統一歴1597年 とある平原より 1/2



 およそ900年前、この世界の住人たちは危機に貧していた。突如として世界に空いた大穴から、悪魔たちが地上へ溢れだしたのだ。

 穴の中心の浮島には悪魔の王が住み、大穴を中心に世界の1/3が毒の沼や魔物だらけの死の土地へ変わった。


 世界が終わると思われたその時、とある草原の民に産まれた青年が立ち上がる。彼は仲間を集め、悪魔の王と戦ったのだと言う。

 彼の奮闘により、悪魔たちは大穴の向こうへと退けられ、世界は救われた。

 統一歴は青年が産まれた草原の民の暦を採用した世界統一の暦として登録され、今も続いている。



 ◆◆◆◆◆



「さあさあ皆様!

 死の土地復興プロジェクト達成の記念のメダルはこちらですよ!全世界統一のモノホンを扱っているのは、この都市リッドでは我がヒトト商会のみ!」


 そんな髭面男の呼び声に、記念メダルの購入のために商会前の露天は多くの人が集まった。彼らは皆一様に我先にと手を伸ばしている。

 都市内のそこら中がお祭り騒ぎで、魔法の込められた街頭から花吹雪が空を舞っていた。みんな笑っていて、みんな楽しそうで。


 研究者たちが少しずつ毒の解析を行い、長い長い時をかけて死の土地の浄化は世界中の国が協力して行われた。

 悪魔という共通敵によって団結していた国家は、死の土地の復興のために手を取り合い続けたのだ。

 魔法も科学も総動員され、それでも900年かかった浄化作業がついに終わった。それは、国中を上げて騒ぐ価値のある大イベントだ。


「あーあ。みんなこんなに楽しそうなのに。仏頂面はラルフだけだよ?」

「うるさい」

 人混みを早足で歩くラルフは、後ろのピエロを睨みつけた。サーカスで『27番』と呼ばれていたピエロは、「はいはい」と肩をすくめてため息をつく。

 あちこちで見世物をやっているからか、仕立ての良い服を着たラルフと派手なピエロ衣装の27番という不思議な組みあせもさほど目立たずに済んでいる。


「食べる?」

 27番はラルフに露天の串焼きを差し出す。

 いつの間に買ったのかとラルフが顔をしかめると、27番はクスクスと笑いながらまだ湯気の立つ串焼きを頬張る。

「せっかくなんだし、もっと楽しもうよ」

「…公にされていないだけで、あの土地の利権の奪い合いはかなり前から始まっている。これから戦争になるぞ」

「へえ。だから祭り用の物資に紛れて武器や魔法道具がわんさか取引されてるワケだ」

「そうだ。」

「ふーん…いいじゃん、楽しくなる」


 ラルフは足を止めて振り返る。

 真っ黒な髪と真っ黒な目。反対に肌は死人のように青白く、目の下には深いクマが刻まれていた。ラルフの歳が22歳だと聞いたとき、27番はかなり残念に思った。

「それは、お前のがやりやすくなるからか?」

 誤魔化しも無いラルフの表情と声にあるのは、侮蔑と憤怒。あまりにストレートな敵意に27番は腹を抱えて笑いたくなった。


 この都市ではラルフは、余所者の27番さえ知っているちょっとした有名人だ。

 都市イチの大商会の長男坊で、さる令嬢との結婚まで決まっていたというのに。つい先月、令嬢との結婚も家を継ぐ権利も全て放棄して家を出たのだという。

 家族の必死の説得も虚しく、ラルフの決意は固く父母も弟たちも諦めるしかなかったらしい。令嬢は弟と結婚することになり、当のラルフは手切れ金としてかなりの金を受けとり、二度と商会の敷居を跨がないと公的な契約までしたとか。

 誰もが真意の読めない薄気味の悪い人だと27番は聞いていた。だが、27番からすればあまりに分かりやすい男だったから。


「俺ちゃんの趣味知ってて、ふたり旅に誘ったの?」

「そうだ」

 サーカス団と共に各地を旅していた27番たちは、ある時国の依頼で死の土地の作業員の慰労のために巡業を行った。

 ラルフは死の土地への道案内を望み、その相手に27番を選び、多額の報酬を手にサーカスへとやってきたのだ。


「船は3日後に出港だ。準備を整えて港に来い」

「はあい、ボス。

 でもさーそれ、…あ。行っちゃった」


「(密航でしょ、それ。)」

 死の土地へは正式な書状が無ければ上陸はおろか近寄る事さえできない。当初こそは多くの作業員や兵士が駆り出された。だがほとんど復興の終わった今では、突然家を出た商会の息子と身分の微妙なピエロがあっさり手にできるチケットではないのだから。



 ◆◆◆◆◆



「ねえ、ラルフって帰りのこと考えてる?」

 死の土地の小屋で27番はラルフに問う。

 復興のための中継地点となっていた小屋は、放棄されて長いようだが暖炉も家具も十二分に使うことができた。

 死の土地には現在、島の南西にある研究所を除いて人間は誰もいないことになっている。

 もちろん、ラルフや27番のような密航者は居るが、まだおおっぴらに動くつもりは無いのか気配や僅かな痕跡を見つける程度だ。


「俺ちゃんはまた密航して帰るけど、ラルフはどうするの?ここに住むとか?」

 27番はラルフの荷物を覗いたことがある。

 衣類が数点、薪を割るのに使っていた少々大振りなナイフ。魔法のランタンやコンパス。あまりページの埋まっていないノートと鉛筆。金は27番に渡される報酬を除くとごく僅かな金銭。

 仮に、仮にここでラルフが死んで後に荷物だけが見つかっても誰とも分からないような、そんな物だけだった。

「…目的を終えたら次に行く。それだけだ」

「次って?」

「お前に言ったところで、理解できないだろ」

 27番はこの旅で何度目かも分からないため息をつく。ラルフは基本、最低限のことしか話さない。

 疲れたとも腹が空いたとも言わず、ただ淡々と島の中心を目指している。


「じゃ、俺ちゃんがここでラルフを殺すって言ったら?」

「好きにしろ、27番。いや、殺人鬼クラウン。

 次の機会に調べれば良いだけだ」

「次、ねえ。」

 クラウン。27番の趣味。

 美女、美青年、美丈夫。27番はサーカスの巡業の傍ら、とにかく見目の良い人間を騙すことを愉しみとして生きてきた。遊んで、飲んで、犯して、殺す。

 サーカス団が疑われた時も、27番は警備隊の長を堕として嫌疑を逃れた。数多の人間の好みに合わせて姿形を変えながら。

 夢のような一時の後、死んだ彼らは皆幸せそうに笑っていた。そうして付いたあだ名が殺人鬼クラウン。

 ギリギリの平和を保った世界を股に掛ける指名手配犯だ。


「死後の世界でもあるのかな?」

「そんなものは無い。あったら俺が当に見ているはずだ」

 言葉だけ聞けば夢見がちな若者のようなのに。

「(世界をあきらめたみたいな顔だなあ)」

 多くの若者の命を奪ってきた殺人鬼は、やはりラルフを見て残念に思うのだ。




 ◆◆◆◆◆


 ◆◆◆




 死の土地での旅を始めて14日を過ぎた。


 置き去られた復興用の物資や拠点を利用しながらの旅は当初の予定よりずっと早く進んでいた。

 27番の知る舗装された道や残されたボートを使って川を下ることで、かなりの行程を短縮したからだ。

 地図と座標を比べれば、死の土地の中心までは今のペースならもう3日もあれば着くだろう。


 森を抜けた先、広がる草原を見てラルフは荷物から袋を出してそのまま27番へと渡した。


「27番、報酬だ」

「ありゃ」

 渡された袋には27番の知る額と同じだけの金貨が詰められている。これでラルフは正真正銘無一文となる。

「なんだ、俺ちゃんを殺すつもりかと思ってたのに」


 ラルフがわざわざ道案内に殺人鬼を選んだのはなぜか。

 あのサーカスには他にも旅慣れした物が居た。その中で、ラルフはあえて27番を選んだ。

 正義の味方をやりたかったわけでは無い。手段を選ぶつもりもなかったが、どうせ巻き込むなら死んでも良いなと思う人間にしたかった。

 だから、あのサーカスで一番血なまぐさい人間を選んだ。殺人鬼だと知ったのは、その後だ。

 以前なら、殺人鬼を見逃すことなどしない。

 利用するために共に旅をしても、最後には確実に殺した。


「俺がやらなくても、いつかがお前を殺しに来る。」

「アイツ?」

 一度エリックを拷問にかけてから、今回で5度目の転生となる。その間に知ったのは、エリックが世界を脅かす人間や化物を殺しているという事実。

 間違いなく英雄で、ヒーローで。正義の味方で、人類の希望で未来で。憧憬を抱く存在であり、勇者であり戦士であり。どの生でも偉大な功績を残して逝く。


 それなら、クラウンを見逃すはずが無い。


 なら、27番はいつかエリックの正義に殺される。だったら放って置けば良い。その先にどれだけの犠牲が出ようと、ラルフは目をそらすと決めていた。

「正義で死ね」

 無為な人間を殺してきた目の前の人間を、ラルフは本当ならこの手で殺してやりたい。

(だが、それは俺には不必要な感情モノだ。)

 捨てて間もない信仰心と善心が悲鳴を上げる声がする。今からでもエリックと共にに歩く道を選べと幻聴もする。


 きっとそうすれば、この色を失った目にも鮮やかな景色が戻るのだろう。


「なら、ここからは勝手に着いていくね」

「勝手にしろ」

 27番のような愉快犯なら、そう言い出すだろうことも予想はついていた。

(勝手にして、勝手に死ね)



 ◆◆◆◆◆



 草原での道行きは、ずっと晴れていた。

 否、草原には夜が無かった。


 森を抜けると同時にあった薄い膜を突き抜けたかのような奇妙な感触。魔力を感じたことから、草原全体にかけられた結界なのだろう。

 ただただ広がる草原を前へ前へと進む。森は数歩歩けばあっという間に見えなくなり、あたり一面がただの草原となった。

「これ、俺ちゃんたち真っ直ぐ進めてる?」

「問題無い。瘴気を辿っているからな」

「うへ、瘴気ってあの?死の土地に蔓延してたやつ?」


 かつて悪魔たちが来た際に空いた大穴は、悪魔の王を打ち倒した後も残った。悪魔たちの世界と繋がっていた影響か、瘴気が溢れていたため死の土地の復興の際に土や岩を使い埋められたのだという。

「それ、吸って平気だっけ?」

「さあな」

 爛々と照り続ける太陽も、瘴気の浄化のために多くの魔法使いたちの叡智を結集して作られたと文献には記されていた。あれが出来たのは900年前の戦いから200年ほど経過した500年前だという。

 900年の時が経ち死の土地の復興が表向きに終わっても、まだ悪魔の爪痕は残っているのだ。


 草原に水場無い。来る前に汲んだ水は草原への侵入から1日半後に尽きた。風は無く、沈まぬ日は砂漠の昼のように肌を焼き、ひたすらに体力を奪われる。果物で一事を凌いでも、引き返さなければ意味はない。

 魔法で水を出すのは控えた。魔力が尽きれば本当に成すすべがなくなるからだ。


「なぜ着いてくる」

 体の水分を少しでも残さなければなら無い中では愚かだと分かっていたが、ラルフは27番に問う。

「好みだから」

「好み?」

「ひと目見たとき、俺ちゃんの審美眼にビビッときた。

 でも、そんな疲れた顔じゃダメだ、もっと、元気そうな状態が良い」

「それは…」

 ラルフは27番の被害者たちの顔を思い浮かべた。新聞などに載っていた彼らは美形ばかりで、クラウンを恐れる民衆の中にはあえて顔を汚す者までいたらしい。

 過去の世界のことを考えても、人間の世界での美醜の基準はなんとなく似たりよったりだ。

 ラルフは美形と分類されることが多いし、エリックもそうだろう。


「俺ちゃん、面食いなんだよね」

 この暑さでも不思議とメイクの落ちていないピエロ顔で笑う27番に、ラルフは苦虫を噛み潰したようになる。

(なんだ、こいつは)

「世界って時々すごく残酷じゃん?

 だから、好みの人には楽しい思い出だけで人生終わって欲しいんだよね」

 あまりにも身勝手で、話を聞いているだけでも苛ついて仕方がない。

 27番の殺戮で我が子を失った両親や恋人、友人たちの悲しみはどれだけのものだったか。

「時間の無駄だったな」

「俺は、俺ちゃんに興味持ってくれて嬉しいよ?」

 乾く唇を舐める。すでに口の中に水分は無く、裂けた部分から僅かに鉄の味がしただけだった。


 27番の死を心の底からラルフは望んでいる。

 それはラルフの勘違いでも思い込みでもなくただの事実として、ラルフは27番が今すぐにでもその生を終えることを強く願った。


 ただ、その一方で。

 ラルフは心底、27番が羨ましかった。



 ◆◆◆◆◆


 ◆◆◆



『進め』


 頭の中で声がする。

 色を失った上に幻聴までと思うと、自分には存外限界が近く、永遠に続くかと思ったこの転生もどこかでぽっくり終わってしまうのではとさえ考えた。


『進め』


 幻聴の声は確かに自分のものだ。だが、今ラルフにある感情とは全く別のものがその声には込められていた。


『進め、さあ、さあさあさあさあさあさあ!!』


 それに気づいた時、ラルフが得たのは27番にも感じた羨ましさ。

(ああ、楽しいことが、したい)

 自分が笑うための事がしたい。ゆっくりコーヒーを飲んで、本を読んで、ぼうと景色を眺めたり、絵が書きたい。


(あと、あとどれだけ、どれだけ進むんだ)


 今にも崩れそうな膝を支えながら前を見た時、いつもは勝手に頭に流れてくるだけの幻聴がめずらしく返事をした。


『進みたいだけ、進めば良い。諦めたいなら諦めろ。

 お前が辞めたところで、世界は勝手に進むんだ』


(ああ、それなら



 せめて、好きな人を救って、死にたい。)




 ◆◆◆◆◆



 たどり着いた死の土地の中央には、1本の剣が刺さっていた。

 眩む白黒の視界と震える手足でどうにか剣に触れる。恐らくは900年前からあるであろうそれは、魔王を打ち倒した者が置いて行った剣だ。

 触れてすぐに伝わるのは、この剣が大穴と悪魔の世界を閉じる楔になっているということ。

 つまりは900年前に戦った草原の民だという青年は、向こうとこちらを繋ぐ線を完全に断ち切ることはできなかったらしい。


『さあ、抜け


 貴様の望むものがその先にある』


 そこにどんな事情があったのか、ラルフには知る余地が無い。

「27番、おれの、おれののぞみは」

 喉が乾いて、しわがれた声しか出ない。後ろに本当に27番がまだ居るのかも定かでは無い。


 最後の力を振り絞り、ラルフは剣の柄を握る。


「あくまに、あうんだ」


 魔力も体力も全てを使って剣を引き抜きにかかる。まるでラルフを待っていたかのように抵抗も無く剣は抜け始める。

 そして、無限に思えるほど広く広がる草原に、剣の分だけ小さな穴が空く。

 ラルフが剣を抜き捨てると同時に、それを待ち望んでいたかのように濃い瘴気が穴から一気に噴き出した。



 ◆◆◆◆◆




「で、ナニがしたかったんです?」


 瘴気のせいか、頭が痛い。視界は白黒な上に歪みだらけで見ているだけで酔いそうだ。鼻や目からは血が出ていたし、手足は痺れて痛みもある。

「ま、きら゙を、まぎらをごろし、だい゙」

 話すたびに喉が爛れ、口の中が血でいっぱいになる。


「マキラ?………ああ、アレか。

 ハイハイ、まあ、期待はしないでくださいヨ」


 目の前に居るのは悪魔だ。悪魔ツェツィーリア、蝿を操る、最悪の悪魔だ。

 あの剣の小さな穴の下から奴は現れた。穴の裂け目を大きく広げ、蝿と化物を伴って。

「て言うかなんでそんなに死にそうなんです?

 ………え?ダメ?ウソでしょ?」

 全身が液体で覆われたブヨブヨしたナニカ。腐った人間をボールにしたようなナニカ。

 多少見覚えがあるものでいけば、ミノタウロスにコカトリス。ドラゴン。

 ゴーレムに乗る壊れたフランス人形がケタケタと笑っているが、耳がだめになったのか突然周りが静かになった。


「──────」

 悪魔がなにかを言っている。

 隣に来たヤギ頭の別の悪魔となにかを話している。

 口の形を読めばと思ったが、もう目は見えなくなっていた。


(悪魔は居る。上手く、喚ぶができれば、あるいは)

 かつては恐れ、憎み、常に倒すべき敵として見てきたが、ツェツィーリア。奴ならば、と。


『我が王。小生は王のためにあり、王は小生たちのためにある。王が何も与えてくださらないなら、謀反は当然デショ?』


 ツェツィーリアの言葉を思い返す。

 あの魔法学園で喚んだ時にも、奴はラルフを王と呼んでいた。

 ただ、ラルフには彼らの王だった記憶は無い。脳が溶けそうな記憶の濁流をいくらもがいても、そんな記憶は無いのだ。


(忘れている?)


 仮設。


(俺はなにかを、忘れている?)




 ◆◆◆◆◆


 ◆◆◆◆





 草原。


 見渡す限りどこまでも広がる草原と、雲一つない青空。

 先ほどまで歩いていた草原と似ているが、どこか違う雰囲気があった。

「…色が、ある」

 草は瑞々しく明るい黄緑色に、空は透き通った青に。


「ラルフ」


 懐かしい声に、振り返る。

 赤茶色の、クセのある長い髪。薄緑色の丸い目。


「マキラ」


 緩く風が流れ、白いワンピースの裾と髪が揺れる。どこにも欠けが無く、忌々しい触手も無いかつてのマキラ。

(そう言えば、君はそうして笑うんだった)

 無邪気だけど少し人見知りで、困っている誰かを放っておけない女の子。哀愁も憂いも無く笑う顔はあの頃のマキラそのものだ。

 温かい感覚に頬に触れると、自分が泣いていることに気づく。気づくと、胸と鼻がツンと痛くなった。


「ラルフ、遊ぼう?」

 子どもの頃の様にそうして手を伸ばしてくるから、勘違いしそうになる。


「やめろ、27番」


 否定。

 止まらない涙を拭い、マキラの手を払う。こんなものは現実では無い。

「もう、辛い思いをしなくていいのに?」

 マキラの声で、マキラの顔で27番は言う。

 ノートに描いたマキラを見たのだろうが、声や色はどう再現したのか。一つ一つの仕草まで、マキラそのものだ。


「俺は、その頃のマキラを知っている。その頃のマキラを想っている。だからこそ、化け物のままにはしておけない」


「そっ、か。」


 眉を下げ、残念そうに肩を落とすとマキラを薄く黒い靄が包み、晴れる頃にはマキラは消えて見慣れたピエロの27番が立っていた。


「君だって、幸せなまま死ぬ権利はあるのに」

「惚れた女一人助けられないのなら、

 幸せに死ぬことなど、できる訳が無い」





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