第186話 ウィンターカップ②
——— 試合終了後。
ロビーで軽いミーティングをしている。というより雑談だな。
「みんなお疲れ。全国初勝利だ。しかもトリプルスコアなんて上出来過ぎるが……先ずは余韻に浸って浮かれるか。試合のいいイメージの部分を思い出せ。それが次のプレーにも生きるからな」
全国大会で初勝利だ。部長も今回の勝ち方が嬉しかったんだろう。「余韻に浸れ」なんて、普通言わない。少なくとも俺は聞いたことがない。
しかし、今日の勝ち方は、予選では無い勝ち方だった。
それに、相手チームから面白い事を聞いた。
——— 「二つのチームを同時に相手してるみたいだ」と。
なんか、うちのチームの在り方を示す表現だ。
そんな事を考えていると、部長が現実に引き戻した。
「余韻に浸ったか? それじゃあ現実に戻すぞ。明日の試合は第一シード、昨年と夏の優勝校、
「そうだったー!」
「一気に現実に戻されたぞ!」
チームメイトが皆、落胆し始めた。
そうなのである。二回戦目は、今大会優勝候補筆頭の、前大会王者が対戦相手だ。
「予選のビデオを見たとおり、堅実なバスケをするチームだ。なんだかんだ言っても、うちはうちのバスケしか出来ない。今日と同じく、積極的に行こう」
「「「「うっす!」」」」
※ ※ ※
「流星」
ミーティングが終わり、ロービーでバスが来るのを待っていると、後ろから癖のある声がした。
俺と流星が振り向くと、そこにはブッチがいた。勿論、真名さんもだ。
「えらい大差で勝ったね」
「出来すぎだな」
「そっちもダブルスコアだったろ」
「まあね」
「開始時間同じだったから見れなかったな」
コートはメイン会場で四面。サブで四面の計八面で行われる。
男子は準々決勝からメインコート一面で一試合ずつ試合が行われる。女子は準決勝からメインコートで一試合ずつ行う。
さっきの試合では、俺達はDコート、ブッチは同じ会場内の、Aコートで試合をした。
ちょっと離れて居たので、横目に試合を見ることもできない状況だった。
寧ろ離れていて、正解だったかも知れない。
隣だったら、気になって試合に集中出来なかったろう。
ブッチがニヤニヤしながら、
「明日は去年の優勝校か。くじ運いいな」
「ああ、さっきから武者震いが止まらんよ」
「お前らしいな」
「流星もか。俺もさっきの試合の感覚が残っているうちに、直ぐにでも試合やりたい気分なんだよ」
「ハハッ、頼もしいな」
ブッチは俺達の様子を見て、ただならぬ雰囲気を感じたようだ。
そして、お互い明日の健闘を祈って、互いの居場所へ戻った。
※ ※ ※
今日は早い時間に試合が終わった。
借りている体育館へ移動して、疲れが残らない程度にフォーメーションを一通り確認をした。
——— 練習も終わりの時間になり、全員、休憩がてら集合している…いや、ほぼ、ミーティングだ。
そして、俺と流星と部長は、今日の試合を振り返り考えていた。
始めにディフェンスについて、部長が作戦を伝えた。
「明日の作戦だが、まず、ディフェンスだ。相手に一人、2m超えの選手がいる。こいつを押さえなきゃ、相手攻撃のリズムは押さえることが出来ない。作戦的には、予選の『一水学園』の時と同じで行きたい。宗介、一水の時みたく頼めるか?」
「できる限りの事はやってみますが……期待はしないで下さい」
次に、オフェンスについて話し始めたが、俺と流星が考えていた事と同じ事を、部長も考えていたようだ。
「そして、オフェンスがだが、今日の赤木商業戦で、彼ら面白い事言ってたよな」
「『2チーム相手にしてるようだ』ってやつですか?」
「そう、それ。あれを聞いた時、今の新川のバスケのスタイルを一言で現した言い方だなって思ったんだよ」
「俺もそれを聞いて考えていたんですが……」
俺は、思い描いた攻めのイメージを、二人に伝えた。
「中々面白いな。残り時間も少ない。少しやってみるか?」
俺達は、簡単に実践形式でそのフォーメーションの確認をしてみた。
※ ※ ※
翌日。富久丘南戦。
女子は早い時間に試合が終わり、ダブルスコアで勝利していた。そして男子の試合を観戦中だ。
試合は既に第3クォーターに入っていた。
——— 点数は「99対68」で王者富久丘南が大差で押されている。完全に新山ペースで試合は運ばれていた。
圧倒的強さに観客の全てが新山の試合に見入っていた。
「さっきから、このフォーメーションはなんなんだ!」
「7番にドライブ許すな!」
「7番を押さえたら4番来るぞ!」
「4番押さえたら7番もチェックかけろ!」
「くそっ! これじゃあ、まるで2チーム相手にしているようなもんだぞ! 反則だろ!」
新山が見せるフォーメーション富久丘南は混乱している。
普通、バスケのオフェンスフォーメーションの基本は…。
1.全員がスリーポイントラインの位置を目安に均等に並んでボールを回しながら中に切れ込むタイミングを見る。
2.
司令塔となる者が後方で様子を伺い、前に居る者にパスを出す。というのが攻撃の起点になる。
どの攻撃パターンでもベースとなる形である。
しかし、新川のフォーメーションは、この常識を全く覆し、ボールを持つ宗介を先頭に、みんな宗介の後ろに一列に並んで布陣しているのだ。
相手がゾーンディフェンスの場合、宗介はボールをつきながら、ゆっくり、相手ディフェンスへ近づき、相手と対峙した瞬間! 突然ドライブし、中へ切れ込む。
侵入を阻まれれば即座に柳生君へパスを出し、今度は、柳生君が味方3人をコントロールし、中へ切れ込む。
それを阻まれれば宗介にパスが戻り、再びゾーンの中をかき回す。
富久丘南がマンツーマンであれば、宗介は、一気に中へ切り込みゴールを狙う。
当然、阻まれればゾーン同様、柳生君へパスを出し、味方3人を使って切り崩しに掛かる。
宗介の運動能力あっての新川フォォーメーションだ。
——— そして、宗介と柳生君のマークが厳しくなると……
「おい! 7番と4番のチェックが厳しくなったら、今度は
そうである。部長は、元PGだ。
そうなると、富久丘南は、マークする相手が絞れなくなる。
3人の攻撃起点がいるば、流石の王者も翻弄されている。
攻撃パターンのバリエーションが多彩なのだ。
そして新山のディフェンスだが……予選での「一水学園」戦の再放送か? と思える、宗介の長身選手の封じ込めが決っている。
「さっきから、7番がリバウンド取ってるけど、何が起きているんだ⁈」
「7番のマークマンって2m超えてるよな? なんでリバウンド取れるんだ?」
「富久丘の
コートから、
「クソがぁー! なんで取れないんだよー!」
※ ※ ※
——— 試合は、そのままのペースで進み、新山 対 富久丘南戦は「132対76」で幕を閉じた。
この試合により、新山学園は、全ての学校からマークされる存在となった。
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