第玖幕 初登校

 今回からは、武士校での生活が始まります。アキラたちがどんな活躍をするのか、楽しみですね!

 それでは、第玖幕始まります!































 入学式の後日初めての登校である。


「よし、大丈夫だな?剣帯も異常なしっと。」


 そこには、自室にて武士校の制服に身を包むアキラがいた。武士校の制服は動きやすく生徒一人一人のポテンシャルを最大限発揮できるように、種類が豊富でブレザー以外は自由に変えられる。アキラは学校指定の紫色のブレザー、その下に白色のパーカー、ズボンは紫色の止血テープが付いた黒いカーゴパンツ、首元には武士校の紋章が刻まれたループタイがある。


「さて、行くか。」


アキラは、制服に着替えると自室から出て、居間へ向かう。


「よし、仕込みは昨日のうちに済んでるし、さっさと作るか。」


 荒神家は、キョートにあるそれなりにいい一軒家でアキラとヒジリの二人暮らしをしている。料理は一週間の当番制になっており、今週はアキラの当番である。


「ふわぁ~‥‥‥おはよう、アキラ。」


アキラと共に暮らしている少女、荒神ひじりが制服を身に包み目をこすりながら居間へやってくる。


「おう、おはよう。制服にあってるな。」

「そう?ありがと!」


 ヒジリは、白いブラウスの上に紫色のブレザーを着て、黒いワイドパンツを履いている。


「朝飯はもうできてるから覚める前に食えよ。」

「うん!」


 二人は、食卓に着き朝食をとる。


「ふう‥‥‥さて、学校までまだ余裕があるけど、どうする?」

「うーん‥‥‥入学記念に送ってもらった弓を慣らしたいから、しばらくは朝練に行こうか?まあ、弓道場が使えたらだけど。」

「そか、じゃあしばらくは一緒に登校だな。」

「えっ!そうなの?じゃあさっそく一緒に行こうよ!」

「そうだな。」


朝食を終えた二人は、学校指定の運動靴を履き玄関を出る。


「‥‥‥にしても、好きだよね、そのパーカー。」

「一応、お気に入りの戦闘服だしな。それに、普通の運動着よりも頑丈だし動きやすい。」


 ここで、二人の登校風景を少し解説してみよう。風景としては高さはともかくとして様々な形の入り組んだ建物を飛び跳ねる、ようはパルクールをしながら登校している。二人とも、というか二人が所属している流派では移動にパルクールはマスト、らしい。そしてさらにその速度がおかしい。確かにパルクールでの移動はかなりの速度が出るが、この二人は本当に風にでもなったかのような速度を維持したままノンストップで自宅から学校まで、汗一つかかずに駆け続けているのだ。

 さらに恐ろしいことを言えば、アキラはこれでもまだ本気ではないのである。


「じゃあ、私は弓道場に行くね。」

「おう、じゃあまた後でな。」


 二〇分も経たずに学校にたどり着いた二人は、校門で別れヒジリは弓道場、アキラは職員室へ向かった。


「失礼します。」


アキラがノックをして職員室へ入るとそこには、出勤したばかりであろう武士校の職員達が仕事をしたり、珈琲を片手に一服したりして過ごしている姿があった。


「おはよう、よく来たねアキラ君。」

「おはようございます支部長。」


アキラの背後から朝練後でシャワーを浴びた後のような装いの神無月かんなづきみちるが現れた。


「ふむ‥‥‥やはり気づいていたか。」

「ええ、気配の操作と感知はうちの流派の十八番おはこですから。後は勘です。」

「勘?」

「はい、生まれつき異様に勘が鋭いんですよ。流石に目をつぶってとかは無理ですけど、ハンドガン程度の速度なら勘任せでよけられるくらいには。」

「何それ恐ぁ‥‥‥。」

「恐いとか言わないでくださいよ、生まれ持った能力なんですから。」


 ここで判明するアキラの能力其一、気配操作及び気配の感知。アキラたちの所属流派は気配の操作にたけており、戦闘中、殺気に強弱をつけ相手をかく乱するのが基本的な共通戦闘方法なのである。


 アキラの能力其二、もはや超能力としか思えない勘の鋭さ。本人も言った通り、拳銃の弾だけならば勘任せによけられるし、一度でも通ったことのある道ならば眼をつむっても、迷いなく歩き回れるほどである。

 ただし、身体機能すべてをかけ合わせることで可能になっているただの技術なため、本当に超能力というわけではない。


「さて、今日から君の【武士】兼武士校非常勤講師としての生活が始まる。君も内の職員の一人ともいえるので職員専用のロッカーまで案内しようといっても、すぐそこだが。」

「はい。」


職員室を出た隣の部屋に、男女で別れた武士校職員専用のロッカールーム前までくる。


「ここにはもう君専用のロッカーが設置されているから、それを自由に使ってくれてかまわないよ。」

「わかりました、ありがとうございます。」

「‥‥‥。」

「どうしましたか?」

「いや、固いなぁと、思ってね。もう少し、気安く接してくれてもいいんだよ?」

「流石に、上官にあたる人間に気安くに接するのは、どうかと思ううのですが‥‥‥。」

「うーん‥‥‥それもそうだがね石に年の近い同僚からかしこまった話され方をすると、疎外感というかね?」


アキラは、初めて会って以来、こいつもめんどくさい人間だな、と思った。


「わかりました、プライベートの時はなるべく気安く接するように心がけます。」

「うん!それじゃあ、私はこの後仕事があるからこれで失礼するよ。またね?」

「はい。」


ロッカールームの前で、アキラと別れたミチルは自分の職場へ向かい、アキラはロッカールームへ入って行った。



 †  †  †



 さて、とりあえず自分の個人ロッカーの前に来たわけだが、教科書とかは教室にある生徒用ロッカーに入れるし、武器も非殺傷性の物以外は訓練や非常時以外、学校に預ける決まりになっているし‥‥‥。


「あ!鍵ついてるし、あれ・・の保管場所に使えるかも。よし、そうと決まれば手持ちの半分を入れておくか。あと、電池も予備を何本か入れておいて‥‥‥と、これでいいか。」


 まあ、一応の用心ではあるが、学校にこれ・・を置くのは我ながらどうかと思うけども‥‥‥‥一応、勤めみたいなもんだからな。見つからないように頑張るしかない。



 †  †  †



 ロッカーに持ち物をしまったアキラは、もうそろそろ学校初日のホームルームが始まるため刀剣科棟にある、自分がこれから通う教室へ向かった。


「えーっと、一年の教室は三階で一組は廊下の突き当り‥‥‥あった!」


学校の地図を確認しながら歩き、目的の場所にたどり着いたアキラは特に緊張などはなく、武士校キョート支部一年一組の教室へ入っていった。

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