第187話 ウィンターカップ③
——— 大会4日目。第3回戦。ベスト16だ。
大会の試合シケジュールは女子の試合が最初に行われ、後から男子が行われる。なので男女お互いに応戦することが出来る。
午前中、女子の試合が行われ、またダブルスコアで勝利した。
「見たか? 新山の7番。ゴーグル外したらメッチャ可愛かったぞ。あれ、反則級だろ」
「6番もメッチャ綺麗だよな!」
「俺、新山に編入試験受けてくるわ!」
今日までの話で、翠は男子バスケが『大会の台風の目』なんて言っていたが、ハッキリ言って男女揃って『新山学園が台風の目』になっている。男女揃って全校が俺達に注目していた。
※ ※ ※
——— そして試合は男子の試合だ。
新山は『Cコート』、野々白工業は『Dコート』
隣同士で試合だ。
我が新山学園は、現在『石ノ瀬高校』と対戦中だ。
昨日、優勝候補を破った新山学園を見ようと、観客席は勿論、コート周辺にも他校の選手が皆、この試合に注目していた。
私は、今日は観客席から見てる。
観客席では、観戦中のギャラリーが新山の事を絶賛していた。
「なんなんだ、あの7番は」
「イケメンにも程があるだろ!」
「7番だけじゃ無い。4番も……4番もイケメンだ!」
「そうじゃない! 7番の動きだ! あんなドリブル見たこと無いぞ!」
「4番のパスも……いや、パスの前の自ら切り込んでいく時のスピードが7番と同じくらい速い」
「しかし、なんなんだ、このフォーメーションは!」
「7番を先頭に、皆、後ろに布陣するってまさに特攻だな」
「あの7番の動きあってのフォーメーションだ。どのチームも真似出来ないよ」
「たまに8番が
「新山ペースにリズムが作れず、石ノ瀬は翻弄されているぞ」
「しかし、
「だいたい、パス貰った時点でノーマークだ。あれは4番のお陰だよ」
実は柳生君はドリブルはかなり美味い。
レギュラー当初、
本来、PGはパスを出す前に、自分で中に切り込んで行って、相手を翻弄させてからパスを出す事もする。
今まで、その切り込む役割を、宗介がやっていたので、柳生君のドリブルは鳴りを潜めていたのだが、今は、宗介はスタンドプレーで、チームから独立して動いている。
なので、柳生君は元々のPGのプレーを発揮しているというわけだ。
「あ! 新山速攻だ!」
——— ”ガシャンッ!”
「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ—————— !」
「7番スゲーぞ!」
「どこから飛んだ?!」
「エアウォークって都市伝説じゃなかったのか?」
「その前に高校生がダンクって……」
「イケメンでダンク……完璧かよ」
「新山は女の子もメチャクチャ可愛い美少女居るし優勝だろ!」
「まじか! 俺、ちょっと新山に転校してくる!」
点数は、第3クォーターが終了し、「123対40」
完全に新山ペースの試合だ。
「昨日の富久丘南戦は、まぐれじゃ無かったな」
「そもそも、王者相手にまぐれで出せる点差じゃ無かったからな」
「こいつら、完全に大会の主人公だぞ」
※ ※ ※
——— 俺は興奮が抑えられないでいた。
昨日、富久丘南戦でやったフォーメーションだが……正直、面白すぎる!
自分で考案しといて何なんだが、考えてみてくれ。
ボールを持った奴が、先陣切って相手の中に飛び込んでいく。
言わば、「1人 対 5人」なわけだ。
俺1人、あの壁に立ち向かってく……血がたぎらずに何がたぎる?
俺は、ゆっくりドリブルをしながら、相手デュフェンスの前に立つ。
右に左に、ゆっくりボールをフロントチェンジさせ、瞬間! スキップステップでクロスオオーバー!
次をターンオーバーで躱したら……おっと、壁が一枚出来ている。
すかさずレッグスルーで躱したら……レイアップ…はやめてダブルクラッチでシュート!
「ヨッシャー!」
おっと、思わず声が出ちまった。
※ ※ ※
宗介が独立した事で、俺が中に切り込んで行く事が多くなった訳だが……久々だ。
この、プレッシャー……いいね。
——— ”ダム、ダム、ダム、ダム……”
宗介が攻めあぐねて俺にボールを寄越した。
では俺も中に切り込んでっと……おっと、流石に宗介みたく、ここから先は行けないか……でも、振り向くと……ほーら、SGのマークが外れかかってる。
いや、多分、普通の奴から見るとしっかりマークに付いてんだよ。でもな、俺が左に一歩身体を流すと……あのマークは右に一歩引っ張られて、SGの左が空くわけだ。この一歩は小さい一歩だが俺からしてみりゃ大きな一歩だ!
——— 俺はすかさずSGの一歩左へパスを出す。
——— ”パサッ”
「おっしゃ!ナイッスリー!」
※ ※ ※
——— 第4クォーター。
集中力がMAXになった宗介と柳生君の目はイッている。目が爛々としているが、あの目で街中を歩けば、間違いなく、危ない人として補導されちゃう。
しかし、上から見ると良く分る。
柳生君の「空間把握能力」の高さが。
一歩なのだ。たった一歩の立ち位置の差を見極めて、相手ディフェンスを掻い潜ったパスを出している。
——— そして、試合は終了し、「141 対 51」で新山がまた勝利した。
※ ※ ※
「お疲れ宗介」
俺達はロビーでバスの到着を待っていた。
「お前らも戻りか?」
ブッチが来た。
「おう、勝ったな」
「うん。そっちこそ、試合、横目に見てたよ。なんか、凄いフォーメーション組んでたな」
「ああ、ちょっと無謀だけどな。そっちも余裕だったな」
「余裕も今日までだよ。明日は新山達が相手だ。俺の手の内は流星は元より真壁君も全く知らない訳じゃない。正直やりにくいな」
「それはこっちもだよ。ブッチのは『後出しジャンケンで負けろ』と言うくらい、対応が難しいからな」
後出しジャンケンで負ける……後出しでジャンケンをするが、後で出した方は、負ける手を出さなくてはならないというルールの遊びなのだが、実はこれ、かなり難しい。
やった事が無い人はやってみてくれ。
※ ※ ※
——— 体育館に来た。
明日の試合について、流星から皆にブッチに関する情報を伝達中だ。
「さっきから、お前の説明が全然頭に入って来ないんだが……」
「聞けば聞くほど要領を得ないな」
「説明している俺だって良く分ってない」
「兎に角、一番マークするべきは5番だ。背番号は5番だけどポジションはシューティングガード。コイツさえ攻略すればあとは容易い……はず」
「しかし話を聞くと、やってる事はPGにしか聞こえないんだが……」
「宗介がテクニシャンなら、あっちはトリッカー……おい、トリッカーって単語あるか?」
「トリッキーな」
「兎に角、アイツは人間の本能に訴えかけるプレーをしてきます。『このボタン押さないでね』と言われたら、押さずにはいられない。そんな感じです」
「なんだか、怖い奴だな」
「多分、明日の試合は……」
※ ※ ※
——— 翌日、大会4日目。ベスト8だ。
今日も女子はダブルスコアで勝利して男子の試合を観戦中だ。
今日の対戦相手は、ブッチが所属する「野々白工業」だ。
試合は既に第2クォーター中盤。得点は「72 対 73」と拮抗しているが、まだ第2クォーターだ。
普通の試合が終わった時の点数がこの時点で互いに得点している。あり得ないペースで互いに得点を重ねていた。
「スゲーぞ! 互いにディフェンスが全く機能していねー!」
「殴り合いだ! ノーガードの殴り合いの試合だ!」
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