第80話 ホワイトデー①
「『桜木翠』? 誰?」
「今迄二位だった子だね」
「はぁー、全然気にしてなかった」
「『満点の真壁』と『学園一の美少女』の名前が眩しくて陰に潜んでたからな」
「で、どんな子だ?」
「全然知らん」
——— 学年末テスト。沢山の生徒が掲示板に貼られた成績順位表を見て騒いでいる。
私と来羅も何時ものように黙って見上げている。今回はいつも名前が上がる上位に変化があった。
今回の結果は満足いく物だったが、それ以上に天然系と言われる私もちょっと焦りを覚えた。
「……なんか、もう一人雲の上に立った子が……これじゃ追い付く事しか出来ないじゃん」
二人は掲示板を離れ、教室へ移動する。毎回一番上に『真壁宗介』の名前が上がっていたが、今回、その一番上の名前が書き換わった。
——— 『一位 桜木翠 900点』
とうとう彼女も満点を取った。
真壁君は今回二位だ。流石に彼も完璧ではないようだ。
「確かに上に登り切ったから追い越せないね。立って同じ場所か……うん、決めた! 来年、彼女とお友達になる!」
私は歩きながらも廊下の天井を見つめ、胸元で握った拳に誓いを立てる。来羅は呆れてるようだけどね。
「出たな! ストイックアクティビティポジティブモンスター」
「何それ?」
「アンタの事。芹葉は相手の都合とか考えないでズカズカ人のパーソナルスペース侵して行くから気を付けないと嫌われるよ」
「え? そんな事ないよぉ」
「ほらぁ、もう侵してる。桜木さん、全然表舞台に顔出さないんだから、そういう子って、あんたみたいに舞台に立ちっぱなしの人間苦手にすんの。気を付けないと彼女、学校来なくなっちゃうからね」
「大丈夫。そこは寄り添って支えれば同じ舞台でも立てるから」
私の言葉に彼女は眉間を抑えて『そうじゃない』と首を横に振る。何が『そうじゃない』んだろう?
※ ※ ※
あー……来年、学校来なくなるかも……。
桜木さんごめん。流石にコイツから救う手立ては思いつかない……。
※ ※ ※
——— 冬休み明け以降、藍は「好きな人がいる」宣言で、告白の人数が減ると睨んでいたのだが、逆に数が増えてしまった。
「何でなの? 普通さ、好きな子いるって言ったら諦めない?」
「どうなんだろ? 好きな子に好きな子いたら……私ならどうするか……やっぱ、気持ちだけは伝えたいよね。で、御免なさいされて諦めるかな……」
「佐野峰さんはどう思う?」
「六花でいいよ。多分ね、男って意外と単純馬鹿だから『ワンチャン自分じゃね?』って思ってんのかもよ?」
「えー! だったら私、もう、廉斗君の事バラしちゃおっかな」
「向こうはまだ藍ちゃんに気が向いてないんだろ? だったらそれはやめ時な。普通の奴ならそれで諦めるだろうけど、捻くれた奴は『アイツさえ居なくなれば』ってなるから。彼、周りから何されるか分かんないよ」
「そっか……ダメか……」
※ ※ ※
——— 三月三日は私誕生日だ。今日は偶々日曜日である。翔馬の家で誕生会を開いて貰った。
藍の指導の元、翔馬と廉斗君がキッチンに立ち、パーティーな料理を作っている。中々いい光景だ。当然脳内にその
そして ——— 、
「これ、俺達三人から。大したもんじゃ無いけど……」
私はリボン付きの大きな袋を渡され、袋を開けると人の半身に近い少し大きめのぬいぐるみが入っていた。
「可愛い。ありがとう」
そして、帰り道、駅まで送られる。
翔馬はこっそり、私に小さい紙袋を手渡した。
「何これ?」
「俺だけからのプレゼント。大したもんじゃ無いよ」
翔馬から貰うものは私からすれば全て大したものだ。
袋を覗き込むと小さなカバンに付けるサイズのマスコット人形が入っていた。
何と無く翔馬に顔が似てるような……。ちょっと不細工な猫のキャラクターだ。
正直、この手のマスコットはカバンとかに付けた事が無かった。
早速カバンに付けてみた。なんかちょっと
私は翔馬のホッペにチューしたくなったがここは路上だ。いやいや、路上以前に今は我慢した。彼の誕生日までお預けだ。
※ ※ ※
——— ホワイトデー。お昼休みに男子全員が私の机の前に集合した。
「これ、成宮以外の男子全員からのホワイトデーのお返しです」
そう言って男子の一人が少し無骨に包まれた枕サイズのプレゼントらしきものを私に一つ手渡した。一応、リボンぽい物も付いている。袋も手作りで『さっきやりました』感が凄くあって雑だ。
「え? 私、くれたらアホ翔馬にあげるよって……」
「いや、これ成宮の考案だから……」
「翔馬の?」
私は意外な名前が出て思わず素で翔馬の名を口にし、そして翔馬の顔を見てみる。すると素敵な笑顔で私に優しく微笑んでいた。好き♡
私はこの日を境に翔馬の名前に『アホ』を付けなくなった。
そして、その事を誰も疑問に思っていない。
周りは完全に私が翔馬を呼び捨てで呼ぶのは『翔馬を自分らより下に見ているから』と思っているようだ。
「開けていい?」
「どうぞ」
中身を見て私は、
「あはははは ———」
思いっきり笑ってしまった。こんなに人前で笑ったのは……いや、笑わされたのは初めてだ。
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