第59話死人狩り


「ちょうどよくあの執事を殺せたから、召喚の生贄に使わせてもらったわ」


 ラッキーだったわ~とケラケラ笑うピクシーの言葉をアメリアが茫然として聞いていると、蝶番がギギギギと不気味に軋む音を立て始め、黄泉の扉が開き始めた。


「ひぃっ! 私は、私は死者なんかじゃないわ! 心臓も動いて生きている! 死んでなんかないわ!」


 先ほどまでの尊大な態度が嘘のように、メディオラは取り乱して叫んでいる。何かの気配を察知しているのか、扉のほうをみてガクガクと震えているが、アメリアには何がそんなに恐ろしいのか分からず、彼女の変化にただ戸惑うばかりだ。


「死人狩りを恐ろしいと感じるのは、死者だけです。生者には関わりの無いものですからね」


 這いずって必死に逃げ出そうとするメディオラの周囲に、ぐるぐると黒いもやのようなものがまとわりつく。

もや渦巻ぶわっと大きく広がったと思った次の瞬間に、鎌を持った死人狩りが二体、彼女を見下ろすように立っていた。

死人狩りは真っ黒な仮面をつけて、黒い薄布のような長いローブに身を包み大鎌を携えている。黒いローブを翻すと、それがメディオラの周りと取り囲むように広がった。


 物言わぬ死人狩りが、ゆっくりと鎌を振り上げる。


「ひいぃ」


逃げ出そうとしても、黒い薄布が壁のように彼女を取り巻いてその場かれ出られない。そしてじわじわと体を締め付けていく。


「いや! いやよ! 私は選ばれた人間なのよ! 永遠に現世で生き続けるのよぉ!」


 メディオラの悲痛な叫びもむなしく、死人狩りに首に鎌をかけられた彼女はそのままずるずると黄泉の扉へと引きずられる。

扉の向こう側は、闇に閉ざされていて何も見えない。


「ああああアアァァ」


死人狩りとメディオラが扉をくぐると、泥に沈むように彼女の叫び声だけを残して闇に消えていった。

 

アメリアは身動きできずその光景をただ眺めているしかできなかった。

 

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