第130話 がんばれ!流星君!⑦

 場所は違えど、朝、目を覚ませば、日課のジョギングで一日が始まる。

 今日は深川さんの家からの出発である。

 メンバーは俺、翠、流星、そして吉田さんと、いつもと違うメンバーとコースに日課が日課じゃ無い気分になっていた。


「吉田さん宜しくお願いします」

「それじゃあ行きましょう」


 流星に聞けば、ここに泊まった朝は吉田さんと二人で走っているらしい。

 深川さんは走らないそうだ。

 ついでに江藤さんは筋肉質な感じではあるが『魅せる body 』なので筋力も持久力も無いとの事だ。



 ※  ※  ※



 走り終わってシャワーを浴び、リビングに戻ると、キッチンで江藤さんが朝食を作っていた。

 翠はまだ来ていない。

 流星は深川さんを起こしに行った。これも休日、ここに泊まりに来た時のルーティーンらしい。


「お? 朝ごはんは江藤さんが作ってるのか」

「まぁね。私だってそれなりには作れるよ。パンだけど大丈夫? 和食が良かった?」

「正直、腹が膨れればなんでもいいな。美味いって条件は外せないけどな」

「ハードル上げるなー。翠ちゃんのは美味いんだ?」

「勿論。卒なく美味いから逆に詰まんなかったりするけどな」

「何その惚気方」

「何が詰まんないの?」


 翠がリビングに顔を出した。翠の質問に江藤さんが答えるが……、


「翠の料理。失敗がないから詰まん無いって」

「ん? 『翠』?」


 江藤さんは翠を『翠』と呼んだ。『ちゃん』はどこに行った?


「あー、昨夜、皆でおっぱい揉み合ったら、『止めろ翠』『来羅らめぇ』『芹葉のスケベ』てな感じで皆の敬称消えたんだわ」

「なんか羨ましい事やってたんだな。何で呼んでくれなかった?」

「呼べる訳ないじゃん! 真壁君、私のおっぱい揉みたいの? いいけど、翠の前じゃダメだよ」


 江藤さんは両手でおっぱい持ち上げて突き出し左右に体を振る。ご馳走様です。


「来羅何誘惑してんの!」

「冗談だって。真壁君みたいにガリガリな人に抱かれたいなんて思わないから安心して」

「宗介そんなにガリガリじゃ無いよ。ホラ」


 翠は俺のシャツを捲って俺のお腹を出した。

 深川さんは咄嗟に目を背ける。

 江藤さんは、ジッ見る事なく、一目見て落胆の溜め息を吐いた。


「ガリじゃん! ガリ! ガリガリのガリ! 全然足んない。素質は感じるけど、軽い。キレてない。全然だよ全然」


 江藤さんは『分かって無いなぁ』ってリアクションをする。


「筋肉が出来上がると、筋肉が向こうから私に語りかけてくるの。分かる? 分かんないよねー? 筋肉の囁きっていうのかなぁ……真壁君のは呼吸すらしてないね」


 江藤さんは自分の世界に入りそうになってるみたいだ。


「で、朝ごはんのメニューは何だい?」

「チーズとハムのホットサンドと、目玉焼きとベーコン。ただ、目玉焼きとベーコンを、ホットサンドに挟むのもアリ。リクエストで今からやるから、時間は十分くらい掛かるかな? どうする?」


 俺は、全部入れでお願いした。勿論、翠もだ。

 すると流星はダイニングに顔を出した。


「おー、江藤が作った朝食か……で、何作ってんだ?」

「ハムチーズのホットサンドとベーコン付きの目玉焼き。あとはインスタントのスープ」

「ほうほう……で、宗介たちは目玉焼きもパンに挟んだ訳だ」

「あぁ、ホットサンドって、何挟んでも美味いからな」

「だったら、俺のハムチーズと半分シェアしねえか? 目玉焼きも半分やっからよ」

「お? いいねぇ」

「そこは私と半分こしてくれるんじゃ無いの?」


 翠がホッペを膨らませている。


「お前とは普段からしてるからな。女の子同士でシェアすんのも楽しいんじゃ無いのか?」

「そっか。じゃあ……三等分にって思ったけど、難しいな……」

「私は別にいいよ。自分で作ったのシェアしたって詰まん無いよ」


 すると深川さんがダイニングに入って来たが、滅茶苦茶眠そう……って頭が大爆発していた。

 ついでに彼女だけパジャマ姿だ。日差しが部屋に差し込んで、体に光が当たるとシルエットがパジャマを通して透けて見える。エロい。


「おふぁよ」

「おはよ。芹葉結構お寝坊さんなんだ」

「んにゃ……みんな早すぎ……」

「あんた頭、とんでもないことになってるよ」

「んにゅ……いつも……」

「コイツ朝ホント弱いんだよ」


 朝の深川さんは可愛いかった。



 ※  ※  ※



 ——— 食べ終わって本日の勉強会開始だ。


「んじゃ、三人はこれ。流星はこれ」


 俺は女子三人に昨夜作った俺オリジナル問題集を手渡し、流星には普通サイズに付箋紙を渡した。


「なんだこれ?」

「付箋紙だ」

「いや、見りゃ分かる。これをどうすんだ?」

「この勉強法は皆でやってみて欲しいんだが、教科書一ページに書いてある内容をその付箋紙に要約して書く。そしてそのページに貼る。それだけだ」


 深川さんは今の説明で理解したようだ。


「…………そっか。要約するには内容を理解しないとダメで、書く事で記憶に定着させる。で、文章力も身につく。そんな感じ?」

「そんな感じ。似たようなので、カンニングペーパー作るのも即席だが効果はある」

「カンペ?」

「そう。カンペ。結局あれって、何処に何書いたか覚えてなきゃならないし、小さい文字で集中して書くから意外とカンペ作った時点で記憶出来てんだよ」

「なる程。その効果を付箋紙で代用って訳だ」

「そういう事。但し、短期的な記憶の定着だから繰り返しやって体に染み込ませる必要はある」


 翠が “ポン„ と手を叩いて納得する。


「ローマは一日の休日だ」

「おいおい、なんか混ざってるぞ。で、流星は午前中、ここまでは書いて欲しい。で、午後はその範囲をテストだ」

「分かった」



 ※  ※  ※



 ——— お昼になった。

 何故か流星が皆にランチのリクエストを聞いている。


「なぁ、お前ら何食べたい?」

「えーっとね……イタリアンかな?」

「他になんかあるか?」

「俺もそれでいい……って、何でお前が聞いてんだ?」

「俺が作るからに決まってるだろ」


 そう言うと、ダイニング椅子にかかってる首掛けエプロンを掛けキッチンに立った。立ったのはいいのだが……。


「おいおいおいおい」

「出たな? おいおい星人」

「何でそのエプロンなんだ?」


 流星が身につけたエプロンはピンクでフリフリが肩から裾から沢山付いてる少女趣味……と言うか、幼い女の子が身に付けそうなデザインのエプロンだ。


「別にお前らの前でカッコつけたってしょうがねぇだろ? 服が汚れなきゃ何でもいいんだよ」

「確かにそうだが……」


 江藤さんは写真を撮りまくってる。


「これ皆に見せてもいい?」

「別にいいけど、芹葉の許可取っとけよ?」

「何で?」

「俺は芹葉の所有物だからな」

「……バカ」


 深川さんから『ハニカミバカ』が繰り出された。

 女の子がやるハニカミながらの「バカ」は、見ている分にはなんて事は無いのだが、「バカ」を言われた当人は余りの破壊力に卒倒するか、キュン死する。

 流石の流星も漏れ無く照れてた。


 ——— そして流星はナポリタンを作り皆で食べたのだが……。


「何コレ? 何でこんなに美味いの?」

「流星……お前、いいお嫁さんになれるぞ」

「昨日のフレンチも美味しかったけど……ハァ?」

「何故か流星君、料理上手で美味しいんだよ」

「『何故か』って芹葉もひでぇな……一応、コレでも練習はしたんだぜ?」

「昨夜お前が食事の意味を説いてたが……それか?」

「まぁ、ウチの教育だな」


 ——— そしてテストの結果だが、流星は驚きの結果を出す。

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