第95話 柳生流星と深川芹葉の接近⑧

 リビングに入るとソファーに女の子が座っていた。

 女の子は私達が入ってくると、立ち上がって挨拶をしてきた。

 私は男性の顔に見惚れていたが、女の子の声に我に返った。返ったんだけど……。


「柳井先輩と深川先輩こんにちは。 ニコニコ」


 目の前には学園中等部の有名人の一人が屈託のない笑顔で挨拶をして来た。


「え? 藍ちゃん? いや、奈々菜ちゃんの方か……このお家って真壁奈々菜ちゃんのお家なの?」

「わぁ♪ 深川先輩、私の名前知ってたんですね。なんか嬉しいです。えーっと、初めまして、真壁奈々菜です」


 自己紹介して来た女の子は『学園の妹』。スーパー美少女『真壁奈々菜』ちゃんだった。

 私は状況を掴めないまま、挨拶を返した。


「あ、深川芹葉です。宜しくね……ん? 真壁? あれ?」


 ——— 何だぁ? 何かが変だ。喉にサンマの骨でも引っかかったかのようなスッキリしないこの感じ。

 あくびが出る瞬間、脇腹を突かれて止められてしまったようなモゾモゾ感。


 すると流星君が声を上げるが、彼も奈々菜ちゃんとは初対面のようだ。なのに目の前の男性とは慣れ親しんだ接し方。

 何、この違和感しかない状況。


「お前の妹、間近で見るとホント可愛いな。初めまして。柳生流星です」

「なんか学園有名人の二人に自己紹介されるとへんな感じ」

「ま、座ってよ」 


 男の案内でソファーに座る。すると、


 ――― ガチャ


 玄関の扉が開く音が聞こえた。インターホンは押されていない。ご家族の方が帰って来たのかな? 

 私は立ち上がって挨拶をと思ったら、


 ——— あれ? 


 私はリビングに目を向けると奈々菜ちゃんがいる。

 入り口に目を向けると奈々菜ちゃんがいる。

 何この状況……あぁ! 藍ちゃんだ。今入って来た子は桜木藍ちゃんだ。

 私はやっと理解した。噂で聞いた事がある。二人はご近所さんだって話だった。

 でも、インターホンも押さずに入ってくるって、どういう事?

 藍ちゃんは私に挨拶をして来た。


「深川先輩に柳生先輩、こんにちわ♪」 

「えっと、藍……ちゃん……だね?」

「わぁ♪ 先輩、私の名前知ってたんですね。感激です♪ 桜木藍です。初めまして」

「深川芹葉……です……んん?」


 この状況、全く理解できない。一体目の前で何が起きてるの? 流星君、友達の家に私を連れて来たはずなのに、超イケメンがいて奈々菜ちゃんと藍ちゃんがいて……んんん?

 すると目の前の超絶イケメンの男性が藍ちゃんに話し掛ける。


「スイは?」

「間もなく来るよ」


 ——— 「スイ」? 「スイ」って翠ちゃんだよね? あれ? 何? 何かが……桜木藍……桜木? あれあれ?

 

 私は何が何だか分からない状況の中、流星君は普通に目の前の三人と接している。普通に接しているのに初対面。これどういうこと?


「はぁ、何度か見かけてはいたけど、並ばれるとホントにそっくりだな。初めまして、柳生流星だ。俺、兄弟とか居ないからちょっと羨ましいな。しかもこんなに可愛い妹って……」


 ――― ガチャ


 再び玄関の扉が勝手に開く。

 そしてリビングに一人の女の子が顔を出し……ハァ……♡


 ——— 何この美少女。美少女? そんな言葉で片付けちゃ失礼って思える程、『孤高の美少女』が目の前に現れた。

 私は見惚みと見惚みほれ、溜め息を吐くたび『♡』も一緒に口から吐き出されていた。

 その子の容姿は今迄に見た事が無い、次元の違うとんでもなく可愛らしく、そして綺麗な女の子だった。

 美少女はリビングに入りながら「柳生君、芹葉ちゃんこんにちは」と挨拶をすると、そのまま、超イケメンの隣にスッと座りニコニコしながら首を傾げて私達を見る。

 その仕草もメチャクチャ可愛い。

 あまりの可愛らしさと、そしてその美しさに私は目が離せないでいた。

 私は流星君に顔を向けようとするが、どうしても目線は彼女ら二人に行ってしまう。

 視線を切りたいのに切れない。どうしても目が行ってしまう。

 私は目線が美少女から外せないままに流星君に質問した。


「えっと……流星君?」


 私はこの場が一体なんなのかが聞きたかったが、美少女の登場で思考が停止してしまった。

 すると目の前の男性が突然口を開いたかと思ったら「御免御免」と謝って来た。


「ちょっと悪戯が過ぎたかな? 宗介だよ。真壁宗介。でこっちが」

「桜木翠です。いらっしゃい芹葉ちゃん」


 ——— …………え?


 私は突然告白に思考が再び停止した。停止したというか、停止すべき脳そのものを失った感じだ。

 私は『真壁宗介』と『桜木翠』と名乗った二人の顔を交互に見た。

 そして、流星君見ると微笑ましい表情で私を眺めていた。

 『宗介』と名乗った男性は中等部の美少女二人を改めて紹介する。


「で、妹たちの奈々菜と藍」


 そこで私の思考回路は復旧したわけだが……。

 並んで床に座る奈々菜ちゃんと藍ちゃんに目を配る。


「え? え? …………えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――!」


 私はただただ驚く事しか出来なかった。

 驚きの声をキッカケに『翠』と紹介された女の子と奈々菜ちゃんはスッと立ち上がってキッチンへ行った。


「ちょっと……ちょっと待って。えーっと……何から聞けばいい?」


 私は混乱している。そして戸惑っている。状況が全く掴めない。

 戸惑う私に真壁君だという男性が合いの手を入れてくれた。


「はは、戸惑りまくってんな。大丈夫か?」

「え、あ、はい。全然大丈夫じゃないです」

「それじゃあ、順を追って説明するな」

「お願いします」


 私は姿勢を正した。

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