第66話 学園祭 その1③
——— 今日は雨で部活は休みだ。なので学園祭の準備を存分に楽しんだ。
私と六花ちゃんが一つの席で作業を進める。
「私、殆ど作って無い……なんか御免。あと有り難う ニコ」
「どう致しまして ニコ……っぷ。前も言ったけど、だから何なのこれ? あんたの謝罪がどっか消えたわ」
「真壁家の習わし。謝るな! 感謝しろ! 良いでしょ?」
「まぁ、悪くは無いね」
今日までに出来た作品は犬と猫は二匹ずつ。ウサギにカピバラ……だと思ったらでっかいハムスターだった。
「いや、カピバラじゃねーし、てか、ハムよりカピバラの方が可愛いか?」
「——— っぷ! どっちも同じような顔でしょ」
「だね」
「しかし色々作ったね」
「まぁね。ネット見たら結構有るのね。見よう見まねで作ってみたけど、もう材料無くなりかけてるところでコツ掴むっていう……あるあるだね」
因みに私が作ったのはアルマジロの背中だけだ。
「パーツの裏に名前書いといたから、バラせば誰作ったか分かるよ。修復不可能だけどね」
「それじゃダメじゃん」
私が六花ちゃんと楽しそうに話すのを皆遠目に見ている。そして何やら耳打ちしてる子もいるけど、六花ちゃんはそんな事はお構い無しだ。
私が表情豊かに会話するのは、藍とある意味翔馬だけだった。そこに六花ちゃんが突然加わった。
ついでに滝沢君とも普通に話すが、それはテニス部員にしか見せた事がない超レア表情だ。
この女子だけ集まった班編成も救われた。
前のままだったらうちの班にいたBクラスの子が一人孤立したからだ。そうなると流石に六花ちゃんとは楽しく会話は出来なかった。
——— 私は残り少ないダンボールで新しい動物を作り始めた。『クアッカワラビー』だ。どんな動物かって? 知らない人は是非画像検索して欲しい。あざとくて可愛い愛嬌ある小動物だ。
ただ、作り方を間違えるとハムスターになりそうな顔付きだ。
「真壁っち何作ってんの?」
翔馬が声を掛けてきた。一々ウザい。いや、今のはウザくはない。これはただ私が作ってるのを気に掛けてるだけだ。
「クアッカワラビー。知ってる?」
「勿論! 写真撮ると笑顔で写ってくれるコアラとワラビーの中間みたいな動物な」
「そう。知ってんだ?」
「知ってるも何も俺のメッセのアイコンそれだもん」
「ウソ! マジ?」
私はポケットからスマートフォンを取り出して、メッセージアプリを開いた。
「ホントだぁ♪ 可愛い……ん? あんたの事じゃないからね! 勘違いしないで」
「俺は『カッコいい』だろ? 分かってr「違う! お前カッコよくないだろ! アホ翔馬は……」
私は翔馬の言葉を遮り全否定したかったが……あれ? 言葉が出ない。なんだろ?
カッコよくはないが……カッコ悪いわけじゃない。容姿は兎も角、思想とか目線は全然カッコ悪くない。寧ろカッコいい部類だ。
じゃあ何だ? 最低な奴……いや、会話の趣旨から外れてる。それに最低なのは私に対してだけだ。いや、私に対する口だけだ。実際害は何も受けてないし寧ろ偶に助けられてる。
いい加減な……それも私に対する口だけだ。部活も真面目だし、周りに対する気配りも何気に普段から出来てる。
「おーい、真壁っちー。戻ってこーい」
翔馬が私に声を掛ける。
私は暫くボーッとしていたようだ。翔馬の悪いところが私を揶揄する事以外何も無いのだ。
「う、煩いな! と、兎に角お前なんか、き、き、嫌いだ! ばーか!」
うぅ……何最後の捨て台詞。今時小学生でも言わない言葉を吐いてしまった。
私の隣では六花が腹を抱えて笑ってる。
「何それ、『ばーか』って、完全に奈々菜ちゃんの負けじゃん。あんたやっぱり可愛いわ。いい加減、成宮君の……よく分かんないけど兎に角認めとけ」
「六花ちゃんも分かってないじゃん。何その適当な『認めとけ』って。意味分かんないよ」
「あはは……これ、成宮君、あんたが全部悪いわ。奈々菜ちゃん困らせ過ぎ。もうちょっとキャラ絞れ。あんた中途半端にカッコいいんだよ」
それだ! こいつ、翔馬は性格が中途半端にカッコいいんだ。
翔馬の容姿に関してはよく分かっていない。正直、兄のせいで容姿に関する私の価値観は崩壊している。
ただ、性格は……正直悪くない。誰よりもいい。そう思える要素は沢山ある。私に対しての接し方は頂けないが、でもそれだけだ。
——— あれ? ん? 何だろう? 私の中で何かが弾けそうな感じがした。
※ ※ ※
——— 私は自分の作品を一人で今日中に完成させようと頑張っていた。
ただ、作り慣れてない材料と動物だ。当然『壁』に当たる。普段自分が作っている周りに対する『壁』が違う形で私に立ちはだかる。
私が悩んで居ると隣の班の男子が私の様子に気付いて声を掛けてきた。
「どうしたの?」
「今、一人で頑張ってたんだけど……どうしても耳が上手く出来なくて……皆どうやって耳作ってたか分かる?」
私はこの人に『やり方』を聞いたのだが、
「ちょっと貸して」
彼はそう言うと、徐に私の作品を手にして耳を付けようとした。
「あ……」
私がこの人に求めたのは『アドバイス』だ。作業の手助けじゃない。彼が今からやろうとしている事は正直、有難迷惑にもなってない、ただの迷惑だ。
でも彼の親切心から私はその行動を止める事はできなかった。
すると、私の後ろから翔馬が声を掛けてきた。
「あー、待て待て、ちょっと待て」
「何だよ成宮、俺の手柄を横取りするつもりか?」
「いやいや、横取りしてんのはお前だよ。真壁っちはお前に作り方を聞いたんだ。作業の手伝いをお願いしたわけじゃ無い」
「何だよ。お前、真壁さんの前でいいとこ見せようってか?」
「逆だ。お前が見せるべきいいところを正してやってんだ」
成宮の言葉に男子生徒は私の顔を見た。
私は成宮を見て、男子生徒を見る。そして無言で “コクコク„ と頷いて見せた。
「そうなの?」
「うん……ごめん、これ、私一人で完成させたいんだ。私、何一つ作り上げて無いから……」
「そっか……ごめん。そうだよね。自分で全部作りたいよね」
「うん……あの……耳、教えて貰っていい?」
「分かった。んとねこれは ———」
男子生徒が説明する中、私はチラッと成宮を見ると、既にそっぽを向いて別の作業をしていた。
コイツ、最初の提案の時もだったけど、『皆で』って言う気持ちが他の人より強い。しかもそれを大切にしてる。
なんか……最近のコイツ……なんだ?
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