第94話 柳生流星と深川芹葉の接近⑦

 ――― 前話から引き続きまだお昼休みだ。

 柳生と深川さんの付き合うキッカケを聞いたところだ。


「そう言えば、始めて真壁君に会った時、流星君と真壁君って、昔からの知り合いみたいな感じしたんだけど……」

「あぁ、コイツ、中学ん時バスケで一回試合やってんだ」

「え? やっぱりバスケ部だったんだ。初めて会った時そんな話してたからそうかなって思ってたんだ」

「メチャクチャ上手かったぞ。てか、デタラメな強さだった……大会の個人得点記録、二倍近く更新したからな」

「あれ? 優勝したのは流星君の学校だよね?」

「あぁ、試合には勝った。ただ、勝負は勝った気が全然しない不本意な優勝だよ」

「んんん? ちょっと待って。なんか決勝戦の話っぽいけど……」

「決勝戦だよ。点差は一点差。コイツがボール持つと何やってんだか動きが全然見えねぇんだ。翻弄されまくりだよ」

「おいおい、それをお前が言うか? こっちこそお前のパスにみんな翻弄されまくってたんだぞ」

「あれは俺の功績じゃ無い……とまでは言わねぇが、もう一人いたろ。トリッキーな奴」

「……6番か?」

「そ、シューティングガードな」

「確かにあれにも翻弄されまくった」

「あいつがいなければウチは全然手も足も出なかったよ。あいつ自身言ってたんだ、『7番真壁宗介が抑えられない』って。あいつが抑えられなかった奴は後にも先にも真壁だけだったよ」

「凄いね。二人がかりでやっと真壁君に勝ったって感じだ」


 俺の隣で翠が俺をじっと見ている。前髪で隠れている目をキラキラさせている感じが見て取れた。

 すると、柳生が思い出したかのように、突然俺に話を振ってきた。


「そう言えば、真壁、お前……雨の日の謎のカップルの写真知ってるか?」

「あぁ、……去年のクラスマッチの前だったか? ――― !」


 俺は柳生が言わんとしている事に気付いた。

 柳生は俺の素顔を知っている。そしてあの時の写真が俺である事は柳生は気付いていた。

 柳生がそこまで気が付けば、そこに一緒に写っていた女が翠だと気付いた事は想像に足る。

 そして翠も気付いたようだ。

 俺と翠は顔を見合わせる。


 ——— さて……どうしたもんかな……。


 俺達三人の様子に深川さんは頭の上に『?』が沢山出ていた。


「????? あの写真がどうかしたの?????」


 深川さんだけが蚊帳の外だ。


「いや、ちょっとな……真壁、どうなんだ?」

「そうだな……週末暇か?」


 俺は二人に聞いた。


「宗介が暇なら暇」


 まぁ、翠ならそう答えるわな。


「俺も予定はないぞ。芹葉はなんかあるか?」

「無いけど……え? なんなの皆さっきから」


 深川さんには悪いが、俺は彼女の反応を無視してそのまま話を進めた。


「じゃあ……いいか?」

「うん。私はいいよ。このままの方が気持ち悪いし、芹葉ちゃんに対して誠実じゃ無い」

「え? だから何なのさっきから。ねぇ、無視しないで教えてよ流星くーん ———」


 柳生は深川さんを尻目に真剣な面持ちで俺と翠を見る。

 芹葉は泣きそうな顔で俺達三人の顔を順に見た。



 ※  ※  ※



 ――― その週の日曜日。部活が終わり一度家に戻る。

 そして私は流星君の案内で、とあるマンションに来ていた。

 この地域は何があるという場所では無い。用事を作る事すら出来ない地域だ。

 なので私は始めて来た地域である。

 私は流星君と二人、見知らぬマンションの前に立っていた。


「ここなの?」

「ここらしいな」

「流星君も知らないんだ」

「俺が知ってるのは俺が知ってる事だけだ」

「それは分かってる」

「んじゃ行くぞ」


 私流星君はエントランスにあるインターホンを押し、目的の部屋を呼び出す。


『はい』


 返事があったが男性の声だ。今日お邪魔するお宅には男性がいる。まずは一つ目の情報ゲットだ。


「俺だ。柳生だ」

「おう、待ってろ」


 すると自動ドアが開き、私達は中に入る。

 結構立派なマンションだ。

 エレベーターで目的の階に上がるが、結構上の階だ。

 そして目的の部屋の前で立ち止まり再びインターホンを押す。


 ――― ピーンポーン♪ ………… ――― ガチャ。


 扉が開き、男性が顔を出した。出したのはいいけど……


「おう、待ってたぞ」


 扉が開くと、流星君よりもイケメンな男が顔を出した。

 いや、イケメンという言葉じゃ全然足りない。何この人。次元が違う。イケメンの定義を根底から覆すような顔立ちだ。

 そして背もそれなりに高い。

 今日は流星君から『友達の家に遊びに行く』としか聞いていない。

 普段から詳細を話さない彼だが『友達』の情報すらくれなかった。ていうか、流星君が私を連れて『友達』の家に遊びに行く事は今まで一度も無かった。

 そもそも友達がいたんだと少し驚いてすらいた。


「よっ! しかし随分立派なマンションだな」

「ま、ここじゃなんだから中に入れ」

「お邪魔しまーす……ん? 芹葉どうした?」

「——— え? あ、はい。お、お邪魔します」


 私は彼の顔に見惚れて暫く惚けていたようだ。

 私は頭に『?』を出しながら廊下を歩いてリビングに入る。

 私は反省した。彼氏がいるのに他の男性に目を奪われ…………リビングに入ると、男性が振り返り私達を迎え入れる。

 その顔を見て再び私は惚けてしまったようだ。

 すると声を掛けられるまで気が付かなかったのだが、リビングのソファーに女の子が座っていた。

 女の子は私達が入ってくると、立ち上がって挨拶をしてきた。

 私はその声に我に返った。返ったんだけど……。

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