第36話使い魔契約
こうなってしまっては、丸腰で実家を訪れるなんてできない。魔女としても出来損ないの自分が使い魔を持つなんて想像もしていなかったけれど、魔物たちが望んで言ってくれているのだから、契約してしまおうとアメリアの腹は決まった。
「皆には申し訳ないけど、使い魔契約お願いしたい……です」
全員が頷いたので、皆とアメリアは契約することになった。
使い魔を四体も従えている魔女なんて前代未聞だ。それが出来損ないの自分であるのだから、なんだか笑えてくる。
「じゃあ契約はアメリアと付き合いが一番長いアタシからね。さ、手を出して」
一応主従になるはずなのだが、イニシアチブをピクシーのほうが握って契約を進めることに若干の疑問を覚えながらも、色々な情報で混乱していたアメリアは言われるがまま準備に入る。
契約は、お互いの血を交わしながら主従を結ぶと誓うと成立する。ナイフで切り込みを入れた親指を合わせ、二人同時に、それぞれの言葉で誓いを述べる。
「私はピクシーと使い魔契約を結ぶとここに誓います」
「アタシはアメリアと命をつないで生涯あなたのそばにいると誓うわ。対価はその魔力で」
お互い合意の契約であればどんな文言でもよいのだが、ピクシーの命だの生涯だのと割と重めの文言が入っていたような気がして『えっ?』と戸惑ったが、次の瞬間には血が契約紋となって腕に刻まれて契約は成立してしまった。
「あ、あの、そんな一生使えてほしいとか思ってないから……もっと軽い感じで……」
使い魔契約についてほとんど知識がないため、ピクシーに主導されるかたちで契約を交わしたが、本当にこんな文言でいいのかよく分からず戸惑う。
「おー、じゃあ次は俺だな。俺も『一生お前に尽くしてやる』ぜ。あ、対価は魔力で」
「じゃあ次僕も! 僕は『死が二人を分かつまで、僕を可愛がってね♡』ってことで。もちろん対価は魔力で」
「では俺も……『ヘルハウンドは死んでもあなたのお傍に付き従います』魔力はちょこっとでよろしいので対価としてお願いします」
次々に指を重ねられ、アメリアは目を白黒させていたが、早く誓ってよと急かされ、考える暇もなく『誓います……』と契約を口にしてしまう。あっという間に契約紋が刻まれた後で、はたと我に返る。
「ちょっと待って。皆対価に魔力をって言うけど、私魔法もロクに使えないんだから魔力なんてほとんどないよ!? 皆が対価として持ってちゃったら、私死ぬんじゃない!?」
アメリアが焦ってどうしようと騒ぐが、魔物たちはそれぞれ誤魔化すように目線を逸らす。
「あー……大丈夫よ。対価って言っても契約上のものだから……」
「そんなにもらうわけじゃねえからアメリアにはなんの影響もないから心配すんなって」
「うんうん、ほんのちょっとだよ。大丈夫」
「そうそう、ちょこっとですから何の問題もないです」
なんだか妙に言い訳がましい様子の魔物たちに、なにか不審なものを感じて、じーっと彼らを見つめるが、ピクシーが今後のことを考えなきゃと話題を変えたため、そのことは問い詰める前に話が終わってしまった。
「ともかく、七日後の実家訪問に備えましょう。使い魔を四匹も引き連れていたら、いくらなんでも不自然だから、誰か一人がアメリアについて行くしかないんじゃないかしら」
「ほかは近くで待機するにしても……誰がついて行く?」
サラマンダーの問いに、うーんと皆が頭を悩ませる。何かあったら一番近くにいる者がアメリアを連れて脱出する事態になることも想定しなければならない。
それが最適な者が誰かを考えた時、やはり危機を予知できるケット・シーが一番なのではないかという結論になる。
けれど、当の本人がそれに難色を示した。
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