第65話 学園祭 その1②

 ——— 班内での自己紹介も終って、班長も決まり、いざ何を作るか相談に入った。

 すると隣の班で翔馬が面白い事を話していた。

 私は自分の班の話はそっちのけで、翔馬の言葉に耳を傾けていた。ついでに座席の位置から私の正面に翔馬の班がある。


「ここは思いっきり女の子っぽさ120%な物作んねーか?」

「女の子っぽさ?」


 女子の一人が首を傾げる。


「そう。基本的にこういう工作ものって圧倒的に男が得意げな感じでしゃしゃり出るだろ?」

「確かにそうだね」

「そうなると、男が張り切って意見を言う。そうすれば男目線で考え始める。男が作りたい物で決定しがちになる。何となくそう思うんだけど……どう?」

「確かにそんな気がする」

「そうすると、出来上がった物が男っぽい物ばっかりになりそうでな。だったら、うちの班は思いっきり女の子っぽい物にした方が逆に目立って面白そうだなって思ったところだ。指示は女子、作業は男子。どう?」

「なる程。だったら私達も考え甲斐があるってもんだね」

「やっぱ、イベントは皆が参加しないとな」


 認めたく無いけどアホ翔馬の言うとおりだと思った。

 多分うちの班は男っぽい感じの物になりそうだ。私は元より、他の女子は全く声を発していない。

 繊細な物を作るなら女子の方がしゃしゃり出そうだけどね。今回は大きく作れて素材もダンボールと自在性が悪く無骨だ。

 周りを見ると、翔馬の班はどの班よりも女子が率先して意見していた。楽しそうだ。

 翔馬はその姿を温かい目で黙って見ている感じだ。

 私は気付くと翔馬をずっと見ていた。すると翔馬は私の視線に気付いた。


「何? じっと俺の事見つめて……さっきの俺の提案に痺れて憧れたりした?」

「うん……ちょっとね」


 私はそこは素直に答えた。

 コイツのさっきの言葉は私に向けてじゃ無い。彼女達……いや、女子全員に向けての言葉だ。それを否定してはダメだ。


「なんか素直に認められるとちょっと調子狂うな……いっその事、そのまま俺に惚れちゃってくれてもいいんだからね☆」

 

 そう言って私にウィンクする。結構様になってるのが更にムカつかせる。


「黙れアホ翔馬。何でツンデレ気味に語ってんだ! お前のその減らず口、ホッチキスで止めてやろうか? ホラ、ホッチキスあるから黙って口差し出せ!」


 私は机の中に置いていたホッチキスを取り出しカチャカチャ鳴らしながら翔馬の元へ歩み寄った。


「そこは真壁っちの口で優しく塞いで欲しい “ビタンッ!„ イテェッ! “バシッ!„ 痛い! “ゴン!„ グーはやめて! …… 御免なさい、口が過ぎました」


 私は翔馬の言動に恥ずかしくなって思わず立ち上がり、翔馬の頭を両手でバシバシ叩いた。叩いただけなのだが、私にとっては初めての暴力だ。軽くでも人を叩いた事は無い。コイツに『私の初めて』を持ってかれたの何個目だ? 


「なんかこの二人仲良いな」

「やっぱそう見えるよね?」

「そんなんじゃない! もう、そういう事言うの止めてよ」

「御免御免。でも、真壁さんのこういう表情って成宮君にしか見せないからね。他のクラスの子からしたら結構レアだよ」


 私はすっかり『壁』を作る事を忘れていた。

 翔馬のせいで私のキャラは崩壊しまくりだ。



 ※  ※  ※



 ——— 各班で作る工作物だが、翔馬の班は人の大きさくらいあるマスコットキャラクターを作るそうだ。

 そのキャラクターはマンガとかアニメから発生した物では無く、何処からとも無く湧いて出て来た女子中高生なら誰でも関連グッズを一つは持っている今流行りの人気のキャラクターだ。

 そして私達の班が作る物は『小動物』に決まった。

 翔馬の言葉に触発されて私が一言「犬とか猫とかウサギとかいいな♪」と、ちょっとあざとく言ってみたら良い顔したい男子が、


「良いね。どうせ他の班は大きいの一個作って終わりだろ? うちは小さいの何個も作って周りを飾る。悪く無い」

「俺も賛成だ。ただ繊細に作んないとな……隣の班の男女入れ替えるか? その方が女子も話弾んで楽しいだろ? ちょっと先生に言ってくるよ」


 こうして私の班は女子だけになり、小動物を作る事になった。



 ※  ※  ※



 ——— 今日から放課後は学園祭の準備に入る。ただ、私達は文化祭のあと、県大会が控えている。翔馬達もだ。なので部活もやらなくてはならない。

 部活に行く前、30分程度だけど、私も作業をする。


「——— へぇ真壁さんこの手の物って持ってないんだ」


 私の目の前で女の子がキーホルダーをつまんで持っている。キーホルダーはフラフラ揺れている。


「うん、知らない訳じゃないんだけど、私あんまり流行り物って興味なくて……」


 そう。私は自ら流行り物の情報を取りに行ってないのだが、周りが勝手に教えてくれるから一通りのグッズは知っていた。


「いがーい。そうなんだ? なんか流行りとか率先して取り入れてる印象あるけど……ふーん……言われてみればそんなの見せびらかしたりしてるとこ見た事ないね」


 この子は同じクラスの『佐野峰六花さのみねりっか』と言う。

 私と世間話をした事は無い。と言うかこれが初めての会話だ。彼女のクラス内での印象は他の子と違ってドライで熱い子だ。『自分』ってのを強く持ってる感じだ。


「しかし不思議だよね。何で皆、真壁さんと仲良くなろうとするんだろ?」

「さぁ……何ででしょう?」

「大体、そんな言い寄って仲良くなったって私に言わせりゃそんなの対等じゃ無いじゃん。って思うんだけどね」

「……私も正直……困ってる」


 私は思わず本音が出た。今迄そんな事おくびにも出した事がない。何だろう。彼女を前にすると本音がボロボロ出そうで怖い。


「でしょう? ま、彼女ら『友達』をファッションみたいに見てるんだろうから真壁さんと友達で事がステータスで、中身なんてどうでも良いんだよ、多分」


 確かにそんな感じだ。


「それと真壁さんに接触してる子ら皆、真壁さんから何かお裾分けして貰おうって感じで嫌いだな。媚びてる。対等じゃない」


 確かにそうだ。私と藍に近付く子は恩恵を受けようって子ばかりだ。全然対等じゃ無い。だから友達なったとしても友達って思えないんだ。


「貰ってどうしようってんだか……友達名乗るなら与えるくらいの事しろよって話だ。そしてそんな子達に見せる真壁さんの感情の無い空っぽな対応……私、結構好きよ」

「——— !」


 私はその一言に自分の裸を見られたような気がして顔が熱くなった。

 自分でも分かる。今、顔が真っ赤だ。

 私と藍の態度に気付いてた。この子は、信用に足る子だ。私と藍に無関心だ。何このイケメン女子。

 

「六花ちゃん、あんまり一緒に作業出来ないと思うけど宜しくね」

「——— っぷ! どうしたの? いきなり名前で…… ——— あーそうか、分かったよ奈々菜ちゃん……はは」


 彼女は私が意図した事に気付いたようだ。

 私は彼女に藍と同じ空気を感じた。だから彼女を名前で呼んだ。彼女は私と同類だ。他人を信用していない……いや、『自分』という芯をしっかり持ってて他人に委ねる部分が無いんだ。

 ついでに容姿だけど身長170㎝を超えるバレー部だ。髪はショートで顔は整った感じはするけど学園内で注目を浴びるような容姿では無い。

 因みにウチのの女子バレー部は全国でも一、二を争う程強豪で、全国的にも有名だ。中学はそうでも無い。今年の新人戦も二回戦で敗退していた。

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