第128話 がんばれ!流星君!⑤
——— 夕食の時間になった。
俺達は、ダイニングルームに案内された。部屋には二十人は座れるテーブルが部屋の真ん中に置かれていた。
テーブルの上には造花じゃなくて生花が生けられてる。日頃から? 今日だけ?
俺達はウェイターのエスコートで椅子に腰掛ける。
ウェイターは三人いた。
「普段からウェイターさんこんな居るの?」
「居ないよ。今日は皆来るから、うちで経営してるホテルからホテルマン借りちゃった」
なんか凄い事言ってる気がするが……俺は考えるのを辞めた。
着席して間も無くテーブルに料理が皆の前に一つ一つ置かれて行く。
「オードブル……前菜で御座います」
俺と翠、流石に江藤さんも目が点になった。
「今日はフレンチにしてみたの。お酒飲めないからアミューズ省いてただのコース料理にしたから気軽に楽しんでね」
すまん。何を言ってるのか意味が分からない。
「宗介、フランス料理ってコースで食べたことある?」
「無いよ。せいぜい単品でタルトにシュークリーム、ミルフィールに……マカロン。そんなもんだな」
「スイーツしかないじゃん!」
「俺の得意ジャンルだからな」
フランス料理に関してはあまり話さないようにしよう。ボロしか出ない。
「いつもはこんな豪勢じゃ無いよ。今日はみんな来るから張り切って貰ったの。それじゃあ皆召し上がって」
深川さんの言葉に皆ナイフとフォークを手にする。
江藤さんは手慣れた感じで食べ始めた。彼女、食べ慣れてんのか?
俺と翠は拙いながらもそれっぽい感じでナイフとフォークを使って行く。
翠は十分楽しんでいるようだ。パクパク食べてる。見るからに美味しそうだ。
——— 「ポワソン……お魚の料理で御座います」
スープを飲み終わると、目の前に魚料理が置かれた。
特に説明は無いので何の魚かは分からない。尤も、説明を聞いたところで分かるわけもなく……美味い事だけは分かった。
「柳生君のテーブルマナーが完璧な件」
「今日のフレンチのフルは確かに豪勢だが、普段の食事でも此処ではナイフとフォークの使用頻度は高い」
「柳生君、結構来てるんだね」
「まあな」
「でも納得だね。毎日芹葉ちゃんのお弁当の食べ方見てて『綺麗だなー』って思ってたんだよ。姿勢もだけど」
「厳しく叩き込まれたから」
「意外なのは流星もだぞ? お前も何気に食べ方綺麗なんだよ。何なんだお前?」
「あーん? いいか、『食』という漢字は『人』を『良』くすると書く。そして『食事』とは『人を良くする事』って事だ……あとは知らん」
「締まりがねぇ説明だけどなんか妙な説得力あるな……納得してしまった」
——— 「アントレ……肉料理で御座います」
肉料理が置かれた。「子羊の……」って感じの料理だ。
「そう言えば、来羅ちゃんはここに来るの初めて?」
「初めてよ。大体、芹葉と学校以外で会うの今日が初めてだもん」
「え? そうなの?」
「うん。私、土日って部活以外出歩かないから。それに出かける時は……まぁ色々面倒でね」
「そうなんだ。結構自由無いんだね」
「まぁそう見えるかな? 物には不自由しないんだけど行動は不自由だらけ……だね」
見た目とは裏腹に、結構大変なんだな。
※ ※ ※
食事が終わって勉強会が始まった。
始まって早速ミスをした。問題を作ったがコピーするのを忘れていた。
「深川さん、コピー機なんてある?」
「あるよ」
「これ人数分コピーお願いしたいんだけどいい?」
「いいよ。吉田さんお願い」
「かしこまりました」
お手伝いさんの吉田さんは、俺が渡した問題集を手にすると、一例して建物の奥へ消えていった。
因みに吉田さんはメイド服などは着ていない。
動きやすそうな私服にエプロンだ。
年齢は30代との事。
「これからテストをやる。覚えていない部分、苦手な部分を洗い出すのが目的だから点数は気にしないでくれ。時間制限も無い。休憩も適当に取っていい」
説明の途中で吉田さんが戻ってきた。そしてコピーを深川さんに渡した。
「吉田さん有難う。真壁君これ配っていい?」
「ああ、いいよ。配られたら始めて」
※ ※ ※
「流星そろそろ二時間だが、どうだ?」
「一応、終わったがりました。見てくれさい」
「いいよ、無理に丁寧語に変換しなくても。あー…、うん、だいたい分かった。これから傾向と対策作るから、英単語、ここからここまで書き取りして暗記してくれ」
俺は流星に指示を出すと流星は黙って俺が指示した内容を勉強し始めた。
そして深川さんと江藤さんの回答に目を通す。
「深川さんと江藤さんはこれなら満点取れるね」
「ホント?」
流星に聞こえないように3人に話した。
「今回みんなに配った問題、実はかなり難しいんだよ。ただ、基礎が出来てると、メチャクチャ解きやすいって問題を集めたのがこの問題集」
「そうなの? あんまり難しい感じじゃ無かったけど……」
「そこは俺の手腕だな。褒めて欲しい。例えばこの問題なんて、普通に考えると?」
「……分かんないね」
「でも、こっちの問題でこの公式を当てはめると」
「うん、素直に解ける……あれ? こっちの問題が………凄い! 答えの
「そんな感じ。流星にはかなり難しいけど、解けば解くほど楽しくなる問題……のはず」
「結構考えられてるね」
「結構考えた。もしかすると片手の順位に入るかも。なんだかんだで偏差値高い新山学園に入学出来てんだ。基礎はそれなりに出来てんだよ」
「ところで、真壁君は親の引っ越し無ければ何処の学校に行こうとしてたの? まぁ、聞いても分かんないかな?」
「ん? 『聡明義塾学舎』だけど?」
「「「え———!」」」
女子三人は声を揃えて驚いた。流星はキョトンとしている。この学校を知らないようだ。
※ ※ ※
その高校、全国的にも有名なとんでもないバケモノ高校だ。
「何だ? 皆、声揃えて驚いて。そこがどうかしたのか?」
「流星君知らないの? その高校の大学受験は東大が滑り止め。海外の大学受験がデフォの超超超エリート高だよ」
「そう。入試の合格人数に定員は無く、一定の学力以上の者であれば全員合格っていう……ただ、噂じゃ例年五十人も合格者は出ないって……」
「しかも企業の寄付金のみで運営してるから授業料も免除らしいじゃん」
「噂じゃ、大学レベルの授業までやってるらしいよ」
「それ、大学行く必要あんの?」
「大学行くのは、専ら研究する事が目的らしいね。日本の大学って研究成果出してるところ、海外より少ないから」
「確か全国から受験にくるから寮も完備されてたよね?」
「あぁ」
「だったら……」
「あの街には居たく無かった。それだけだ」
「真壁君ってあそこに住んでたんだ?」
「うん……宗介の気持ちは痛い程分かる」
「で、そこは受験したの?」
「いや、する前に親父の転勤分かったからな。ただ。模試の判定はA+だったな」
「A+……合格確実じゃん。私、一回、試しに設定したらD-だったよ」
「来羅でDか……期末で満点取れる訳だ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます