第70話 奈々菜と藍の〇〇〇その3③

 ——— 二階で奈々菜と成宮君がちょっとセンチメンタル展開になっている頃、そんな状況になっているとは露程にも思っておらず、私はとキッチンに飲み物とピザを取りに来ていた。因みにケーキは無い。

 そして私は持って来た手提げ袋の中からタッパーを取り出して蓋を開けた。


「これ、私と奈々菜からのクリスマスプレゼント……になるかは分かんないけど私達の手作りね」

「ええええぇぇぇ! ささ桜木さんのてて手料理! 姉さん、僕は今夢を見てるんでしょうか?」

「大袈裟だな。それに『私』からじゃ無くて『私達』からね。唐揚げとローストビーフ。唐揚げは、それぞれの味付けだから食べればどっちがどっちか分かると思うけど、ローストビーフは二人共初めて作ったから……味は保証出来ないよ」


 私がタッパーの蓋を開けると、肩越しに蘭華さんがそのタッパーの中身を覗き込んで来た。


「凄いな……あんた達中学生なんだよね? 普段から作ってるの?」

「はい。私は偶にしか作りませんけど、奈々菜は日頃から普通にお夕飯の支度とかやってますよ」

「はぁー……ね、一口貰っていい?」

「だったら……」


 私はちょっと思い付き、廉斗君の顔を見る。


「ね、、お姉さん達も一緒に食事、ダメかな? この量、四人じゃちょっと多いと思うんだ」

「桜木さんがいいなら……」


 廉斗君は二階に目を向ける。奈々菜と成宮君呼んでこようって感じかな?


「オッケー、皆で食べるなら上の部屋よりリビングでいいよね?」

「だね」

「じゃあ、二人を呼んでくる前にお皿貸して。これ、盛り付けちゃお」


 すると蘭華さんが、冷蔵庫からミニトマトとレタスを取り出した。


「だったら……これ使って。なんか料理が茶色い」

「わぁ♪ 有り難う御座います。それじゃあこれを……」


 流石に野菜類は持ってこれなかった。

 いろどりが悪いなとは思っていたが、一気に解決した。

 私はレタスを一枚一枚手でめくり取り、適度な大きさに千切って皿に敷き詰め、唐揚げとローストビーフをそれぞれの皿に盛り付け、トマトを半分に切って飾り付けた。蘭華さんは私の作業をマジマジ見ている。


「手慣れてるねぇ……こういうの見せられると私も日頃からやんないとって思っちゃうな」

「ありがとう御座います……ヨシッ♪ それじゃ、二人呼んで来る。廉斗君、お皿並べててね」

「うん」


 私はゆっくり二階に上がり、無造作に扉を開けた。


 ——— ガチャ。


「ねね、折角だからお姉さんと妹さんも一緒に……あれ? お邪魔だった?」 

 

 なんか空気が変だ。重い訳では無い。桃色な感じ? ちょっと違う。何だろうこの……ちょっと二人の世界出来てんじゃないの?


「なんか二人共顔赤いけど、チューでもした?」

「な、バ……する訳ないでしょ!」

「なぁんだ、つまんないな。あのさ、お姉さんと妹さんも一緒に混ざってダメかな?」

「俺は奈々菜っちが良いって言うなら問題無いよ☆」

「ちょっ……誰が『奈々菜』って呼んでいいって言ったぁ!」


 ん? 『真壁っち』じゃなくて『奈々菜っち』? 奈々菜怒ってるけど完全に顔がニヤけてる。ハハーン……そう言う事か……ま、奈々菜のこの一言無いと不自然になっちゃうもんね。

 私はその辺の事は触れる事なく皆でリビングへ降りた。



 ※  ※  ※



 リビングに降りると、蘭華さんがテーブルにお皿を並べていた。


「お邪魔しちゃって良かった?」

「全然良いですよ。こんなに沢山食べられないですし、大勢の方が楽しいですから」

「ありがと。でもビックリだよ。廉斗の最初の『女の子とクリパやる』発言だけでも驚いたのに、まさか奈々菜ちゃんと藍ちゃん連れて来るんだもん」

「まぁ、優勝祝いも兼ねてです。そうだ。私達の事知ってましたけど……なんか私達やらかしました?」

「えー、知らないの? って、自分の事は意外と分かんないよね。大体、大会で優勝しちゃえば有名人だよ。それに、深川芹葉、江藤来羅、真壁奈々菜、桜木藍。学園の美少女ランクTOP4ね。学園でこの四人を知らない子探す方が難しいよ」

「なんか恥ずかしいな……」

「でも、奈々菜ちゃんも翔馬君にあんな罵声浴びせるなんて結構普通の子なんだね」

「重ね重ね恥ずかしいな……翔馬って遊びに来てるんですか?」

「うん、二年生になってから来るようになったね」

「へぇー……」


 そう言えば線路挟んで学区が違うって言ってたな。

 すると藍はジュースをグラスに注ぎ、滝沢君にお願いする。


「廉斗君、皆に配って」

「はい、どうぞ……そっち回して……皆行った?」


 私は藍の言葉に驚いた。いつの間に『廉斗君』になった? 


「藍、いつから滝沢君が『廉斗君』になった?」

「え? ここに来てから」

「ここに来てからって……」

「だって皆『滝沢さん』だもん。だから『帆奈ちゃん』に『蘭華さん』。違う?」


 藍はそう説明すると妙に勝ち誇った顔をしている。この日から滝沢君に対する藍の呼び方は『廉斗君』になったのは言うまでもない。

 ついでに私も数時間後には『廉斗君』って呼ぶようになるのだが……。


「いや、確かにそうだけど……」


 私はちょっと戸惑った。戸惑っていたら蘭華さんが、


「じゃあ、私の事は『蘭華ちゃん』でお願い。『蘭華姉さん』でもいいよ」


 ——— 六人は食事をして、その後はゲームで盛り上がった。流石に蘭華さんは席を外した。


「どうだった? 私達からのプレゼント」

「最高! いやー……唐揚げ美味かった……」

「ローストビーフも……ふー、奈々菜っちの手料理、これからも食べられるのかぁ……最高だね☆」

「何あんた私の手料理食べるつもりでいるの! 誰があんたなんかに……わよ!」


 私の言葉に藍がニヤニヤしている。何? 私なんか変な事言った?

 すると滝沢君が少し大きめの紙袋を二つ取り出して一つを翔馬に渡した。そして、滝沢君は藍へ、翔馬は私へ紙袋を渡した。


「これ、俺らからのプレゼント」


 藍は笑顔で受け取る。私は貰えるなんて1㎜も思って無かったからキョトンとしてしまった。


「ありがとう♪ 開けるね」

「気に入ってくれればいいけど……」

「わぁ♪ 可愛い」


 私達は包装紙から出したぬいぐるみをマジマジと見る。学園祭でもダンボールで作った最近流行りのマスコットキャラだ。


「うん。ありがと。翔馬の事で頭来た時、代わりに殴ってあげるよ」

「おいおい、それはぬいぐるみが可哀想だよ」


 私は何だか嬉しくなっては言葉とは裏腹に手にした人の頭サイズのぬいぐるみをギュッと抱きしめた。藍も色違いで同じぬいぐるみだ。藍もかなり気に入ったようでニコニコ満遍の笑みだ。


 ——— 時間も夕方に近くなり、滝沢君が次のイベントを提案して来た。

「そう言えば二人共『イルミネーションロード』って見た?」

「んーん、まだ。見たいなって思ってたけど、ちょっとタイミング合わなくて……」

「だったら今から行く? 今日だったら六時に点くから時間も丁度いいし、七時には戻って来れるよ」

「だったら大丈夫かな? 奈々菜どう?」

「私は大丈夫。一応、家に連絡しておくよ」


 ——— 四人はイルミネーションを見に行くのだが、そこで私達四人に危険が迫る。

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