第93話 柳生流星と深川芹葉の接近⑥
——— 前話から引き続き、ある日の雨の昼休み。
私と宗介が弁当を食べようとした時、深川さんと柳生君が教室に入ってきた。
そして私の事を深川さんに色々教えたけど、私は「深川さんにも問題があるからね」と指摘する。当然、深川さんは「え?」と驚く訳で、
「だって学校一、二争う美少女さんだよ? 去年は学園祭でもクィーンに選ばれてるし。二、三年生は元より、対面式で一年生も深川さんの事はもう知ってるからね」
「そうなの?」
深川さんは目を丸くして驚く。
去年の学園祭でクィーンになりながらも自分が美少女であり、学園内で有名人である事を本当に自覚していなかったようだ。
「やっぱり自覚なかったか……去年の学園祭でクィーンになった事も忘れてんじゃ無い?」
「…………だったね」
「なんか本気で忘れてたっぽいね」
「あはは……」
「兎に角、陽キャに分類されてる子は深川さんと仲良くなりたがってんだよ」
「そうなの? でも、人と仲良くなりたいって普通に思う事じゃ無いの?」
「それは深川さんの価値観だよ。例えば……柳生君はそんな事ないんじゃ無い?」
「俺か? 俺は真壁みたいな奴が一人いれば十分だな」
「おいおいおいおい、嬉しい事言ってくれんな。まぁ、俺も柳生みたく口数少ない奴が一人二人いれば十分だな」
「そうなんだ?」
「しかもうちのクラスって、去年、それぞれのクラスでカーストトップ張ってたような子が集まっちゃったんだよ」
「あー、それじゃあ尚更深川さん話せないな」
「え? どういう事?」
「所謂『陽キャ』って言われてる子達は、自分が所属するグループが『お洒落に』目立てばそれでヨシなの。そこで深川さんが自分らのグループに入れば、グループの格が上がるから、皆こぞって深川さんを取り込もうとするんだよ」
「なんかよく分かんない世界だね。皆で仲良くすれば皆でトップじゃない?」
「そう簡単にいかないんだよ。グループ内でも上下関係出来ちゃうからね」
「なんか面倒だね」
「そう。だから、私みたいなのが深川さんと仲良くなるのは、陽キャグループから見ると凄く面白く無いの」
「なんか、私が面白く無い展開。でもなんで面白く無いんだろ?」
「深川さんが私と仲良くなると、深川さんのお洒落的な部分の価値が下がるって考えるみたいだね。で、私に『深川さんに近付くな』って攻撃が始まるんだよ」
「私、そんな子達と仲良くなんかならないよ」
「それは彼女達も分かってるから、深川さんが知らないところで私に攻撃してくるんだよ」
「なんかやだな……」
「て事で、私の病気が治るまでは御免。無視してね」
深川さんは肩を落とす。
私はその様子が余りにも可愛そうに見えて思わずフォローを入れた。
「でもこの場所ならいくらでもお話し出来るから」
「分かった」
私の言葉に今度は表情が明るくなる。
なんだか表情がコロコロ変わって可愛い人だ。
——— 綺麗だけどなんか子供っぽいな。
後で聞いたら宗介もそう思ってたようだ。
「だけど街で会った時、私の名前出た時は驚いたけど、自分で墓穴掘ってたとは思わなかったよ。人混み気にして掲示板見に行った事無かったから、そこまで気が付かなかったね」
「だな」
私は深川芹葉という人物はよく知らないが、彼女の人と形は、短い時間で直ぐ分かる程、信用に足る人物だと思った。
——— 『友達になりたい』
初めてそう思えた女の子を前に、私は少し欲が出た。
「ね、一つお願いしていい?」
「何?」
「名前、『芹葉ちゃん』って呼んでいい?」
「勿論♪ 翠ちゃん宜しくね」
屈託のない笑顔で即答して来た。裏も表もない
すると柳生君が泣きそうな声で聞いて来た。
「俺は入って無いの?」
「女の子の世界に入ってこないで!」
お昼休み限定の関係が出来た。
※ ※ ※
——— 既に就寝時間だ。
俺は自分の部屋で今日の昼休みの事を思い返していた。と言うのも、真壁と桜木の事でどうしても腑に落ちない事が有った。
——— 何かが足りない……パズルで色は同じなんだがピースの形がちょっと違うと分かっていながらも無理矢理はめ込んでる気分だ……何だこの違和感……あの後芹葉は「お似合いだよね」なんて言ってたが……お似合い? 確かにお似合いだ。ただ、何に対して? 成績? 見た目? 容姿? ……容姿……桜木は真壁の顔を知っていると言っていた……あんなイケメンが彼氏じゃ……あれ? 真壁の写真ってそう言えば……。
俺は以前出回った謎のカップルの写真を思いだした。
写真は芹葉から貰っていた。
俺はスマートフォンを手にして写真を画面に映す。
——— そうそう、この時俺は一目でこの男が決勝戦の男ってのは思い出した。名前までは思い出せなかったが、先日の自己紹介でアイツがコイツだと分かった。
だったら一緒にいる女は誰だ? 真壁は桜木と付き合ってると言った……付き合ってる……!
まさか、これが桜木翠だって言うのか⁈
……これが桜木なら……そうか! だから『視線恐怖症』になったのか……。
俺は正しいパズルのピースを見つけた気分になった。
※ ※ ※
――― 翌日の昼休み。
「翠ちゃん来たよー」
「芹葉ちゃん待ってた♪」
翠は深川さんを歓迎しながらもおかずトレードをしていた。
「翠ちゃん何してんの?」
「宗介のおかずと私のおかず、トレードしてんの」
「お弁当は翠ちゃん作ってんの?」
「うーん……一品ね。多い時は二品。あとは昨夜の残り物……は、偶に私が作ったおかずがあるかな? それと
「へぇ……お料理出来るんだ」
「人並みだよ」
そう言って、弁当に箸を付け始める。そして翠が深川さんに質問する。
「そう言えば、二人が付き合い始めたのは学校中で騒ぎになったから知ってたけどキッカケって何だったの?」
「えー……知りたい?」
「勿論知りたい♪」
「えっとね……バスケの練習で、居残りで練習してた流星君見て、頑張り屋さんだなー、カッコいいなーって思ってなんとなく応援したいなーって練習のお手伝いし始めたの。実際、学校で一、二を争うイケメンだし、そんな人が努力家だったらもう文句なしで好きになれるでしょ?」
「ナニ! 俺って学校で一、二を争うほどのイケメンなの?」
「ちょっと待って。柳生君、もしかして自覚無し? ……って、昨日の芹葉ちゃんも自覚無かったもんな……」
「自分の事は分からんて」
と言いながら柳生は口いっぱいにご飯を頬張る。
「えっとね、一、二を争ってるよ。スポーツマン系では間違い無く一位だね」
「翠ちゃん詳しいね」
「教室で本読んでると結構周りの声聞こえるんだよ。イケメンの話が出れば柳生君の名前は絶対出るし、美少女の話になれば芹葉ちゃんの名前は絶対出るね。で、話戻すけど、柳生君はそんな芹葉ちゃんをどう思ってたの?」
「んあ? 俺はバスケ馬鹿だから、そん時は視界に入って鬱陶しい女だなって思ってたんだけどな。ま、色々手伝ってくれたり、コイツもバスケ好きなんだなって、気付いたら一緒になって練習してた。で、なんか知らんが気付いたら連絡先交換してて、挙句に俺から告ってた」
その一言に俺と翠は肩が「ガクッ」っとズッこけた。
「柳生君から告ったの? 今の話の流れだと深川さんからでしょ?」
「そうだよな? 告っといてなんだが俺もそう思う」
「深川さん的にどうなの?」
「え? 嬉しかったよ」
「いや、告ろうとか決意あったでしょ?」
「私は一緒にいる事に満足しちゃってて告る気全く無かったんだ。てか忘れてた」
「芹葉ちゃん……もしかして……天然さん?」
「よく言われる……ははは」
お昼休みは未だ続く。
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