第131話 がんばれ!流星君!⑧
——— 深川さんの家で勉強会をして二日目の夕方になった。
「んじゃ、そろそろ終わるか」
「結構やったね」
「真壁君の教え方凄いよ。勉強法もだけど」
「うん、凄い参考になった。ありゃ満点取れるわ。私も取れそうな気がして来たもん」
「いや、実際取れると思うぞ。結局、記憶力と発想力でしかないからな。『何か生み出せ』とかなれば、才能とセンスが必要だけどな」
俺達が話す隣で流星はちょっと不安そうな顔をしている。
「それじゃあ、コレ、お前用の問題集」
「おう、サンキュー」
「でだ、分からないところ、不安なところがあったら出来れば一日一回、一つ以上の教科を必ず先生に聞きに行け。知っててもいいから必ず先生のところに顔を出して聞け」
「何でだ?」
「理由は二つある。一つ目は『僕勉強してます』アピールだ」
「アピール?」
「今回、お前、絶対成績が上がる。いきなり上がったらカンニング疑われるぞ?」
「なる程。それの防止か」
「そう。二つ目は……ま、毎日顔出せば、その副次効果というか副産物というか……これは先生の人柄にもよるが、いい事があるかも知れない」
「分かった。兎に角毎日先生に聞きに行けばいいんだな?」
「そうだ」
——— 俺達は昨日と同様にリムジンで始めに江藤さんを家の近くまで送って、次き俺達を駅まで送って行ってくれた。
翌日から、流星の奮闘が始まった。
※ ※ ※
その日の晩から早速俺は宗介が作った問題集に取り掛かった。
「まず、宗介の問題集をやって、分からないところを調べる。だったな」
解けば解く程、そして分かれば分かる程、勉強が面白くなる。そんな問題ばかりだ。
一通り終わり、付箋紙記憶法をやる。小さい文字は丁寧に書かないと読めない。
記憶した箇所は汚くても読める。読めるというより、汚くてもちょっとの単語で内容を思い出すって感じだな。
「お? 此処は調べてもわかんねぇな……『先生に聞け』だったな」
調べても分からないところは翌日、先生に聞く事にして、勉強を勧めた。
——— 翌朝。
「宗介、問題全部終わったぞ?」
「んじゃ次コレな」
「サンキュ」
「分かんないとこあったか?」
「あぁ、コレとコレな」
「いいねぇ。昼休みか放課後、早速先生のところに聞きに行けよ」
「分かった。
——— 放課後。
俺は先生のところへ出向いた。
「何だ柳生? お前が勉強の事で聞きに来るなんて珍しいな」
「いやー、ちょっと思うところ有りまして……」
「お前の周り……深川と付き合ってんだっけか?」
「まぁ……はい」
「それがキッカケならいい交際だ。確か深川って江藤とも仲良いよな? お前とも連んでたりすんのか?」
「まぁ、最近はよく遊びますね」
「それじゃあ気後れもするな」
「そんなところです」
二人共学園じゃ有名人だ。流石の先生も知ってたか……それに必要無いが先生の公認であれば、壁になる懸念も薄くなる。
「で? 何処が分かんないって?」
「此処なんですけど……」
俺は毎日、宗介から問題集を受け取り、そして、教科を変えながらも先生のところに通った。
すると殆どの先生に変化が起き始めた。
テストの範囲が開示され、皆が広い範囲を勉強している中、ある日の放課後。
「——— で、コレの文法は ——— って訳だ。ついでに教えるが、此処、必ずテストに出るから、あとこれな。十分に理解しとけ」
——— コレか! 宗介が言ってた副次効果。
俺は個別にテスト範囲をゲットした。
殆どの先生が「此処、必ず出るからな」と言って来た。
その事を宗介に教えたら、
「頑張る奴って応援したくなるだろ? 無意識に飴与えたくなるんだよ」
だそうだ。俺は勢いをそのままに兎に角宗介から教えて貰った勉強方法を実践していた。
そして土日を重ねること初回を含め計三回。
勉強に関して、俺にとっては初めて濃厚な時間を過ごした気がする。
※ ※ ※
——— テストが終了して、俺と芹葉、そして江藤の三人で掲示板を眺めていた。
「ふぅ……一番上に名前が書かれるって気持ちいいね」
「それ言われちゃうと、私、来羅の上に名前書かれる事ないって事じゃん! ま、結果は同じだからいいんだけどね」
俺は二人をほっといて、下から順に名前を確認していった。因みに順位を見に掲示板来たのは初めてだ。そもそも俺はここに名前が載るような順位じゃ無かったからな。
取り敢えずここでは最下位の100位から見ていく。
前回300番代だった俺だが、100位以内に入る訳は無いと思っていながら今、30位まで確認した。
——— 無い。
今回は自身があった。100位以内には入ってるんじゃないかとかなり期待した……20位……10位……すると、隣に芹葉が立っていた。
「やっと来た」
「……無かった……」
芹葉は落胆する俺を見てニコニコしている。
芹葉ってこんなに酷い奴だったか? お願い事聞かなくて済んだってホッとしてんのか?
俺は初めて芹葉に対し怒りを覚えつつ彼女に目を向けると、彼女は笑顔で俺を見ながら掲示板の上の方を指差す。
俺はその指先の先に目を向けると、その先には『8位 柳生流星 845点』と書かれていた。
「…………マジか……」
俺は嬉しさの余り。両手で口と鼻を覆い思わず号泣した。
※ ※ ※
「深川さん凄いよ! 満点でしょ? 江藤さんも凄いよね」
「うん。一番驚いたのは流星君だよ。八位まで上がったんだもん」
「うわぁ……イケメンでスポーツマンで頭いいって……彼女になって隣に立つのも辛くなりそう。深川さんとか江藤さんじゃ無いと釣り合わないわ」
「うふふ、ありがと」
翠は四位だった。真壁君は一位だ。
後で聞いた話では、翠は態と一問無回答で出したらしい。理由は前回満点で目立ったからだそうだ。
真壁君は流星君の問題作りで勉強なんてしてる暇が無かったはずだ。いつ勉強してたんだろ? と思っていたら、
「問題作るって事は、中身を理解してなきゃな。問題作りそのものが勉強だったって訳だ」
流石、『聡明義塾学舎』に入れる頭脳は違うね。
※ ※ ※
「えーっと、まず、中間テストだけど、このクラスから満点が二人出ました。江藤さん、真壁君、おめでとう」
パラパラと拍手が起きる。
すると一人の生徒が挙手をした。
「先生! 柳生の奴、いきなり成績上がったっぽいんですけど、不正でもしたんですか?」
その生徒は笑いながら先生に尋ねた。
「うん、思いっきり不正してたね」
先生も笑ってる。皆笑ってる。
皆、完全にネタは分かっていた。
「まぁ、テスト範囲教える前から職員室出入りして根掘り葉掘りテストの情報聞き出してたもんね」
「道理で、毎日暇あれば机に向かって何か書き込んでた訳だよ」
「つーか、真壁、お前か? お前の仕込みか?」
新学年の初っ端、俺と流星は目立ってたせいで、俺を弄る奴がソコソコ出来た。ただ、友達では無い。
「…………だな」
「マジかよ……」
「真壁満点だろ? 柳生まで引き上げるって……何やればそんな点数取れんだよ」
「…………勉強?」
「だー! そのやり方聞いてんだよぉ!」
「…………内緒」
教えてもいいんだが、悪目立ちするのは間違い無いし面倒なんでやめといた。
——— そして、夏休みを迎える前にケ・ベッロにパネルが飾られ、翠に劇的な変化が訪れたのだが……変わり過ぎだろ!
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