する。

 ダリルと彼の部下達は残された僅かな銃弾と手榴弾で対抗した。

 この日、1時間程度の銃撃戦で敵は国境を破った。 


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