第112話 中等部の修学旅行④
——— 私は『彼氏の存在』を公表する事にした。
私は翔馬を真顔で暫く見つめた。
翔馬の顔は瞳孔が開いた感じで私を直視している。
「翔馬御免。私、やっぱあなたの
「え⁉︎」
「だから翔馬にも皆にもハッキリ言っちゃう。もう、無理。限界!」
「え? なになに?」
周りの子達は興味津々に目が爛々している。
翔馬は驚きで目が大きく見開いている。
この表情は私が何処まで話すのか読めてないって顔だ。
「それで、好きな人なんですけど……好きな人はいません」
「えー、そんな勿体振る言い方しといてそれは無いよー」
「ただ、大好きな人はいますよ」
「あは♡ もー、何その言い回し。真壁さんもそんな冗談ぽい事言うんだ。で、誰? って、教えてくれ……る訳ないか……」
「流石にそれは……ね。名前は言えませんけど……一応、その人とはお付き合いしてると私は思ってます」
「…………はい? お付き合い? え? 彼氏? 思ってる? んん?」
「はい。私は彼とお付き合いしてると思ってますけど、彼は私の彼氏である事を認めてくれません」
「ちょ、ちょっと待って。それって、真壁さんがその人に告白したって事?」
「はい。『好き』って伝えてます。それに目一杯態度でも示してます。そして相手も私の好意をしっかり認識してます」
「態度って……例えば?」
「手を繋いだり、抱きついたり……分かりやすく言えばスキンシップ……かな? 『アーン♡』も普通にやり合ってますし……他にも色々ありますけどね。キスは……しようとすると怒られます」
「はい?」
皆顔を見合わせ驚いている。
「私だって好きな人に触れたいとか尽くしたいとか思いますよ?」
「まぁ、そうだよね……で、向こうはなんて?」
「向こうも私の事は好きって言ってくれますし、態度とかでも……下心無しで色々尽くしてくれます。ハッキリ言って相思相愛です」
「え? なのに付き合って無い?」
「みたいですね」
「なんで?」
「『まだ俺には奈々菜の隣に立つ資格が無い』って……さっき翔馬が言ってたままの事、事ある毎に言われてます」
「……なんかそれ聞くと立場の違いでさっき似たような事言ってた成宮君が凄く惨めに見えてきたよ……まぁ、真壁さんの器量っていうかスペック考えたらその男の言い分も分からなくは無いね」
「私的には私の方が彼の隣に立てる器だとは思って無いんですけどね」
「どんな人なの?」
「私を『真壁奈々菜』として扱ってくれる人です。それと一個人の意思を尊重してくれたり……他にも皆に彼の良さを伝えたいんですけど……良さを知ったら女の子が寄り付いて来るかも知れないんで、あんまり言いたく無いのも事実です」
「なんか、性格は凄く良さそうだね」
「はい。実際、いいですよ。老若男女、誰に対しても平等で優しいです」
「……俺、恋する前に失恋しちゃった気分だよ」
「デートとかしてんの?」
「してます。専らお家デートですね。
「家も行き来してんだ?」
「はい。普通に互いの家を出入りしてます。うちに泊まりに来た事は何度かあります」
「え? それじゃあ、親も知ってんだ?」
「親同士顔も合わせてます。一応、彼の家に泊まる許可も貰ってますけど、彼はそれはダメだって怒るんです。翔馬、それって酷いと思わない?」
「おいおい、それ俺に聞くか?」
「真壁さん、なんか容赦ない感じ……」
確かに容赦ない。ただ、皆が思ってる事と、翔馬が思ってる事は全く別モンだけどね。
「あと、この歳でこんな事言うと子供の戯言みたいに聞こえますけど、私の両親は彼と結婚する事は止めないって言ってくれてます」
「はー? そんな話まで行ってんの?」
「まぁ、ちょっと在りまして……うちの両親、彼の事、偉く気に入っちゃったみたいです。ふふ」
結婚なんて『夢』でしか考えない年頃だ。話が飛躍しすぎて、皆、言葉にならないようだ。
翔馬は言葉にならないというより、言葉を失ってる感じだ。私の熱いこの気持ち、思い知れ! ふふ♡
ただ、一人平然とした子がいる。
六花だ。
それに気付いた子がいた。
「佐野峰さん……知ってた?」
「……知ってたけど……結婚は初耳。まさかここまで喋っちゃうとは……あ、ついでにこの子まだ処女だから」
「六花! もう……」
「御免御免」
まさかの『彼氏います宣言』で皆困惑している感じかな?
私は露払いにいずれ誰かに話そうとは思ってたけど、まさかそれが今日だとは思ってなかった。
六花も少し驚いている。
翔馬は私の話しを黙って聞いてた……っていうか黙ってるしかないね。
後で聞いた話、私達二人の関係をバラすんじゃないかってヒヤヒヤしてたらしい。
そして今、翔馬は私からのプレッシャーに耐えかねてか頭を抱えて項垂れている。
その姿に周りは私の言葉にショックを受けていると思ったようで、
「成宮そんなこの世の終わりみたく落ち込むなって」
「もう、家族まで認めてるみたいだしさ」
「所詮、俺らはモブよ」
「翔馬御免ね。
翔馬は驚いた顔で暫く私を見つめ、そして一言、「………善処します」と呟き、天井を見上げた。
翔馬御免。ちょっと追い込んだ。
うーん、抱きついて『御免なさい』したい。
ついでに藍から頼まれてた事もここで話した。
「それと藍も私と同じ状況で、彼氏が『藍の表面しか見えてない』って藍の告白、何度も断ってます。でもデートとかお泊まりとかイチャイチャは私と一緒でやってます」
「奈々菜、それ言っちゃっていいの?」
私の突然の藍に関する告白に六花が心配になったようだ。
「うん。藍からは『いつか誰かに話して』ってお願いされてたの。今迄話すキッカケ無かったから今がいい機会」
「そ、なら止めないけど」
皆、開いた口が塞がらない状態だ。
「えーっと……二人の彼氏は学園の子?」
「それは……まぁ、今の話でチョイチョイ示唆する事言ったんで否定はしません」
「因みに二人のこのお話……『桜木さんが話してくれ』って言ってたって事は……」
「はい。今すぐメッセで拡散して構いませんよ」
——— そして早速拡散された。仕事早いよ。証拠に私との写真もメッセージに添えられ、今日、この部屋に居た子達は、他の子からはかなり羨ましがられたようだ。
※ ※ ※
「やっと皆にお知らせ出来たね」
「うん。翔馬には悪いと思ったけど私も我慢強く無いからさ」
「まぁ、それは俺のせいでもあるからいいんだけど、ただ、あの時間は拷問だったぞ。何度口塞ごうと思ったか」
「その時は翔馬の口で塞いでね♡」
「廉斗君も早く彼氏って認めてよ?」
「無理だよ」
「なんで?」
「だって、藍ちゃん可愛い以外にも色々いいところあり過ぎて全部見え無いんだよ」
「…………ん? 普通、そういうもんじゃ無い?」
「うん。私も廉斗君の全部はまだ知らないよ?」
「そうなの?」
「もしかして、廉斗君、藍の全部を知ってから付き合おうって思ってたの?」
「え? 違うの? 付き合うってそういう事じゃ……」
「あのねぇ……お互いを知る為に付き合うの。だから知らなくて良いんだよ」
「なんだー。じゃあ、宜しくお願いします」
「…………ん? あれ? なんか良いお返事貰った筈なのに余りにも突飛で緊張感のかけらも無いから感動が全然……」
「いいんじゃない? 藍らしくて」
「いいのかなぁ……」
という事で、藍と廉斗君はちゃんとしたお付き合いが始まったんだけど……今迄と何も変わらなかった。
ホント『付き合う』ってなんなんだろ?
ついでに廉斗君の誕生日はこの旅行中に過ぎた。
藍は私達にも内緒で二人きりでお祝いしていたみたいだ。
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