第108話 素顔でデート④
——— 昼休み。
今日もいつもの教室でお弁当を広げている。
「土曜日って、素顔で街歩いたんでしょ?」
「うん。この街では初めてだね」
「どうだった?」
「結構平気だったよ」
「違う違う。デートの方。真壁君とどこ行ったの?」
「なんだそっちか。うんとね、前行った『ケ・ベッロ』って服屋さん。イタリアンなファッション多くて結構私好みなの多かったね」
「へぇ、場所教えて」
私はスマートフォンを取り出して地図アプリで場所を教えた。
「こんなところにお店あったんだ……今度行ってみよ」
「イタリアのファッションってシルエット細いから芹葉ちゃんにはピッタリ合いそうだね」
「そっかなぁ……まぁ、確かに細いのは認めるけど……」
芹葉ちゃんは胸元を手で押さえる。
「ん? 流星君どこみてんの!」
「え? 俺は小さい方が好きなんだが……お前は?」
「俺は大きすぎなければって程度にしか思ってないな」
「アンタ達、真面目な顔して何話してんの!」
「男の人っておっきいおっぱい好きなんじゃないの?」
「いや、好みは人それぞれだぞ」
「でもおっきいおっぱい見ると皆『おおー』ってなるじゃん?」
「あれは、女が禿げてるオッサン見て『禿げてる』って思うのと同じだな。おっぱいに対する『おおー』は『おっきい』と同義語。好きか嫌いかはまた別だ」
「なる程……確かに禿げ好きの女の子とか偶にいるもんね」
私は土曜日の件で思い出した事があった。
「宗介、先生のとこ行かなきゃ」
「あぁ、だったな」
「何? 珍しいね」
「ちょっとね」
私と宗介は弁当を片付けて、教頭先生の元へ向かった。
——— コンコンコン。
「失礼します」
私と宗介は職員室の窓際に座る教頭先生の席に直接赴き、机の前に立った。
「お昼休みにすみません。今大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。どうしました桜木さん……それに真壁君も……ウィッグに関する相談ならオールで相談に乗りますよ?」
「いや、それは大丈夫です」
「そうですか……」
本気で落ち込む教頭先生だが、今日はウィッグを着けていない。バーコードだ。教頭先生の頭は珍しくバーコードになっている。横に流せる髪なんて無かったはずだけど……もしかしてエクステ付けてやってんの?
「実はちょっとご相談が有りまして……翠の「場所を変えましょうか」
教頭先生は宗介が私の名を出すや否や、他の先生に聞かれてはならないと、直ぐ応接室へ私達を誘導した。
多分、宗介が話そうとしている内容は考えていない。私の名前が出た時点で、此処では話すことでは無いと判断したんだ。
応接室に案内されると、ソファーに腰掛けるように促される。
教頭は壁際の長椅子のソファーに腰をかける。
「此処なら周りを気にせず話せますね。で、学年首席と次席が揃って顔を出すなんて珍しいですね」
私は元より、宗介の事も……まぁ、入試で満点だった訳だし分かるか。
「まず、桜木さんに確認ですが、真壁君はどこまで知ってるんですか?」
「全部知ってます」
「なんと! 身長体重スリーサイズ、あなたの全てを知ってるんですか!」
「教頭先生、それセクハラです。まぁ、彼とはお付き合いしてるんで、素顔も病気も知ってます」
「そうですか。桜木さんの成績も上がってるんで、大変望ましいお付き合いですね。羨ましい……」
「はい?」
「オホン……で、今日はどのようなご用件で?」
宗介は一度私の顔を見た。私は頷くと、宗介はゆっくり話し始めた。
「はい。実は先日 ——— 」
宗介は、ケ・ベッロでの話をした。
「なる程。確かに何かこう……進展しそうな気配を感じますね」
「という事でアルバイトになると思うんですが……許可頂けますか?」
「確かに、お給金を頂かないとは言え、代替の報酬もあるようですし、就労という扱いになるでしょう。ただ、一日だけですし、治療行為の一つと考えれば問題無いでしょう」
その言葉に私と宗介の表情は明るくなった。
そして教頭先生は言葉を続ける。
「ただ、桜木さんの病気が治るという事はウィッガーが一人減ってしまうという事……手放しでは喜べない事態です」
何その『ウィッガー』って? ウィッグに『er』付けただけのようだ。
「本音はさて置き、何よりあなた達の成績は全く問題無いので、色々特権を与えてもいいとも思えます」
「特権……ですか?」
「はい。特権です。例えば、アルバイトに関して期間限定解除とか」
「あー、そういうのは要らないですね。何かあれば翠が目立ってしまいますし……」
「旧校舎の教室の鍵貰ってるので十分だよ」
「その話っぷりだと活用して頂いてるようですね」
「はい。お昼休みに使わせて貰っています」
「ついでに聞きますが、桜木さんの素顔と病気を知ってる生徒は他に居ますか?」
「はい。柳生流星君と深川芹葉ちゃん二人と……中等部の妹達とソフトテニス男子で優勝した二人です」
「ほぉー、バスケ部の二人ですか……それと中等部の……あぁー、そう言えば、昨年、冬に事件がありましたね。あれでですか」
「まぁ、あれでです」
「なる程……取り敢えず、特権として、今後、月に一日程度のバイトであれば許可を取らなくて結構です。週一回とか、数日間連続とかであれば一応相談して下さい。まぁ、貴方達なら特権を濫用するような事も無いでしょう」
教頭先生は無い前髪を整える。
——— 学校の許可は貰った。
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