第124話 がんばれ!流星君!①
体育祭が終わると今度は中間テスト待っている。
まだテスト範囲は示されていないので本格的に勉強している者は少ない。
俺達五人は何時ものように旧校舎で昼休みを過ごしていた。珍しく流星から話を振ってきた。
「一つ頼みたい事があるんだが……その前に、芹葉は桜木とは教室ではどうなんだ? 普通に会話してんのか?」
流星が頼み事の前に話を切り出したが、こういう事を気にかけるのは珍しかった。深川さんもちょっと驚いている。
「流星君から聞かれるとはちょっとビックリ。うん、会話まではしてないけど、一言二言言葉を交わすくらいはやってるよ。最近、偶に他の子も一緒に声を掛ける子いるけど、注目も浴びるまで行かないから大丈夫。ね」
深川さんは翠に優しく微笑むがその表情とは裏腹に翠の表情は少し暗い。何か気に掛かる事があるようだ。
「確かに注目は浴びないけど……」
「ん? なんか気になる事でもあるの?」
深川さんはキョトンと首を傾げる。
「うん……あのさ……可愛い子取り込もうとするグループっているじゃない? その手の子はちょっと嫌な空気雰出してるかな?」
「そうなの?」
「芹葉はその辺の空気読めないっていうか、そういう子の存在、分かって無いから」
翠の言葉に深川さんは驚き、江藤さんは深川さん驚きに「やっぱりね」と納得している。
どうやら深川さんはそういう空気、雰囲気を掴むのが結構苦手なようだ。というか、江藤さんの言葉からそういう空気の存在を知らないようだ。
深川さんは翠に言われてもピンと来ていない様子だ。翠は改めて話す。
「芹葉ちゃんが私に話し掛けるとちょっと睨み気味に見てる子二、三人居るよ」
深川さんは翠の顔を瞬きもぜずじっと見ていている。表情から驚いているように見える。
「気付かなかった……っていうか、何で睨むんだろ? 私が話しかけると、その子達の機嫌悪くするような事あるの?」
「芹葉はホントそういうところ世間知らずっていうか純粋っていうか……あのね、女って ———」
江藤さんは深川さんに『グループ』と『ランク』『カースト的概念』を教える。
深川さんは「信じられない」と言った表情だ。
「——— そういう思考ってよく分かんない。仲良くすればいいだけじゃん」
「劣等感がそうさせるんでしょ。『弱いから強く見せたい』みたいに。私とか芹葉は上に立ってる部類だからそんな発想も出てこないだけ」
「そっか……もう少し気を遣わないとダメだね」
「ごめんね、色々気を使わせちゃって」
そう言いながら翠は
「翠、そう言う時は『ありがとう』だろ」
「そうだった。芹葉ちゃん、色々ありがとね。 ニコ」
「どう致しまして。 ニコ。ふふふ」
「うはっ! 何それ? 二人してその作り笑顔ウケるんだけど」
そう言えば、江藤さんはこれ初めて見るな。
「この前もそれやってたけどいいねこれ」
「真壁家の慣わしな」
「へぇー、確かに『ごめん』より『ありがとう』の方が互いに印象いいわ」
そして翠は中学時代の話をする。
「中学の時さ、私の事取り込もうとする子がいて、ホント面倒でウザかったんだよ。それと同じで芹葉ちゃんと仲良くなれば自分らの『格が上がる』って思ってんだろうね」
「桜木も『ウザい』とか結構口悪いよな」
「悪いも何も私は人格者でもなんでもないもん。普通の女の子だよ。人を悪くも言えば妬みもするし
「ははは、まぁ、俺はそういう部分見せる奴は好きだけどな。しかし女って分かんねーな」
「女社会は面倒だよ。って言うより面倒にしてる子が多いよね。その点、男の子は気楽でいいよ。趣味嗜好の良し悪ししか見てないから」
翠は男社会をちょっと勘違いしてるようだ
「そうでも無いぞ。猿と同じで力を誇示する奴も居るし、無理にでも自分のペースに持ち込もうとして主導権握りたがる奴とか、一番面倒なのは自分のルール人に押し付ける奴な。あれは一番面倒だ。言ってる事も正論だったりするからな。尤も、流星はそう言うの力で突っぱねるタイプだし、俺は無視するタイプだな」
「何か分かるね」
「ま、どっち道面倒なんだよ」
「で、本題だ」
流星が話を仕切り直す。
「そう言えば頼み事があるんだったな。しかし随分長い前振りだったな」
「まぁそう言うな。でだ、間も無く期末テストがあるわけだが、お前ら皆、俺と違って成績優秀だ」
そう話すと、何かを決意したかの如く立ち上がり、教室の外には聞こえない声量で力強く叫んだ。
「ここに!『柳生流星成績向上プロジェクトチーム』を発足する!」
流星は拳を力強く握り天を仰ぐ。
「別にいいけど、お前の目標は何?」
「順位一桁台」
「部活っていつまで?」
「試験一週間前までだな」
「なら明後日の日曜日……いや、明日の夜からガッツリ勉強な。まずはそこからだ」
「分かりました」
流星は畏まって返事をする。
流星は勉強嫌いだ。深川さんは「やれるのか」を心配しているようだ。なので俺は一つ提案した。
「深川さんにお願いあるんだけどいい?」
「お願い? いいけど……」
俺が深川さんにお願い事をするのは初めてだ。深川さんは当然「何だろう?」と疑問に思う訳で、
「流星が目標達成したら何かご褒美あげて欲しいんだ」
「ご褒美?」
「そう、ご褒美。やっぱ人間報酬があるのと無いのとではモチベーションが全然違うからね」
「確かに……でもご褒美って……」
「流星、お前、深川さんにして欲しい事あるか?」
「いや。十分して貰ってるしな。全く無い」
流星はケロッとあっさり答える。
「十分って……なんか色々詮索したくなるな……」
俺は翠を見ると翠はニヤニヤして、明らかにやましい事を考えているのが見て取れた。
「あの……宗介君と翠ちゃんが思ってるような……その……まだだから」
「え、まだなの?」
「うそぉ?」
翠の言葉に深川さんは顔を赤くして黙って俯く。江藤さんは身を後ろに逸らして懐疑的だ。
その反応に流星が一言。
「こうして一緒にいるだけで十分だろ? それ以上何求める? いや、求めるのも分かるが……まぁ……うるせぇ!」
流星の反応に俺はは流星が深川さんとの関係を丁寧に進めようとしている様が見て取れた。
「じゃあ、ホッペにチューでいいんじゃない? あ、でもその程度じゃ報酬になんないか」
その一言で二人は見つめ合い顔を真っ赤にして下
俯いた。そして流星が激しく非難する。
「な、桜木お前、なな、なんて破廉恥な!」
「おいおい、流星お前がその言葉使うか? てか、お前らキスもまだなのかよ」
「…………(アガアガ……)」
「…………(モジモジ……)」
流星は顔を真っ赤にして俺を掴むように手を差し出して口をアガアガ言わせてる。
同じく俯いてモジモジする深川さん。
流星が反撃に出る。
「な、何だよ、お前らはしてんか?」
「まぁ、それなりに挨拶程度のキスならな。流石にそっから先は……まぁ……」
「なにー! お、お前らもうそこまで進んでんのか!」
「いや、これは進んでるうちに入んねーだろ。なぁ?」
「なぁ(ニヤリ)」
俺と翠は顔を合わせて微笑む。流星は顔を真っ赤にして宗介達を「お前ら破廉恥だ」と言う目で見ている。
深川さんも顔を真っ赤にして俯きっぱなしだ。
江藤さんは「やれやれ」と呆れた表情でいる。
「まさかとは思うが……手も繋いだ事無いとか言わないよな?」
「バカヤロウ! そんな事して妊娠したらどうすんだ!」
俺と翠、そして江藤さんはテスト勉強は保健から始めようと思った。
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