第109話 中等部の修学旅行①

 ——— 中等部三年生は修学旅行に来ていた。

 場所は伏せておくけど、四泊五日の南の方の旅である。

 日中の話は翔馬と別行動だから面白い話は一つもない。で、ここで話したいのはちょっと動きがあった二日目の夜の事だ。

 この日は旅館に宿泊したのだが、240人が一同に泊まれるところはそうそう無い。

 なので4クラス120人ずつに分けて別々の旅館で宿泊となった。

 私と藍が同じ宿という事で、六花の話では、ABCDクラスの男子は私達が部屋に遊びに来るんじゃ無いかと期待して興奮しているらしい。

 勿論、私は迷う事なく翔馬の部屋に行くわけで、


[翔馬と同じ宿♪]

[部屋遊び来れるか?]

[六花に頼んでみる]


 愛しのダーリンとメッセージで連絡を取る。

 流石に単独で翔馬の部屋に遊びには行けない。クラスも違うしね。

 なので誰かが私を連れて来たというていが欲しいところである。


 部屋は六人一組だ。

 私と同じ部屋の子達は私と一緒という事で、何となくテンション高めな気がする。

 因みにこの部屋に去年同じクラスだった子は居ない。

 も一つ因みに、部屋割は班編成と同じだ。

 男子三名女子三名で一つの班になり、宿泊は一班の女子三人と二班の女子三人で一部屋の割り当てといった感じで割り当てられている。


「真壁さんと部屋が一緒ってなんか上がるわ」

「分かるぅ。寝れそうな気がしないよね」


 因みに昨日はホテルに三人一部屋で寝た。

 昨日一緒の部屋の子は私のスタイル様式は分かっているからテンションは低めだ。

 低い理由は『思ってた子と違う』って感じかな? 私からすれば勝手に期待し過ぎって話だ。

 

「そう言ってくれると嬉しいけど、私と一緒で嬉しいもんなの?」

「勿論だよ。学園一の美少女の一人と言われる真壁さんと同じ空間に居るって、なんか嬉しいじゃん」

「分かる分かる。それに真壁さんのお洒落アイテムとか直に見れるし……ね」


 因みに私はお洒落と思えるアイテムは……シュシュ位だろうか? あと化粧水と乳液? ブラシなんてスケルトンだし……皆色々出してるな……この旅行にそんなに必要なの?


「え? 真壁さんの持ち物ってそれだけ?」

「うん。旅行だし、これだけあれば十分じゃ無い?」

「そう……だね」


 多分、皆は私のアイテム見て『これ素敵♪』なんて事を言いたかったんだろう。

 それと自分のアイテム自慢と品評会的な事がしたかったのかな?

 まぁ、私はそこに混ざれないけどね。

 何しろ、今、目の前にいる彼女が手にしている物が何なのか私には分からない。それ、何に使う道具なの? 気にはなるが興味はない。 

 私は彼女達のやりとりを終始黙って見ていた。

 すると私のスマートフォンが一音鳴った。

 メッセージが入ったようだ。

 私は画面を開いて内容を確認する。

 六花からだ。


「御免なさい。ちょっと呼ばれちゃった」

「あ、うん。鍵はかけないでおくから」

「ありがと」


 皆あっさり部屋から出してくれた。

 部屋から出ると六花が通路の真ん中に立っていた。


「ありがと。部屋出るタイミング無くてさ」

「そんな事だろうと思ったよ。で、メッセージ送っちゃったけど、周りから『ID教えろ』とか言われなかった? 大丈夫?」

「大丈夫」

「それじゃあ行こうか」


 今から行くところはBクラスの男子の部屋……翔馬がいる部屋だ。

 前触れなく突然二人で男子の部屋にお邪魔すると変に思われそうだけど、そこは六花の日頃の行動が功を奏する。

 彼女は普段から神出鬼没なところがあり、男子女子関係なくグループで話しているところに顔を出しては話に混ざって、気が付くと消えている。そんな行動を普段から取っていた。クラスが変わってもその行動は変わらない。

 なので、彼女がどの部屋に突然お邪魔しても何ら違和感はないのである。


「相棒はどうすんの?」

「あっちはあっちで上手くやるみたいだよ。ロビーで落ち合うとか」

「向こうはアンタと違って落ち着いてるもんね」

「そうなんだよ……普段は逆なんだけど、アレらが絡むと性格逆転しちゃうんだよねぇ」

「流石の私も見間違える時あるもんね」

「ははは……」


 危うく、『お兄ちゃんも言ってた』なんて事を口走るところだった。

 六花にも兄の存在は内緒だ。

 六花もお兄ちゃんを見たらどんな反応を示すかわからないし、翠ちゃんにどう影響するから分かんないからね。


「んじゃ行くか」

「うん。宜しく」


 六花は翔馬が居る部屋の扉をノックする。

 

「あーい」


 扉越しに返事が聞こえ扉が開く。緊張する。

 すると見慣れない男子が一人顔を出した。隣のクラスの男子の部屋だ。見慣れないのは当然だ。

 男子は六花を見てキョトンとした顔している。多分『なんでお前来た?』って反応だ。

 六花は男子の反応を気にする事なく、


「部屋にあげろ。ホレ、天使連れてきたぞ」


 と、後ろに立つ私を親指で指先す。私は笑顔で首を横に傾げる。男子は私を見て目を丸くし六花を見て、そして私を見る。


「えっと……真壁……さん?」


 男子は私を藍とは間違えずに言い当てたが、宿では皆、学校指定のジャージを着ている。

 胸に名前が刺繍されているので奈々菜か藍かは誰でも分かる事だった。

 男子は慌てて中に戻ると「佐野峰さんが真壁さんを連れて遊びに来たぞ!」と興奮しながら報告する。

 中では「えええええぇぇぇぇ! マジか———!」「でかしたー!」と驚く声が聞こえたが、その中に女子の声も混ざっていた。先客がいたようだ。

 スリッパを見ると割り当ての人数より多いスリッパが置いてあった。


「お邪魔ー♪」

「おじゃま……しま……す」


 六花は軽い感じで中に入る。

 私は見知らぬ顔ぶれの中に入るから恐る恐るだ。

 部屋に入ると敷かれていた布団が少し荒っぽく畳まれ、男子六人、女子四人が輪になって畳の上に座っていた。輪の中央には幾つかのお菓子類が広げられていて、何かの話しで盛り上がっていた雰囲気がある。

 当然、翔馬もここにいる。


「私……隣のクラスだけど……お邪魔だった?」

「いやいや全然全然、まず座ってよ」


 皆一斉に私に目を向ける。

 翔馬は入り口付近に座っていて、振り返って私を見ている。好き♡

 私は翔馬に目を向ける。

 翔馬の右隣には女子がいる。誰その子? ちょっと近いんじゃない? で、左隣は男子だ。


「はいはい、ちょっとあんた左にズレて、奈々菜ここに座りな」


 六花が場を仕切って私を翔馬の隣に座れと促す。勿論私は素直に従う。

 いつもならここで翔馬に悪態付いた一言を言い放つところだけど、ここはアウェーだ。私の空気で場の空気を乱しちゃダメだ。

 私の左には六花が座り、私の右に翔馬がいる。

 心なしか、六花が私寄りに座っている。なので私は翔馬側に少しズレる。ちょっと狭い。体がちょっと翔馬に触れそうな感じ……いい♡


「いらっしゃい」

「……うん」


 翔馬が私に声を掛けるが私は『借りて来た猫モード』だ。

 翔馬もそれは入って来た瞬間、目が合ったのに私が悪態つく事を言わなかった事で察したようだ。大好き♡


「成宮、お前真壁さんの隣って羨ましいぞ! 俺と変われよ」


 折角翔馬の隣に座れたのに、目の前に座る男子が場所を変われと言って来た。


 ——— この男嫌いだ!

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