第5話  ミティアライトの影像 5-⑴


「すみません、水守っていう人に頼まれてきたんですけど、下ろしたら中に運ぶのを手伝ってもらえますか」


 谷地邸の前で大八車を停めた人夫は、大きな木箱らしきものを下ろすと汗を拭きながら言った。


「天馬君に……いいですよ、しかしなんだろうな、この大仰な箱は」


「じゃあ確かに届けましたよ。水守の旦那が来たらよろしく言っておいてください」


 人夫が大八車と共に去ってゆくと、入れ替わりのように天馬が姿を現した。


「やあ、届いたようですね。それではこいつを中に運び入れましょうか」


 天馬は初めて来る家だというのに無造作に戸を開けると、「ごめんくださあい」といつもの能天気な挨拶を口にした。


「やあ、君は確か梁川様の養子になる……」


「水守天馬です。今日はお時間を取っていただきありがとうございます。早速ですが、この木箱を中に入れさせてもらいたいのですが」


「ああ、構いませんよ。……おおい、誰か」


 流介たちが玄関先で待っていると、使用人らしき男女がわらわらと玄関先に姿を現した。


「この木箱を居間まで運んでくれ。お客様の物だから、丁寧にな」


 天馬は使用人たちがえっさほいさと木箱を中に運び入れたのを確かめると、流介に「では僕らもお邪魔しましょうか」と呑気な口調で言った。


 通された谷地家の居間は、広くはないが上品な洋間だった。流介がいつ上着を脱ごうかとそわそわしていると、天馬が「では飛田さん、僕はこれから着替えてまいります。木箱の前で話をするので椅子の向きを木箱の方に向けておいてください」と言った。

 

 ――着替えるって、一体何を始めるつもりなんだ、天馬君は。


 天馬が姿を消した居間で木箱と椅子を動かしていると、当主である谷地が「おや、水守君は?」と首を傾げつつ流介に尋ねた。


「なんだか着替えをしてくるとか……あっ、戻ってきました」


 再び居間に現れた天馬は何と、暗い色の燕尾服にベスト、白い蝶ネクタイという夜会にでも繰り出しそうな正装に身を包んでいた。


「天馬君、何だねその大仰な格好は。交霊術の真似事でもしようというのかい」


「交霊術ではありません。強いて言えば除霊に近いでしょう」


「除霊?」


 天馬は首を傾げる流介を尻目に木箱の脇に立つと「それでは今よりこの世の不思議、踊る人影箱を披露したいと思います」と言った。

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