第69話 奈々菜と藍の〇〇〇その3②

 私と藍は滝沢君の誘いで翔馬を含む四人で優勝祝い兼クリスマスパーティーをする為、滝沢君の家に来ていた。

 ——— 私と藍が玄関に立つと、リビングから女性が顔を出した。

 明らかに滝沢君が女の子を連れてくると知って興味本位で顔を出した感じだ。

 出て来た女性はそのままにこやかに挨拶をするが、


「こんにちは、いらっしゃ……え? えぇ! はぁ——————! 真壁奈々菜と桜木藍ぃ! 廉斗、あんたなんて大物釣り上げて来たぁ!」


 すると後ろから女の子が顔を出した。


「お姉ちゃん声大きいよ。お兄ちゃんお帰りなさい。あ、こんにちは。妹の帆奈はんなです。わぁ、お姉ちゃん達お人形さんみたいで可愛いです。顔もおんなじ……双子?」

「こんにちは。私は真壁奈々菜です。似てるけど双子じゃ無いよ」

「こんにちは帆奈ちゃん。桜木藍です。宜しくね」

「あっと、これが姉の蘭華らんか。うちの学校の高等部一年ね」

「初めまして、蘭華先輩。今日はお邪魔します」


 姉の蘭華は暫く呆然としていた。その様子に藍が声を掛ける。


「あのぉ……大丈夫ですか?」

「え? あ、はい。うん。大丈夫。ちょっと現実逃避してた。うん、上がって上がって」

「はい♪ お邪魔しまーす」


 私達は二階にある滝沢君の部屋に案内された。


「適当に座って。僕、飲み物とか持ってくるから。翔馬、手伝ってくれる?」

「あ、私行くよ」


 翔馬が立ち上ろうとした処、藍は私達が持って来た袋を手に、滝沢君と二人で部屋を出て行った。

 ——— 私と翔馬は同じ空間に取り残された。二人っきりになるのはお見舞いの時以来……かな? なんか緊張する。

 私はこの日までいだいていた一つの疑問を翔馬にぶつけてみた。


「ね、一つ聞いていい?」

「一つと言わず何個でもどうぞ」

「一々ウザいな……あんたなんで私の事クリパ誘わなかったの?」

「誘って欲しかった?」

「違うわよ! 普通に考えて、顔合わせれば『愛しのハニー』なんて言ってたら、誘って来るもんだって思うじゃ無い。っていうか、アンタどんな些細な事でも私を誘った事一度も無いよね?」


 私の問いに翔馬は俯き加減で『困ったな』と言った表情で話し始めた。


「うーん……俺さ、真壁に対してふざけた接し方してるよね?」


 翔馬は私を『真壁さん』と言った。いつもと違う雰囲気の翔馬に私は少し警戒する。


「うん、呆れる程ね。自分でも分かってんだ」

「まぁ、態と……だからね。そんな俺が真剣に誘っても……冗談としか思えないでしょ?」

「まぁ、日頃の行いだね」

「そんな俺だから『誘う』事だけは今迄一度も出来なかったんだよ」

「なんで?」

「やっぱ、まかりなりにも本気で好きな子なんだ。本気で誘って断られたら流石の俺も凹むから……」

「…………」


 シリアスな翔馬と、さり気無く『好きな子』と断言された事に私は戸惑う。


「もしかしてメッセージも?」

「……『送信ボタン』って、触れるの怖いな」

「——— っぷ。何それ。一応、何か送信しようとしてくれてたんだ」

「まぁ、それなりに……結局、『おやすみなさい』が精一杯だった」

「………なんか想像したら……ふふふ、嬉しいよ。私が眺めてた画面の向こうでそんな葛藤してたんだ」


 私は『こんな質問するのは最低』と思いながらも翔馬の様子に思わず「ね、私の何処が好きなの?」と口に出してしまった。

 翔馬はその質問に照れながらも躊躇う事なく話し始める。


「顔……はキッカケだな。真壁もカッコいい男見れば目で追ったりするだろ?」


 翔馬の質問に「うん……まぁ……」と答えはしたものの、私はお兄ちゃんのせいで『カッコいい』男がどのレベルから言うのか良く分からなくなっている。


「最初は『可愛いよな』『綺麗な子だな』って、見た目だけで見てたんだよ。目が合うだけで『今日はいい事があった』って思う程度だったし、一言言葉を交わしただけで今日の運、全部使い果たしたって思ってた位だからね……そしたらその内段々違う処が目について来て……」

「違う処?」

「うん。皆、真壁さんはなんでもこなす才女だって言ってるけど、俺にはその皆が言う『才女』って部分が『努力してる姿』にしか見えなくて……」


 私はその一言に胸が、高鳴った。何? このザワザワ……。


「そんな姿を毎日傍で……目の前で見せられ続けたら尊敬の念を抱かずには居られないっていうか……隣に立ちたいって思うけど今の俺じゃ不釣り合いだし……あー! この話はお終い。俺は真壁と付き合いたいとかそんなんじゃ無いから忘れろ! 忘れて下さい」


 何かを払うように両手を大きく振って慌てる翔馬を見てなんか微笑ましい気持ちになった。

 ふざけた奴と思っていつつも、今までの言動で私の内面を見てくれているとは感じていた。

 それが今はっきりと確認できて私はかなり嬉しくなった。


「分かった。んじゃ忘れる。そう思える時が来るまで忘れててやる。あと『真壁さん』はやめて。『奈々菜』って呼ばせてやるから有り難く思いな」


 私は翔馬の顔を見れなかった。照れてしまって目線を逸らしてしまった。チラッと翔馬に目を向けると呆然とした表情で私の顔を見ていた。

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