第33話穏やかな食卓


 窓から差し込む朝日の眩しさで自然に目が覚めたアメリアは、ベッドから起き上がると着替えてリビングへと向かった。そこにはすでに魔物たちが全員揃っていて、朝食担当のサラマンダーが皿を運んでいる。


「おはよ。今日は早いじゃんアメリア」

「あ、うん。昨日早く寝たから目が覚めた。お、おはよう」


 おはよう、おはようと皆が口々に声をかける。毎日行われている当たり前の挨拶なのだが、これまで自分は言われたから仕方なく返事を返していたから、随分と愛想のない言い方をしてしまっていたなあと思い返す。

 食卓には、今日は焼き立てのワッフルと、果物、野菜と数種類のチーズが並んでいる。アメリアのワッフルにはすでにひたひたになるほどメープルシロップがかけられているが、これもいつものこと。

普段ならげんなりしながら黙って食べるところだが、昨日聞いたところによると、少しでもカロリーをとれるようにとの配慮らしいと知り、今日は感謝の気持ちでそれらを見る。


「い、いただきます。あの……いつも食事作ってくれてありがとう」


 お礼を言うと、サラマンダーは少し困ったようにはにかんで、早く食えとだけ返した。

 全員で食卓につくと、ワイワイと和やかな雰囲気で食べ始める。

 ワッフルを口に運びながらアメリアが顔をあげると、皆が談笑しながらゆっくりと食事をしている光景が目に入る。


(多分、食事を楽しむってこういうことなんだな……)


 アメリアにとって食事とは苦痛な時間だという認識だったから、魔物たちと食卓を囲んでいても、いつも下を向いて食べていたから皆がいつもどんな風に食事をしているのか見ていなかったと気付いて、本当に自分は彼らに目を向けることすらしていなかったんだと反省する。

 



「ところでアメリアは、いつ実家に行くの?」


 甘いワッフルと格闘しているところでピクシーから昨日の話題が振ってこられた。


「あ、えっと手紙には七日後を指定されている」

「えー! ホントに行くの? アメリアのおにーちゃんすごい嫌な奴だったし行ってほしくないなあ」

「同感です。あの男は気持ちが悪い。本当にアメリアさんの兄なのですか?」


 アメリアだって行かなくてよいなら行きたくない。

けれど絶縁する際に、いくつか約束させられたことがあって、それには家名を名乗らないことや習った魔法を悪用しないことなどなどのほかに、国外に出ないこと、そして兄からは『自分からの連絡には必ず応じること』を求められ、魔法契約書に署名までさせられているため、約束を破ることはできない。

だから除籍されたとはいえ完全に縁が切れたとは実は言い難い状態で、約束を破った場合どのような報復を受けるか分からないのである。


「変な話ね。縁を切ったのに連絡に応じろなんて意味が分からないわ」

「それは多分……実家はまだ、私に恩寵が発現するかもしれないって疑っているからじゃないかな……」


 恩寵が発現したらいけないの? と首をひねる魔物たちに、アメリアは実家の事情とそれから考えられる予想を述べる。


「もし私に恩寵が発現したら、真っ先に自分が確保しておきたいってことだと思う。覇権争いをしている兄姉たちとは、力が拮抗しているから、母様の後継ぎになるために少しでも有利な駒を持っておきたいってことじゃないかな」


 兄がわざわざ自分で手紙を届けに来たのは、様子を見に来た意味もあるのだろう。

今更発現するなどあり得ないのだが、わずかな可能性も拾っておきたいくらい、兄姉間での争いは激化しているのかもしれない。


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