第182話 学園祭 その2⑧

 今日は、文化祭初日が終わって下校の時間となった。


「えっへへー♪ やっとお兄ちゃんと帰れるよ」

「っていうか、お姉ちゃん達と学園でお話しそのものが初だね」

「そうだな。そう思うと新鮮だな」


 校門前で、妹達と俺と翠の四人が話す。ちょっと離れたところに翔馬君と廉斗君が立っていた。

 流星と深川さん、そして、江藤さんも合流する。


「早速一緒に帰るのか? てか、桜木はズr「ウィッグ!」ウィッグ被んのな?」

「うん、学校以外はコレで行こうかなって」

「まぁ、無駄に視線集めるしな。今も集まってっけど」


 周りを見ると異常な程視線が集まっている。


「これ、お姉ちゃん効果よりも私達、シスターズ効果の方が大きいような気がする」

「確かに。皆『ホントに妹なんだ』なんて言ってるよ」

「早く、翔馬と廉斗君もこっちに入れればな……」

「蘭華ちゃんは?」


 藍ちゃんが滝沢さんを探してる。

 すると滝沢さんが一人校門に歩いてくる姿が見えた。


「おー、早速皆で下校?」

「うん。やっと学園でお兄ちゃんとお話しできた♪」

「だったら……廉斗! こっちおいで」

「え? そんな事したら……」

「大丈夫。皆私の弟って知ってるし、逆も然り。廉斗がここに居ても何の違和感も無いよ。そして弟を呼ぶって事は……」

「翔馬♡」

「そういう事。おっと奈々菜ちゃん、押さえてよ」

「あぶない……抱きつくとこだった」

「なんか皆さんとこうして公に立ってるとちょっと不思議な感じだよ」

「うー……抱きつきたい……」

「なんか同じクラスの奴、こっち見てんな」

「姉さんとこうして歩くって初めてだよ。ちょっと恥ずかしいかも」


 と、今迄の抑圧から解放されて皆で肩を並べて帰った。こんな楽しい下校は初めてだった。



 ※  ※  ※



 ——— 今私は宗介の部屋でまったりしていた。


「今日はお疲れ様」

「えへへ、疲れた〜」


 私は宗介を背もたれにして、もたれ掛っている。宗介座椅子だ。

 宗介は私を後ろから抱っこしている。なんとも心地いい。


「しかし、コンテスト、全票翠に入るとは思ってなかったよ」

「私も思わなかった。もう、これでウィッグともおさらばだよ」

「あの後、準備室に戻って、皆から何言われた?」

「うーん……何で変装してたの? くらいかな。私からは病気の説明と、あと、皆には謝った」

「俺の時もそんなもんだったな」

「そう言えば、明日、お父さんとお母さん、文化祭来るって言ってたよ」

「うちのも言ってたから、多分一緒に来るんじゃないか?」

「なんかやだなー。学校での姿ってあんまり見せたくないよね」

「そうだよな」



 ※  ※  ※



 ——— 翌日。


 私は宗介といつものように登校した。

 勿論、お互い素顔は隠している。

 ただ、気付いた学園の生徒は皆、私達に視線を送る。

 学校の最寄りの駅からは、芹葉達と合流して、いつものように、男女に分かれて歩いた。


「やっぱウィッグは外さないんだ?」

「うん、あんまり見られるのも落ち着かないなってね」

「でも見られるね」

「昨日の今日だもん。やっぱ注目浴びちゃうよ」


 中等部の子が二人立ち止まって私を見ていた。

 私はその子達に向かって小さく手を振ってみた。

 すると、「きゃー♡」って喜んでくれた。


「翠、なんかアイドルみたいだよ」

「芹葉も手、振ってみたら?」

「私はいいよ。キャラじゃないし」

「そお? 結構、様になると思うんだけど」

「これ許されるの翠だけ」


 そんな事を言いながら、三人で準備室へ入った。


「おっはよー!」


 私が挨拶すると、みんな挨拶してくれた。


「桜木さん、おはよう。朝から元気だね」

「うん。隠し事無くなったし気分爽やかだよ」

「でもウィッグは付けてんだ」

「帽子みたいなもんかな? 無駄に視線貰うのも疲れると思うから」


 そう言いながら私は帽子を脱ぐようにウィッグを外した。

 すると男子も女子も皆魅入った。ただ、昨日とはちょっと反応が違った。


「やっぱ可愛い……っていうか言葉が無いね」

「うん。桜木さんって、こんなに明るい子だと思わなかったよ」

「えへへ、まだちょっと遠慮してるけどね」

「そうなの?」

「そう言えば、三崎さん達来てる?」

「今日も朝から見てないんだよ……」


 舞倉さんが答えてくれた。

 私の言葉をきっかけに、他の生徒も色々と話し始めた。


「昨日のコンテスト……あれじゃ今日来れねぇって」

「あれは酷かったな。なんか『売れないお笑い芸人が必死にどんなギャグやっても一切ウケない』って感じの時間が最後まで続いたもんな」

「最後の子なんて泣きながらステージに上がってたもん。見てらんなかったよ」

「しかも、誰も同情でも票を入れなかったって言うのもな……」

「あれは難しいって、同情票もそれはそれで惨めになるし」

「だよな……慰めの言葉も惨めになるだけだし」


 なんか、御免なさいって気分だ。

 来羅は私の表情を読み取ったのか、私の気持ちを汲み取ってくれた。


「翠が気にする事じゃないよ。寧ろ、けしかけた私と芹葉が悪いんだよ」

「そうだね。翠も私達の被害者」

「そうなのかな……」

「今は、学園祭を無事終わらせる事に集中しましょう」


 来羅がそう言うと、皆、着替えとかの準備に入った。

 着替えが終わった頃、私の衣装を見た一人が、


「桜木さん……ちょっとそれ、異次元過ぎるよ……」

「そうかな?」

「同じ衣装着てるのに、昨日とは全く別の衣装に見えるじゃん。着る人が着ればこうも違ってくるの?」

「桜木さんと同じ衣装着るの、躊躇っちゃう」

「逆だよ、桜木さんのお陰で、あんたの着こなしが一段上がって見えるよ」

「ホント?」

「ホント。昨日と違ってなんか可愛く見える」

「確かに」


 女子の給仕係は元々お洒落ギャル子の一人だ。十分可愛い。

 さて、着替えも終わって、皆でお店教室に移動だ。

 今は素顔だ。廊下を歩いていると、やっぱりすれ違う人が私を見て、色んな反応をしている。

 そして、教室に着くと、なんと、既に教室の前に行列が出来ていた。校内の生徒達だ。


「ふっふっふ。計算どーり!」


 来羅は不適な表情をしながら大きな声で言った。


「皆、今日は仕入れの関係で、多分、午前中で終わるから頑張ってね」

「どういうこと?」

「予算で仕入れの数決るでしょ? 今の数だと、午前中で終わるかな? って感じだから、よろしく!」


「「「「イエス!マム!!」」」」


 男子が声を張り上げた。

 さあ、開店だ!

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