第184話 学園祭 その2⑩
——— 後夜祭だ。
新山学園の後夜祭は、中等部と一緒に行われる。
だから、別名「大後夜祭」とも呼ばれている。
既に外は暗くなり、校庭にはグランド全体を照らす、照明に灯が入っている。
中等部の子達も高等部の校庭に集合している。
校庭のど真ん中に、文化祭で使われたものが、山積みになっている。
作った物とか飾った物は、結局最後はゴミでしか無くなる。なので校庭の真ん中で燃やすのだ。まだ火は入っていないので悪しからず。
皆、次から次へと、その山に学園祭で使った物を投げ込んで行く。
私と宗介は、会場となる場所から少し離れたところに立っていた。
メッセージで、芹葉達と藍にこの場所にいる事は伝えている。
「あ、翠達いた」
芹葉が来た。
来羅、それと柳生君も一緒だ。
「来羅お疲れさま。実行委員の仕事も終わったね」
「有り難う。集計まだ残ってるけど実行委員も中々楽しい仕事だったよ」
「多分、来羅に向いてるんだろうね」
「あ、後夜祭始まるみたいだよ」
朝礼台の上にマイクを持った実行委員らしき人が立った。
「それでは今から後夜祭を始めまーす」
司会の声が、校庭に響いた。
中央のゴミの山に火が点けられた。
それと同時に、横から藍の声が聞こえた。
「あ、お姉ちゃん達居たよ」
「翠ちゃーん」
奈々菜ちゃんが私に抱きついてきた。
私も、奈々菜ちゃんを抱き返した。
「翠だけずるい」
そう言って、芹葉も来羅も奈々菜ちゃんに抱きついた。勿論、藍にも。流石に私は藍には抱きつかない。
その光景を見ていた周りの子は、私達に驚いているようだった。
「なんだ、あの空間」
「皆可愛い」
「シスターズって深川さん達と友達な関係だったんだ」
抱き合ったあと、皆で文化祭を振り返って、色々話しをしていた。
「学園祭終わるね」
「そうだな」
「去年の学園祭とは大違いだったよ」
そうである。
今年は既に宗介の素顔はバレていたけど、まさか私まで晒す事になるとは……ついでにシスターズの存在も明かした。隠し事はもう妹達の彼氏の存在くらいだ。
去年は、注目を浴びるからと言って、両親も、顔は出しても私に声を掛ける事が出来なかったんだよね……。
——— ”ドーン…ドドーン…”
花火だ。
そう言えば、去年も上がってたっけ。
この学校の後夜祭は、小さくて数も少ないが花火が上がる。
去年は宗介と二人で眺めた花火だけど今年は皆で眺めている。彼氏ーズもさり気無く傍にいた。
宗介を見ると、宗介は前髪を上げていた。その顔は花火の柔らかいランダムなフラッシュに照らされて、凄く幻想的に映った。正直花火より綺麗だ。
宗介は、私の視線に気が付き、私を見下ろす。
目と目が合う。すると宗介は私に顔を寄せ、耳元で「どうした?」と、いつもの低いトーンで囁いてきた。
だから、それはやっちゃ駄目って言ったのに。
私は立てなくなり、彼の腕にしがみついた。
あとで、どうやって仕返ししてやろう……。
※ ※ ※
桜木翠です。
学園祭が終わって、数日が経ったが、これまでに色々変わった事がある。
まずは、私の登下校だ。
私は結局ウィッグを外さずに登下校していた。
最初の頃は皆の笑顔を向けられるのが嬉しかったけど、鼻の奥が痒い時とか指を鼻に突っ込めなかったり、パンツのゴムの位置をさり気無く直したりなんて事も出来なくて、ほんの一瞬の『恥ずかしいけどさり気無くやれば誰にも気付かれない行為』すら出来ず、居心地がちょっと窮屈なのだ。
ウィッグを被って顔を隠すと見惚れられる事もないので、登下校は帽子を被る感覚でウィッグを被っていた。
「だったら帽子被れ」って声が聞こえて来そうだけど、学校に帽子被って来る子って……いる? 男子は稀にいるけど、女子で見掛けたことは無い。逆に目印になっちゃうからウィッグにしていた。教頭も寂しがるしね。
学校に着けば、普通に外してる。
学校内では素顔を晒している訳だけど、一番戸惑ったのは、もしかすると先生かも知れない。
学園祭の後の最初の登校で、担任を初めとする、各教科の先生が教壇に立つ度、私を見て、一瞬金縛りに遭っていた。
ミスコンで全校生徒の前で顔を晒したのは正解だった。じゃなきゃ面倒な騒ぎが暫く続いていたような気がする。
二つ目に、部活だ。
以前は、ウィッグもあったので、激しく運動出来なかったが、今ではマネージャー業は引退して女子部で普通にプレーヤーとして練習していた。
ついでにウィンターカップのレギュラーにも選ばれた。
三つ目は、三崎一派だ。
学園祭が終わって暫く学校に来なかったが、翌週には五人とも学校に来るようになった。
流石に、生徒全員があのコンテストを見ていたから、先生を始め誰も咎めるような事も、慰めるような事も言わず、コンテストの話しにも一切触れる事はしなかった。
ただ、舞倉さんを含む、彼女たちの様相は一変して「普通」になった。
ボタンを掛けるところは全て掛け、リボンもしっかり締めている。
茶色が強かった髪の色も黒くなり、髪型も後ろで一つにまとめる程度にしかしていない。
ケバケバしかった化粧も今ではナチュラルメイクで、メガネになった子も居る。
そんな彼女達だが、普通になった途端、男子からの評判が爆上がりして、以前よりモテモテになったのだから皮肉なものである。
そもそも、三崎一派は、三崎さんがカーストトップに君臨するため、可愛い子達を集めた集団だったのだ。なので、元々可愛い子達なのだ。
しかも、芹葉や来羅のように高嶺の花まで行かない子達だ。
男子も最初は遠巻きに見ていたが、日を追うごとに彼女たちに絡もうとする輩が出始め、十二月に入る頃には全員に彼氏が出来たようだった。
そして私と宗介の素顔もすっかり馴染み、学校では私に見惚れる人は殆ど居なくなった。
——— そして話はウィンターカップへ。
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