第115話 モデルやってみる③

 ——— ケ・ベッロで衣装合わせをしていたら翠が店長にお願いをしていた。


「店長が見繕った服を着て私と宗介、一緒に写真撮って欲しいんです。お願いできます?」


「勿論いいわよ。ちょっと待ってね」


 そう言って、翠の服と俺服を持ってきた。俺達はその服を手渡される。

 持ってきた服は、同じデザインの男女別のものだ。

 女性が着ると可愛らしいというよりは『綺麗』『カッコいい』に分類されるデザインだ。

 男の方は『渋み』がある格好いいだ。


「それじゃ撮るわよ。適当にポーズ撮ってね。『はいチーズ』みたいな号令はかけないから」


 そう言われ、慣れないポーズを即席で取っていく。

 翠のスマートフォンで十枚くらい撮っただろうか?

 店長の後ろでスタッフも写真を撮ってる。

 一眼レフの本格的なカメラだ。


「——— こんなもんで良いかしら?」

「有り難うございました」


 翠はスマートフォンを受け取り画像を確認する。俺も覗き込んで画像を見たが……これ、ホントに俺達か? メチャクチャカッコよくて極まってるんだが……。


「それじゃあ今日はこれでおしまいね。次回は場所が取れたんで、来週の日曜日午前九時にこの場所に直接来てね」


 そう言うと、簡単な地図と住所が書かれた紙を手渡した。


「あと桜木さんはノーメークでお願い。当日お化粧するから」

「わかりました」

「着替えたら、今日のお代に何か一つお洋服持って帰っていいわよ」

「本当にいいんですか?」

「今日はお仕事じゃないけど、拘束しちゃったからね。こういう場合でも拘束代と言って、お金が出たりするの。時間ってお金になるのね。覚えといて損は無いないわよ。でも、今の貴方達にお金は渡せないから商品で勘弁してね」

「それじゃ、遠慮無く頂きます」


 俺と翠は着替えると店内の服を選び始めた。翠はピンクなブラウスを。俺はVネックのシャツを一着手にした。値段的には安い部類……かな?


「そんなんでいいの? 欲が無いわねぇ~。」

「ちょうどブラウス欲しいところでしたし、時給換算でも十分高いですよ」

「確かにそうだな」

「それで納得ならいいわ。でも、貴方達への報酬としては安すぎるから。それだけは覚えといて」

「ありがとう御座います。それじゃまた来週に伺います。失礼します」

「はい、来週お願いね。お疲れ様~」



 ※  ※  ※



 俺達は挨拶をして店を出た。

 外はすっかり暗くなっていた。

 俺と翠はお店の人達に見送られ、駅に向かって歩く。

 すれ違う人の八割くらいの人が俺達に目を向けるがすぐ目線を逸らす。

 翠はその事を何も感じていないようだ。


「どうだ? 視線。気になるか?」

「宗介と一緒だからかな? あんまり気になんないね」


 まぁ、大勢の人に一気に見られてる訳じゃ無いから気にはならないか?

 さて、時間は既に六時を過ぎている。もう帰る時間ではあるが、ずっと同じ店にいたせいか遅い時間に出歩いているが何か物足りない。

 そしてアミューズメントパークの前を通り過ぎようとした時、翠が俺の服を引っ張って足を止めた。


「ね、私達ってプリクラ撮った事無いよね?」

「無いな……妹としか撮った事無い事に今気付いた」

「私も藍としか撮った事無いや。撮ろ」

「いいけど……」


 翠は俺の腕を引き店に入って行った。


「こっちだね」

「プリクラって何でこんなにいっぱいあるんだ? ひぃふぅみぃ……十台はあるぞ」

「これにしよ」

「これにする基準が分からん」

「えへへ、私も分からん」


 俺達は適当に機械を選んでカーテンの中へ入る。


「取り敢えずノーマルでいいよね?」

「あぁ、盛り盛りにすると誰だか分かんなくなっからな」

「それもあるけど初めてだし普通に撮りたいよ」


 そう言いながら翠は帽子を取った。

 俺も帽子を取り、お互い素顔で画面の前に立つ。


「なんかこうして並んで立ってるのを目の当たりにすると……なんかこう……照れるな」

「ふふふ、だね。並んで立つとこなんて見る機会無いもんね。よし、それじゃあ行くよ」


 お金を入れて色々選択して撮影に入る。因みに「カップルモード」を選択した。


「あ、これって画面のポーズ真似すれば取り敢えず絵になる奴だね」


[『なんちゃって』のポーズ、三、二、一 ——— パシャ!]


「お? 結構面白いポーズさせるな」


 取り敢えず機会の指示に従って写真を撮り進める。


[『二人でハートを作ろう』三、二、一 ——— パシャ!]


「なんか手がズレた」

「もう一回やるか?」

「うん」


 機械の誘導を無視してもう一度はハートを作る。翠は終始満遍の笑みだ。俺も感化され笑顔になる。


[『彼氏さんは彼女さんの背中からギュッとして』三、二、一 ——— パシャ!]


「うわー、なんか恥ずいぞ」

「うふ♡ でもちゃんとやってんじゃん」

「まぁ……ツッコむな」


[それじゃあ最後は『彼女さんが彼氏さんのホッペにチュー』三、二、一 ——— パシャ!]


 翠は俺の肩に両手を添えてジャンプしホッペにキスをしようとしたが、俺の背が大きくて届かなかった。


「もぉ! 宗介デカ過ぎ! 少し腰落としてくれてもいいじゃん!」

「そんな写真残せないって」

「別にいいじゃん減るもんじゃ無いし」


 俺達は機械の外に出て外の画面で写真に落書きを始めた。


「おいおい、そんなの俺の顔に書くなよ」

「このポーズはこの落書きが合う。絶対合う」

「それじゃあこの写真は……」

「あはははは、いいね。なんかそれっぽいよ」


 すると後ろから抱きついている写真が画面に出た。


「ちょっとこれは恥ずいって」

「えー、私これ好きだけど」

「んじゃこれはこのままで」

「えへへー。待ち画にしよ」

「マジか! 見られたら……見る奴いないか」

「いるよ。芹葉ちゃんと来羅ちゃん。あと奈々菜ちゃん」

「藍ちゃん入れてやれよ」

「あの子はいいの」


 そして最後に出たホッペにキスの写真だが、俺は翠の表情に見惚れ動きを止めてしまった。可愛い……。


「どうした? 私の表情可愛くて見惚れたか?」

「……あ? ああ……うん」


 翠の声に我に返った。


「正直、自分でも可愛く撮れたと思うよ」

「いや、これは……かなり可愛いな」


 シールもプリントされ、俺と翠は店を出て、そのまま真っ直ぐマンションへ帰った。


「来週、楽しみだね」

「そうだな。不安は無いのか?」

「うーん……楽しみが勝ってるって感じ? あんまり考えて無いや」

「ま、いざって時は救急車呼んでやるよ」

「えー! そこは『俺が助けてやるよ』じゃ無いの?」

「ははは、ほっぺ膨らませンなよ。無駄に可愛いぞ」

「無駄に可愛いってどういう意味?」


 そう言って翠は怒った顔で上目遣いだ。可愛いが過ぎるって!

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