第35話何かが起きている
「はあっ? なんでソレもっと早く言わねえんだよ! 確かになんか嫌な気配がしていたけど、魔女の系譜だからかと……」
「そうね。気持ち悪い生き物みたいに感じたけど、特殊な魔女だからかと思ったわ」
「でもさ、ヘルハウンドが言うんだから何かあの世と関わりがあるヤツってことなんでしょ? どう考えたって危険な人物でしょ」
魔女にとっても死は穢れであり、大昔は生贄に動物の死体を使う術なども存在していたらしいが、現在では、それをすると子々孫々まで血が穢れるとされ、魔女協会では明確に禁止している。
だから魔女界の超エリートである兄が、死臭がするほど死に触れ、あの世と関りを持つことなど本来あり得ないのだ。けれど、地獄から来たヘルハウンドが言うのだから間違いはあるまい。
「今のアメリアさんでは身を護る術がありません。あの男が、なんらかの悪意を持ってアメリアさんを呼び出した可能性があるのなら、単身で乗り込ませるわけにはいかないです。私たちの誰か一人でもいいから、契約して連れて行ってほしいのです」
ここまで言われて、アメリアに断る理由はもう見つからない。
「でも……いいの? 皆からしたら私と契約しても何のメリットもないし……」
命や体の一部を対価に捧げるのでなければ、魔物たちにはなんの益もない契約に思える。単にちょっと助けたくらいの相手にずっと縛られる契約をさせるのは気が引けた。
「対価はアメリアのそばにいられる権利を得たことだけで十分よ」
「調伏でないなら、お互い合意すれば契約も解消も容易にできるんだろ? そんなに重く考えなくていいんじゃね?」
ピクシーとサラマンダーは二つ返事で受け入れたが、ケット・シーはすぐには頷かず何かもの言いたげにしていたので、気を遣ってアメリアが声をかける。
「あの、別に全員が契約しなきゃいけないわけじゃないんだから、断っていいんだよ」
断りにくい話の流れになってしまって申し訳ないと言うと、そうじゃないと首を横に振る。
「ずっと予知がちらついていたんだけど……あの男、死ぬ未来があるよ。それどころか……アメリアの身にも……危険が及ぶかもしれない」
あの男とは、アメリアの兄であるモノリスのことだ。不確定要素が多すぎて確実なことは言えないが、死に向かうルートが存在していると突如予知をしたケット・シーに、皆が一斉に息を呑む。
「だからもちろん僕もアメリアと契約する。僕は何もかも予知するわけではないけど……悪いことはよく当たる。今からでも何か手を打っておけば、最悪の危機は避けられるかもしれない」
ケット・シーの予知は、現時点で積み上げられた事象から導き出されることを告げているので、変えることができる未来でもあるが、変えるために何も行動しなければ予知した未来に向かって進んでいってしまう。
「兄が死ぬかもしれない未来って、実家で何かとんでもないことが起きているのかな……?」
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