第123話 体育祭 その2

 ——— お兄ちゃん達が撮影会をしてる頃、私達は中総体で結果を出していた。


「優勝おめでとう」

「奈々菜こそおめでとう」


 互いに健闘を讃えあう私と翔馬。

 新人戦に引き続き、私と藍、そして翔馬と廉斗君は中総体予選でソフトテニス個人戦ダブルスで優勝したのだ。

 私達は七月下旬に行われる県大会に出場となる。

 因みに団体戦は男子女子共に、初戦敗退だ。

 ついでに全国高校総合体育大会県予選では、バスケットボール部は男女共に優勝し、全国大会の切符を手にした。


 そして学園では ———、


「ツインズに彼氏居るらしいぞ?」

「嘘だろ。誰だそんな出鱈目な事言った奴」

「真壁さん自身が言ったらしぞ」

「ハァ? マジか⁈」

「あぁ、俺も疑って直接聞いたら『いますよ』って笑顔で返されたぞ」

「マジかヨォ〜」

「どれだけカッコいい人なんだろ?」

「あの二人の彼氏なら相当カッコいいんだろうね」



 ※  ※  ※



 ——— 今年も体育祭がやって来た。


「今年は同じ組だね♪」

「今年は流星と深川さんも一緒だ。倍の倍は楽しめそうだな」


 組分けはクラス単位のくじ引きで決まる。二年生の東軍はテンションが上がっている。


「ちょっと、柳生君と同じ組なんだけど♪」

「今年のCクラスって可愛い子揃ってんじゃん! メッチャ上がるって!」

「うぉー! 深川さんと江藤さんと同じって、やる気最強だろ!」

「やる気だけ最強かよ!」


 そして、出場する競技だが、


「宗介はまた『綱引き』と『借り競争』?」

「いや、今回は借り人はやめて『玉入れ」にした。ついでに流星もな」

「そうなんだ。私も『綱引き』と『玉入れ』にしたんだけど、芹葉ちゃんも玉入れにエントリーしたの」

「随分と人気があるな」

「ある意味ケイジャーバスケやる人の総称の心擽ぐる競技だもん」

「納得。あいつら出るなら俺ら目立たなさそうでいいな」

「そだね。全力出しても大丈夫そうだね」


 今年、俺達四人……いや、翠は全力を出し、陰ながらとんでも無い事をやってしまうのだが……。


 ——— そして始まった体育祭。今年も「借り競争で物言いが……いや、ドラマがあった。

 借り人は一人に付き一人とは限らない。

 一人の生徒が二人を連れてゴールした。

 連れてきたのは生徒に人気がある若くて格好男性教諭と、同じく生徒から慕われている可愛らしい女性教諭だ。

 お題は『恋人同士になったら素敵な二人』だ。

 そのお題と連れてきた先生に対して『ちょっと待ったー!』と三人の男性教諭が手を挙げた。

 その中には教頭も含まれている。

 教頭は先生四人を引き連れ、校庭の真ん中に立った。

 そしてパフォーマンスが始まった。

 因みに教頭のヘッドはアッシュなツンツンヘアーだ。髪型だけイケメンだ。

 後から出て来た先生三人はゴールした男性教諭を差し置き、女性教諭の前に並んで手を出した。

 そして一言「私と付き合って下さい!」と同時に叫び、オーケーなら手を取ってくれというアクションをする。

 女性教諭はこの事は何も聞かされていない。

 当然、答えは「御免なさい」と、深々と頭を下げた。

 生徒は爆笑する。

 三人の先生は『残念』というオーバーなリアクションをしながら頭を上げると競技で連れて来られた男性教諭を女性教諭の前に立たせ、教頭は何かを持たせた。

 教諭はひざまずき、手には渡された指輪ケースの蓋を開け差し出す。そして大声で叫んだ。


「私と結婚して下さい!」

「——— はい♡」

「うおおおおおおおぉぉぉぉ!」


 女性教諭の返事を皮切りに、生徒達が一斉に先生の元へ駆け寄り、男性教諭を胴上げする。女性教諭には花束が渡された。

 指輪ケースはダミーだ。無くす危険があったので中身は入っていない。

 実はこの二人の教諭は付き合っていた。

 生徒は二人の教諭が付き合っている事は一部の生徒が「らしい」と噂している程度にしか知られていない。

 なので生徒はかかなり驚いている。

 教頭は男性教諭から「結婚したいが一歩踏み出せない」と相談されていた。

 女性教諭も養護教諭保健室の先生に「彼と結婚できたら」と気持ちを口にしていた。

 そして、借り人競争でプロポーズさせてしまえと、お題の紙にもお題の下に小さく名前が書かれていたり、前段の演出も全て教頭のシナリオだ。

 そして二人を朝礼台に立たせて教頭が一言叫ぶ。


「優勝!」

「うおおおおおおおぉぉぉぉ!」


 意味不明な掛け声に盛り上がる生徒達。先生達は立って拍手を送っている。

 一応着順による点数は、「順位による点数×借り人の数」になるので競技としてちゃんと配点されているので悪しからず。



 ※  ※  ※



 ——— そんな事が有りながら妨害玉入れの時間だ。

 競技が始まると、俺、翠、流星、そして芹葉の四人は打ち合わせる事なく固まって行動している。

 俺と翠は流星達が目立つので全然注目されない。そして四人はカゴが高い位置にあるものから攻略していくのだが、


「おい、柳生と深川さんが攻めるカゴの玉の数凄くねぇか?」

「マジだ。すげぇぞ」


 攻め手はカゴの移動は自由だ。カゴの周りの玉が少なくなると次のカゴに移って行く。

 誰もが経験あると思うが、玉入れという競技は自分が投げた玉が籠に入っているか意外と分からない。

 そしてここでも当然本人は気付いていないが、実は、玉の半分近くは翠が入れていた。というか、投げた玉は殆ど外していない。

 そして俺、深川さん、流星のシュート力も当然凄い。

 どんどん籠が玉で埋まって行く。

 そして終了となるが、


「おいおい、なんか玉の数、全然違うぞ!」

「東軍の玉、数え終わんねーって」

「あれ柳生と深川さん入れたんだろ? スゲェー!」


 会場が流星と深川さんを称賛する中、俺と流星、そして深川さんは翠が原因と分かっていた。

 そんな事とは露程にも思っていない翠は俺の耳元でそっと囁く。


「宗介と流星君、それに芹葉ちゃん居たら最強じゃん」


 俺は翠の言葉を否定した。


「多分な、あれ、殆どお前が入れたやつだぞ」

「へ? そうなの?」

「横からよく見てたら、投げたやつ殆ど入ってたな」

「…………マジ?」

「マジ」

「来年この競技やめよっかな……」


 翠はちょっと反省したようだ。

 体育祭はこの玉入れの点数の差が最後まで影響して東軍の勝利で幕は降りた。

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