第81話 ホワイトデー②
——— 私はクラスの男子全員からホワイトデーのプレゼントを貰った。
袋を開けて見た私は思わず笑ってしまった。
私の笑い声に教室内の生徒は『え?』っと、一斉に私を見る。静かになった教室に私の笑い声だけが響いた。
周りは唖然とした顔で私を見ている。
「何これ……うん、これなら遠慮なく頂きます。ありがと。私一人じゃ食べきれないよ……女子全員で分けてもいい?」
「どうぞ。最初からそのつもりだったしね」
答える男子生徒の後ろで男子全員笑顔で『どうぞ』と手を差し出す。
私の珍しい大笑いに女子が何人か集まってきた。
「何貰ったの?」
「んとね……『歌舞伎者揚げ』と『ハッピーリターン』あと『はっぱえびせん』……ふふふ……」
「うわぁ……食べ始めると止まらないやつばっか……」
「何これ翔馬が考えたの?」
私は完全にオフモードで、翔馬に話しかけていた。
「いやー、皆で奈々菜に何お返ししようって悩んでたから『奈々菜がくれた物と同等の物』『数が多くなると持って帰るのが大変』ってヒントを言っただけだよ」
「流石翔……コホン……皆ありがと。今から美味しく頂きまーす♪」
机の上にお菓子を広げると、あっという間に無くなった。
——— そして放課後、翔馬は私に手作りクッキーをくれた。そこそこ上手に作れている。
「まだ、奈々菜の気持ちに応えられないけど、今は奈々菜しか見えてないっていうか見るつもりないから……」
「ありがと……へへへ……なんか私的には今の言葉で十分なんだけどな♡」
ホント『付き合う』って何なんだろ?
※ ※ ※
——— 放課後。
「藍ちゃん、これ」
私は廉斗からちょっと小さいリボンがついた紙袋手渡された。
勿論、ホワイトデーのプレゼントだ。
「ありがと。開けていい?」
「いいけど、大したもんじゃ無いよ」
袋の中には小さな箱が入っていた。その箱を開けると小瓶が出てきた。
「わぁ♪ アロマだ。ありがとう♡」
私の部屋にアロマグッズがある事は知っている。何度か部屋に来ているからね。
私は小瓶の蓋を開け、蓋の裏の香りを確かめる。
「あ♪ これ、廉斗君の家の香りと同じやつじゃん」
「気付いた? ちょっと押し付けがましいかなって思ったけど、その……好きな人の部屋の匂いってなんかいいなって思ったから、逆も同じかな? って」
「うん♪ ありがとう。でも出来れば、廉斗君のお布団と私のお布団交換するとか、廉斗君が一晩、私のベッドに潜り込むとかして、匂い染み込ませてくれると凄く嬉しかったりするんだけど……」
「御免、それは僕には難易度高すぎてちょっと無理」
「うふふ、そのうちよろしくね♡」
廉斗君は私の事は嫌いじゃない。好意は持ってくれている。『好き』という言葉も聞いている。
でもそれは『 LOVE 』じゃ無くて『 LIKE 』だ。
私と廉斗君の関係は奈々菜に対する翔馬君のような相思相愛な関係じゃない。
でも、彼は私の欲求には応じてくれる。
手を繋ぎたいと言えば繋いでくれるし、抱きつきたい時抱きつけば彼は嫌がらずに受け入れてくれる。
でも、これは彼自身の下心による応えだとも思っている。
多分、私以外のそこそこ可愛い子が同じ事しても受け入れると思う。
でもそれは仕方ない。
私はその下心も含めて廉斗君が好きなのだ。彼がやる事なす事考える事、全てが好きだ。
偶にエッチな目で私を見る彼も好きだ。尤も私がチラ見せとかで誘惑している事は否めない。
私の誘惑に興奮してそのまま
彼は今、私に好意を見せてくれてはいる。でも、いつか私の前からいなくなる気がして怖くて堪らなかった。
※ ※ ※
——— 俺はバレンタインでの翠の『初めて』という言葉と頬へのキスのインパクトに、自分も翠に対して何かインパクトを与えたかったが何も思いつかないままホワイトデー当日を迎えた。
「翠、これ。お返し。消え物だけど……」
「ありがと。開けていい?」
「うん」
「かわいいー♪ リップだ。え? これ、宗介選んだの?」
「まぁ、奈々菜に意見聞きながらだけどね」
「今塗って……あー、ダメか。全体的にお化粧しないとリップだけ浮いちゃうな……」
「焦んな、今度出かける時に使って」
てか、翠が本気で化粧したらどうなるんだ?
「分かったありがと。へへー、私も『彼氏から初めて』ホワイトデーのプレゼントだ」
翠は中学時代、バレンタインでチョコを渡していないのに男子からホワイトデーのプレゼントを貰っていたって言っていた。
なので、俺からのプレゼントは『彼氏から』初めてになる。俺のバレンタインと同じ訳だ。
そして俺も『彼女に』初めてホワイトデーのプレゼントをする訳で……。
嬉しさでプレゼントを眺める翠。
俺は前回のお返しにと、翠の頬にキスをしようと顔を近づけるが、翠は何かが顔に近付いていると気配を感じたのか突然俺の方に顔を向けた。その瞬間……
——— チュッ♡
……あれ? なんで翠の目が超ドアップで目の前にあるんだ?
俺は暫く考えた。
翠の大きな目がパチパチと何度か瞬きを繰り返す。
唇には柔らかい感触。少し濡れている?
「——— !」
俺は気付いた。
翠の口に……唇にキスしていた。
俺は慌てて顔を離した。
翠は大きな目を更に大きくさせ、俺を見る。そして徐々に顔が赤くなっていく。
「あ……あ……」
翠は何かを話そうととするが言葉にならないようだ。
俺は意を決して、翠の肩を両手で掴み、もう一度キスしようと顔を勢いよく寄せた。
すると……
——— “ガチッ!„
俺は口を押さえて後ろに倒れた。翠も同じく倒れてる。
互いの歯がぶつかったのだ。結構痛い。
「……ププ……ップ……ハハハハ——— 」
俺も翠も可笑しくなって笑い出す。すると、
——— ガチャ。
「お兄ちゃん、今いい? ……何してんの?」
床に転がり口を押さえて笑う俺達を見た奈々菜が不思議そうな顔で立っていた。
「ハハハ……何でもない……ップ」
※ ※ ※
——— 一年間、俺達二人は素顔を知られる事なくなんとか過ごす事が出来た。
そして物語は新章へ突入する。
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