第三章 桜木 翠
第88話 柳生流星と深川芹葉の接近①
——— 俺と翠は今日から二年生だ。
今日もいつものように二人並んで登校している。
因みに電車の中では翠は完全に俺に体を預けて密着していた。最高だ。
「クラス、同じになるかな?」
「まぁ……こればっかりはな」
同じクラスになりたいと思いつつも、そうなると何かしらボロが出そうで怖いのだが、翠はそこまで考えているんだろうか?
学校に着き、俺達は掲示板に真っ直ぐ向かった。
そして、二人並んで掲示板を見る。
「Cか……」
「俺はDだ」
「残念。でもイベント事で隣のクラスとの合同、結構有るから一緒になれる時もあるね」
自分の名前だけを確認して教室に向かう。
其々に教室に入る。入る間際、翠は誰にも気付かれないように、小さく俺に向かって手を振った。こういうさり気無い仕草がちょっと可愛いって思ってしまう。
教室に入ると、なんか教室全体がソワソワ落ち着かない感じだ。なんだ?
俺はそんな空気を感じながらも黒板に貼られた座席表を見た。座席表を見て原因がすぐ分かった。これはソワソワする訳だ。
俺の座席は一番前なのだが、俺の斜め後ろが、柳生流星だった。
一通り目を通すと、江藤来羅の名前もあった。
女だけじゃなく男も騒がしい訳だ。
しかしこの場所……アイツと俺が前に並んだら後ろの奴黒板全然見えねぇぞ。
俺はまだ測定前だが、身長が伸び180㎝なっていた。柳生流星は190㎝くらいはある。
俺らの後ろの席の奴が黒板が見えないとなり、全校集会後のホームルームで一番後ろの席に移動となった。
※ ※ ※
私は教室に入り、真っ直ぐ黒板に向かった。
——— 私の席は……一番後ろか、いいね。
後は自己紹介……今年は江藤さんが居ない。さてどうしようか……ん? 深川さんが一緒のクラスか……道理で男子がソワソワしてるわけだ。
一年の自己紹介では。江藤さんに助けられたが、今年はそうはいかない。
——— さて、どうしようか……。
私は席のカバンを置くと、座る事なく保健室に向かった。
クラス替えで新しくグループを作ろうと皆躍起になっている。
当然私は一週間、保健室に避難する。
——— 全校集会の時間だ。
一斉に移動となる訳だが、皆、去年のクラスメイトか部活仲間、
去年と同じクラスだった人は自分を含め五人だ。これは誰もが同じ条件になっている。
私はその四人とは面識は在れど話をした事は一度も無い。当然、一人で歩く者も居るがそう多くはなく、勿論、私は廊下を一人で歩く。
体育館に入ると殆どのクラスが集まっていた。中等部も整列している。
新入生の居ない高等部一年は人数が少ない。
一クラス二列で並んで私は一人後ろの方に立った。
すると隣に宗介が立った。
宗介は私を見ずに真っ直ぐ前を向いているが『あっちに目線を送りながらこっちを見ている』気配は伝わってきた。
その気配に私は思わず二、三秒、宗介の顔を見てしまった。ハッと気付き顔を前に戻すと、四人前に深川さんと江藤さんが並んで立っていた。そして江藤さんの後ろには柳生君がいた。
——— 江藤さんと柳生君は宗介と一緒……なんか濃いメンバーだな……。
黙って立っていると周りから色々な声が聞こえて来た。
「真壁さんと桜木さんやっぱ可愛いな」
「最近、真壁さん可愛らしくなったよね? それと桜木さん好きな人居るって噂。ホントかな?」
「柳生君、深川さんと別れる気配ないなぁー……」
「何あんた隙狙ってんの! あんたの事見るわけ無いでしょ」
「江藤さんなんか『素敵』になってる」
相変わらず、藍と奈々菜ちゃんは騒がれている。
深川さんと柳生君。そして江藤も相変わらずの注目度だ。
高等部の教頭もアッシュ系……しかもゲーム「FF」に出てくるようなキャラの髪型のウィッグで注目されていた。
「教頭、髪だけカッケー!」
そんな声が上がる。
※ ※ ※
——— 集会も終わり、ホームルームの時間になった。
「それじゃあ、自己紹介を……その場でいっか。自分の席でいいから、前のクラスと部活、あと自己アピールなんかあれば自由に話して」
——— 助かったー……
前の席の者は振り返って自己紹介している。後ろの席の者が立つと全員後ろを振り向き注目する。
——— うわぁ……やっぱそうなるよね……
私は皆の自己紹介を見ていた訳だが、どうも、このクラスは深川さんを筆頭に、可愛い子が……いや、オシャレを意識した子が多い気がする。
うちの学校は校則が緩い。制服の着崩しはザラだ。
——— 所謂『陽キャ』の集団か……向こうに光が当たれば陰は濃くなる。この子達に絡まれなければ陰キャからすれば最高の環境だね。
それと気にしていなかったが、『
藍の彼氏のお姉さんだ。名前しか知らなかったから初めて顔を見る。
彼女は私に一切コンタクトを取ってこない。私が藍の姉だとは知らないようだ。ちゃんと秘密にしてくれててホッとした。
仮に演技で振る舞ってるなら余程のタヌキだ。
——— そして私の番が来た。
私はスッと立ち上がり普通に話し始めた。
「桜木翠です。去年はAクラスでした。部活は文芸部です。宜しくお願いします」
私は蚊が鳴くような声で話す。
皆から注目を浴びていたが発作を起こす事なく自己紹介を済ませた。
——— ふぅ……後で宗介にギュッとしてもらお♡
※ ※ ※
「——— それじゃあ席の移動はこれでいい? 他に誰かの背中で見えないとかないね? じゃ続けて自己紹介行きましょう。前に立ってお願いね」
Dクラスの自己紹介は前に出ての挨拶だ。席の順番で自己紹介が進んで行く。そして俺の番が来た。
「真壁宗介。去年はFクラスでした。部活は郷土史研究会に入ってます。宜しく」
クラス内はシーンとしている。
——— ヨシ! 今年もボッチで過ごせそうだ……
すると一人怪訝そうな顔で俺を見る男がいた。
柳生流星だ。すると、
「あ ————————— !」
柳生は突然大声を出して俺に指を差して立ち上がった。
「柳生君どうしたの?」
「いえ、ちょっと……すみません」
挨拶が終わり座席に戻る。隣の席になった流星が小声で話しかけて来た。
「お前……もしかしてあの『真壁宗介』か?」
「どの真壁宗介か知らんが、俺の名前は真壁宗介だ」
「なんで今迄気付かなかったんだ……後で校舎裏に……いいか?」
「なんだ? お前、彼女いるだろ? 二股か? 俺は男色の気は無いぞ」
「そうじゃねぇって。だったらここでその前髪上げて貰う事にな「行こうか」
俺は即答した。
柳生流星という男、俺が何故今の風貌になっているのかも察している感じだ。
※ ※ ※
今日は午前中で下校となる。俺は翠と妹達にメッセージを送信した。
[ちょっと遅くなる。校門で]
今日は妹達の部活は無い。なので一緒に帰る事にしていた。
ただ、妹達は目立つ。
なので一緒に帰れるのは実質到着駅からマンションまでだ。
俺は流星と一緒に教室を出る。
「ちょっと待っててくれ」
柳生はそう言って隣のクラスに顔を出した。
すると教室内で『キャー♡』と黄色い声が聞こえてきた。俺は柳生の背中から教室の中を覗いた。すると翠が一番後ろの席に座っているのが見えた。
柳生は深川さんに話しかける。
「芹葉!」
「うわっ! ちょっといきなり大声でビックリするよ」
「悪りぃ」
「で、なーに?」
「ちょっと遅くなる。待ってろ」
「昇降口ね」
「おう」
柳生は振り向き俺に「悪りぃ」と声を掛け校舎裏に移動した。
——— そして俺は人気の無い場所に連れて来られ、少し警戒していた。
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