第125話 がんばれ!流星君!②
——— 流星に保健の勉強をさせなくてはと思ったその日の放課後。
既に下校した俺と翠は駅のホームで電車を待っていた。
俺は流星の勉強方法を考えていたのだが、俺が持ってる問題集では奴のレベルに合わない事に気が付いた。
「なぁ、今から本屋行かないか?」
「何かの発売日だっけ?」
「問題集買って来る」
「柳生君の為に?」
「いや、皆の為に」
——— 俺と翠は繁華街へ行き、駅ビルから少し離れた本屋に行った。流星達と
俺は本屋に着くなり参考書のコーナーへ迷う事なく進んだ。
すると翠は俺の迷いの無い行動が不思議だったらしい。
「迷う事なく真っ直ぐここに来たけど……普段私と居るのにいつここに参考書有るってチェックした?」
「ふっふっふっ。俺には問題集の声が聞こえるのだよ」
「ウソ! って、んな訳無いでしょ」
「ははは、種明かし。この本屋はチェーン店で店の作りと配列はどの店も殆ど同じなのだよ。前いた街にもあったからな」
「なる程」
俺は一冊手に取っては暫く眺め、色々思案した。
「ふふふ……」
「どうした?」
「いつも思ってたけど、宗介って考え事するとホントに『考えてます』って仕草するからさ、まさかここでもそれが見れると思わなくて思わず笑っちゃった」
「そうなのか? 口尖らせたり、ベロ出したりしてる訳じゃないならいいや」
「うん、それは無いから大丈夫。で、どう?」
ちょっと面白い構成を思いついた。それを翠に試してみた。
「この問題解けるか?」
翠は示された問題を暫く眺める。
「うーんと、これってここでひっくり返して、こうじゃ無いの?」
「正解」
その言葉に翠は安堵の溜め息を吐く。
「それじゃあこれは?」
また似たような問題を出したが、これはちょっと難解な問題だ。
翠は暫く眺めているが、答えに辿り着くイメージが掴めそうで掴めない感じだ。
「ダメだね。これで解こうとするとこっちが立たなくなるし……こっち先に解くと……うーん……」
「よし、これ買おう。あとはこれかな?」
問題集だけ買うと、すぐレジに並んで会計を済ませた。
「それじゃあ帰るか」
「うん……」
翠の表情がちょっと暗い。
「何だ? 気のない返事なんて珍しいな」
「折角来たからもう少し遊びたいかなって」
「じゃあ……ブラつくか」
「おう♪」
俺達は当ても無くただ街をブラついた。今日はアーケード街をただ歩いた。
暫く歩くと以前プリクラを撮ったアミューズメントパークが目に付いた。
「入るか?」
「うん♪」
俺達はアミューズメントパークへ入った。
店内は相変わらずゲーム音で五月蠅い。
俺達は手始めにUFOキャッチャーコーナーへ向かった。
「凄い種類あるな。まずは一周するか」
「うん」
大きいぬいぐるみ。おかし。小さいマスコット。おもちゃ。色々ある。
「決まった?」
「無い!」
「やっぱりか……」
「殆どぬいぐるみなんだよね。あと、よく分かんないフィギュア」
翠はぬいぐるみは苦手だ。無機質な視線が苦手らしい。なので部屋にはぬいぐるみの類は一つも置いていない。
「これ、いいんじゃ無いか?」
「おー、プォッキーのでっかいヤツ♪」
ゲージの中には大きなプォッキーの箱が三つだけ置かれていた。
前にプレイした奴がいたようで、配列は少し乱れていた。
「一回二百円か……高いのか安いのか分らないな」
お金を入れ、アームを矢印で操作する。
俺はUFOキャチャーは初めてだ。
アームは横に動いて縦に動き、アームが開いて下に下がる。
すると、箱を外して箱が置いてある棒のような物を掴み上げた。
「あちゃー! 全然ダメじゃん!」
「あはは、宗介下手過ぎ。箱に擦りもしてないじゃん!」
翠が腹を抱えて笑ってる姿に俺は少しカチンと来た。初めての行為を笑う奴は許せん!
「しょうがねぇじゃん! 初め……”ガタゴン!„
「ん?」
ゲージの中の箱が二つ無くなっていた。
「あれ?」
「下に落ちたんじゃ無い?」
俺は取り出し口に手を伸ばすと、なんと箱が二つ落ちていた。
一度のプレイで二個ゲットした。
「やったー! 宗介すげー!」
「うおおぉぉぉぉ! やれば出来る子! 俺!、やれば出来る子ぉ!」
翠も俺も興奮している。人生初ゲットが二個取りなんて、プロ野球デビュー戦、先頭打者初打席初球ホームランやっちゃったくらい凄い事の筈だ。
「妹達にお裾分けだな」
「だな♪」
※ ※ ※
「ねぇ宗介。プリクラ……いい?」
「また?」
「前回は私服だったけど、今回は制服」
「そう言う事なら」
「レッツゴー」
私は宗介腕を取り、前回とは別の機械に来た。
「今日はこの台で撮ろ」
「いいけど、前のと機械違うけど……中身一緒?」
「プリクラなんて殆ど一緒だよ」
「良く分かんないな」
中に入り私はウィッグを外した。当然、宗介は驚くわけで、
「え? 外すの?」
「うん。素顔制服……レアだよ」
「確かにそうだけど……大丈夫か?」
「帽子もあるから大丈夫」
私はルンルンでノリノリだ。宗介も髪を縛った。前髪は片側を上げてヘアピンで留めた。
「さて今回は目、デフォルメさせる?」
「させない。あれ、面白い超えて気持ち悪いだけだぞ」
「やっぱそう思う? 実は私もあんまり好きじゃ無いんだよね……それじゃあ、行ってみよう!」
「今回もポーズ取るの?」
「ふふふふふひっひっひっひ……取るの取るの」
私は嘘を言った。
——— ”それじゃー行くよ 3、2、1、はい!”
「あれ? ポーズ……ポーズは?」
宗介はポーズを取ろうとして腕が中途半端に中に浮いた格好でシャッターが切れた。
戸惑う宗介を見て笑う私。ちょっと意地悪かな?
——— ”次の背景を選んでー……それじゃーいくよ 3、2、1、はい!”
「え?? ポーズいいの? これいいの?」
「ふふっひひひっひひ」
やべっ、変な笑い方しちゃった。
”次の…
「ねえ翠、これってポーズいらないの?」
「え? 何の事かなー」
「あー! お前騙したな? だったら……」
あー……気付かれちゃった。
気付いた宗介は私を後ろから抱きしめて、私の耳に顔を寄せた。私の耳には宗介の唇が少し触れてる。
そして、宗介独特の低いトーンで、
「翠、お仕置きだ」
——— あ……♡
突然の耳元での囁きに、私は腰が砕けてしまった。
だめだ、いつだったかの電車みたく足に力が入らない。立てなくなった。
私は画面の前で座り込んでしまった。
「宗介ぇ………おんぶ」
「——— なんで?」
——— やん♡
再び耳元で囁いてきた。もう♡ それ、好きだけど今はやめて欲しい。
「だから耳元で囁くの禁止って言ったじゃん」
「お前が揶揄って嘘吐くから」
「ごめんなさい。でも立てない」
立てなくて落書きは出来なかった。
シールがプリントされると、宗介はよたよたと歩く私を支えながらベンチまで連れてきてくれた。
私を座らせ、宗介は隣に座る。
私は宗介にもたれ掛かって宗介の肩に頭を乗せた。
私の足が回復する頃、少し離れたところから声が聞こえた。
「あれ、あの二人って……例の『謎の二人』じゃない?」
「あー! ホントだ」
プリクラコーナー出入り口に学園の制服を着た女子生徒が三人立っていた。ついでに、私のクラスの子達だ。
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