第16話 りんご

昼前に城へ戻ると、なぜかエルランド王子自ら待ち構えていた。


「騒ぎを起こしたでしょう?」


珍しく不機嫌だ。

サイラスは気にも留めていないようだった。


「今国にいる、士官以上の、腕のとこに緑のライン入れた服のやつら集めろよ。すぐに」

「どうして?」


エルランド王子が尋ねると、サイラスはこちらをチラリと見てから言った。


「頼むよ、エルランド王子」

「わかった」


エルランド王子は渋々承諾したようだった。

その後も2人で何やらコソコソ話していたが、わたしをずっとその場に立たせていることに気がついた。


「リンゴは後で運ばせるよ、セシリア」


サイラスはそう言って、エルランド王子と王宮に向かって行ってしまった。


「ありがとうございます」


わたしは、すでに背を向けた2人にお辞儀をした。





サイラスの言った通り、午後になると大量のリンゴが届けられた。

さて、大量のリンゴを前にして、どうしたものかと考える。

キッチンを見渡すと、ちょうどよさそうなものが多く揃えてあった。


幸い自分だけの時間はたっぷりある。


まずは瓶の煮沸消毒だ。



さすがに型までは用意されていなかったので、スティック状に形どったアップルパイと、リンゴのジャムをたくさん作った。


明日、サイラスへお礼にあげよう。

そんなことを考えながら、夜遅くになってベッドに入った。

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